シリア情勢がひどく複雑化しているらしいことはニューヨークタイムズの論説欄で指摘されており、日刊ベリタでもすでに紹介済みである。
イスラエルの新聞ハーレッツ(Haaretz)はそれを裏付ける記事を掲載したばかりである。アルカイダグループが、シリア政府を支援しているレバノンのシーア派武装組織ヒズボラに対して、シリアを舞台に武装闘争をしかけているらしいことだ。ヒズボラと長年闘ってきたイスラエルにとっては皮肉な展開になっている。
http://www.haaretz.com/news/middle-east/al-qaida-threatens-hezbollah-over-its-support-of-the-syrian-regime-1.462076 ハーレッツによると、サウジアラビア出身で最近までレバノンの難民キャンプに滞在していたアル・マジドという人物はサウジアラビア当局が最も力を入れて指名手配していた男だという。そのアル・マジド氏はシリアに潜入し、2か月前にアルカイダグループのシリアにおけるリーダーに選出された。ヨルダンの情報機関によると、アル・マジド氏はイラクおよびトルコから6000人の兵士をシリアに送り込んだとされる。スンニ派武装勢力であるアルカイダにとって、シーア派武装組織のヒズボラやシーア派のシリア政府は倒されなければならない敵とみなされているようだ。
一方、シリアに兵士を送り込んでいる武装組織にはもう一つあり、アルカイダグループと反政府ゲリラ闘争の功績を競っているとされる。その人物はヨルダンのサラフィスト武装勢力を束ねる Muhammad Al-Shalabi氏であり、通称“Abu Sayyaf.”というらしい。ある政府側へのテロ行為をめぐって両派がともに名乗りを上げたこともあるそうだ。さらにはイエメンのアルカイダグループもシリアに入りつつあるという。
こうしたシリアに今、マンパッドと呼ばれる携帯型地対空ミサイルが外国から反政府勢力支援のために持ち込まれている。長年イスラム原理主義勢力を抑え込んできたアサド政権崩壊後を狙って、複数のイスラム武装勢力がシリアに入り込み権力闘争を行い始めたようだ。そこに多量の兵器が持ち込まれつつある。
■シリアの内戦がレバノンに拡大する恐れ
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201208240333005 「ニューヨークタイムズの同記事の下には「U.S. options shaped by fear that intervention could backfire」なる分析記事が掲載されていた。記事によると、シリアの情勢は1985年のアフガニスタンよりもはるかに複雑化しているとされる。そう分析しているのは当時、CIAのアフガニスタンのムジャヒディンへのテコ入れをサポートしていたMilton A.Beardenなる人物である。」
■ニューヨークタイムズ アルカイダが自由シリア軍を名乗っているという記事である。 ’Al Qaeda Taking Deadly New Role in Syria’s Conflict’
http://www.nytimes.com/2012/07/25/world/middleeast/al-qaeda-insinuating-its-way-into-syrias-conflict.html?pagewanted=all トルコとの国境地域のBab al-Hawaは先週、シリア反政府勢力の支配下になったが、ここがたちまちジハーディストたちの集まるスポットになっているという。 アルカイダはイラクとシリアでの闘争を結びつけ、「シーア派対スンニ派の闘争」と宣言したとされる。イラクの自爆テロ攻撃の手法がそっくりシリアに持ち込まれているとされる。記事に登場するイラク政府の人間によれば、イラクで指名手配を受けている人物の多くがシリアで活動中だという。以下はシリアで活動するアルカイダ闘士たちがユーチューブにUPした映像だという。
http://www.youtube.com/watch?v=m17BUyjBdTI ■ニューヨークタイムズ(7月29日) ’As Syrian War Drags On, Jihadists Take Bigger Role’
http://www.nytimes.com/2012/07/30/world/middleeast/as-syrian-war-drags-on-jihad-gains-foothold.html?pagewanted=all 最初は独裁政権に対する市民の抗議だったのだろうが、今やさまざまな武装勢力がアサド政権崩壊後を狙って入り込み、権力闘争を始めたらしい。
村上良太
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