11日、米大使ら4人がリビアのベンガジにある領事館で殺された事件につき、ロムニー大統領候補(共和党)が語ったとされる言説について新聞などで批判が高まっている。たとえばこちらはワシントンポストの論説欄である。
http://www.washingtonpost.com/opinions/the-death-of-an-ambassador/2012/09/12/ed3b719e-fcfa-11e1-b153-218509a954e1_story.html ロムニー候補はカイロの米大使館で出された声明が襲撃をした者たちに対して同情的であると批判したとされる。しかし、カイロでその声明が出されたのはイスラム教徒の抗議デモが発生する前のことで、殺されたスティーブンス大使らを襲撃した者たちへの同情ではまったくないと事実関係を指摘。 総じてロムニー発言の裏にあるのはカイロの米大使館から出された声明が「アメリカの価値を損なう」ものだったと見る認識にあるとする。しかし、カイロの米大使館が出していた声明は<言論の自由をはき違えて、他人の信仰を冒涜する者を非難する声明>だった。つまりは、多様な人種や多様な宗教を持つ人間が共存できる国アメリカ、ワシントンポストはこれこそまさにアメリカの信奉する価値であるとする。他人の信仰を意図的に冒涜する者はその基本的な価値観に反するということなのだ。だからロムニー氏の政府批判は見当違いだとする。
雑誌ニューヨーカーもまたロムニー候補の失言を取り上げている。「(ロムニー候補の外交音痴に関して)まるでサラ・ペイリンを外交アドバイザーにしているがごとし」と書いている。ベンガジで殺されたのが米国人だったことも当初は知らなかった可能性が示唆されている。ニューヨーカーはロムニー候補の同伴者にネオコンのDan Senor氏(イラクでアメリカのスポークスマンをしていた)がおり、そのほかにもネオコン人脈があると指摘している。
http://www.newyorker.com/online/blogs/johncassidy/2012/09/mitt-romneys-libya-blunder-reflects-larger-failings.html ニューヨークタイムズは社説' murder in Libya'で、ロムニー候補を強く批判している。ロムニー候補が有能な米大使の死を政争の具にしようとして、アメリカの国益をむしろ害したとするものである。しかも、その言説は嘘の繰り返しだったとする。ロムニー候補がオバマ政権が米領事館を襲ったイスラム教徒に同情的だったと批判したことに対して、実際にはヒラリー・クリントン国務長官がロムニー氏の当該発言より前に襲撃事件に対する強い非難を声明していたというのである。 ニューヨークタイムズは殺されたクリストファー・スティーブンス大使(享年52)はアラビア語に堪能で、アラブの文化に対しても造詣が深い人物だったとしている。リビアで反カダフィ闘争が始まった後、反政府派と連携してカダフィ政権打倒に尽くしたとされる。
http://www.nytimes.com/2012/09/13/opinion/murder-in-benghazi.html この社説の中見出しには'The worst thing now would be for the U.S. to turn away from its committments to work with Libya and Egypt'とある。「米国にとって最悪の事態はリビアとエジプトに対するコミットを放棄することである」とニューヨークタイムズ社説は書いている。 これは「アラブの春」に陰で手を貸し、独裁政権崩壊後はイスラム主義の与党と連携しながら、親米的な中東〜北アフリカ圏を構築しようと試みてきたアメリカの思惑が危機に瀕していることを示唆しているようだ。
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