最近書店でジェームズ・サーバー(James Thurber,1894−1961)の短篇集「傍迷惑な人々」(光文社)を見かけた。サーバーは雑誌ニューヨーカーで活躍したユーモア作家であり、漫画家でもある。サーバーが光文社から改めて出版されたことは嬉しいニュースである。
http://www.amazon.co.jp/%E5%82%8D%E8%BF%B7%E6%83%91%E3%81%AA%E4%BA%BA%E3%80%85-%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E7%9F%AD%E7%B7%A8%E9%9B%86-%E5%85%89%E6%96%87%E7%A4%BE%E5%8F%A4%E5%85%B8%E6%96%B0%E8%A8%B3%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%82%BA-%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC/dp/4334752543#_ サーバーはほのぼのとしたタッチの漫画や小説を書いており、我々は読むとおおらかな気持ちになれる。ダニー・ケイ主演の喜劇映画「虹をつかむ男」の原作、「ウォルター・ミティの秘密の生活」や「ホイッパビル」など、風変わりな人間が巻き起こす悲喜劇をユーモアあふれるタッチで描いている。また、愛犬家だったらしく、犬についてもたくさん文章や漫画を描いている。「サーバーのイヌ・いぬ・犬」(鳴海四郎訳 早川書房)である。
妻のお気に入りの帽子を愛犬が噛んで台無しにしてしまった。夫は何とかしなければ、と犬から帽子を奪って手にしているところへ折しも出かけていた妻がドアから入ってくる。サーバーはこうした気まずい一瞬をとらえるのが巧みだ。もともと何か訴えたいテーマがあって筆を執るというタイプではなく、我々が普段感じている内奥のさまざまな思いをスケッチするタイプの作家である。そしてしばしばそれは常識的世界から脱線してしまう。サーバーがこれほど懐かしいのは今の時代が常識と通念と人間憎悪でがんじがらめになっているからだろう。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/images/4150501157/ref=dp_image_0?ie=UTF8&n=465392&s=books さて、もしどこかに勇気ある出版社があるなら、ぜひ出して欲しい本がある。' The Exective's in a word book'というものだ。四半世紀前に、アメリカ旅行をした時に買った本で、さまざまな英単語の語源について短い解説が書かれ、サーバーの挿絵がついている。文章はMargaret Ernstによる。このErnstさんは言語に詳しい人で、語源に関する著書を何冊か書いているようだ。
abundance , alimony, astonish, auspicious, ballot, bastard, binnacle, book, bribe, budge, canary...など多数の英単語の語源が簡単に解説されている。ラテン語やギリシア語に由来する単語が多い。しかし、これが単なる語源辞典と一線を画すのはサーバーの出色の出来栄えの漫画が挿絵となっていることである。サーバーの漫画が20世紀アメリカの表現にとどまらず、古代の風俗を描くにおいても見事であることを証明してもいる。ともすればまじめで権威主義に染まりがちな世界をサーバーが楽しくしてくれる。
僕が持っている版の出版社はBelmont Productions, Incで1963年の初版である。もはや表紙はやぶれボロボロの状態だ。旅行に持ち歩くのに最適なのである。
http://www.ebay.com/itm/Word-Margaret-Ernst-and-James-Thurber-1st-ed-HBk-1939-/330621650193
http://www.amazon.com/In-A-Word-Margaret-Ernst/dp/B0007DKSLQ
|