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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2012年12月10日23時53分掲載
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文化
【核を詠う】(78)福島の歌人たちが原発災の日々を詠った短歌作品を読む (8)『平成23年度版 福島県短歌選集』(福島県歌人会編)から<3> 山崎芳彦
総選挙が奇妙な熱を帯びている。これまでになく多くの政党が名乗りを上げそれぞれいかにも独自の政策を掲げているかのように、テレビ媒体の中で「論戦」を、はげしい口調で展開しているのだが、そのにぎやかさのなかで、例えば、改憲して国防軍を、核武装を想定してのシュミレーションを、原発の維持を、などという物騒なことが、不思議ではなく語られている。この選挙戦は、あたかもどのような非条理、破天荒ともいえることでも、言いたい放題に言い、その空気に有権者、国民を引きずり込もうとする企みを持って展開されているのではないかと、思わせる。
これまでも小出しにしてはいたが、はっきりとは言えないでいた、この国の危うい大転換への一里塚にしようとする、そんな狂気を孕んだ騒ぎようである。もちろん、すべての政党がそうだといっているのではないが、意識的にゆがんだ空気を作り出そうとする企みを持っている大勢力があるのは確かだろう。この選挙の結果がどのようなものになるにしても、このような喧騒、混沌を経ることがもたらす危険な状況、どれ程ひどいことを言っても許されてしまう状況は、危険であろう。
そのような中で、原発が論じられても、3・11以後の福島をはじめとする被災者の生活、健康、さまざまな苦難は、具体的に解決の道を進んでいるとはいえない。そして、核・原発の現状は、3・11の経験を経た今日であるとは言えないようなものである。核・原発列島の危険は、人びとの生活の困難が深刻化するほどに、原発信仰をあおる経済成長・景気回復・国際競争力の回復・雇用の回復などを理由にした、原発再稼働、新しい「安全神話」の創作による原発エネルギーの維持の企み、政財官と米国が一丸となった方向が支配力を堅固にする大状況を打ち破る力の構築がなお困難な様相を見せている。
つい先日、東日本地方を中心とするマグニチュード7.3の地震があった。多くの人が原発に目を向け、恐怖感を持ったと思う。この地震は北海道から九州まで、まさに原発列島を揺るがし、各原発からの「異常なし」発表に疑念を持つ人も多かったと思う。使用済み燃料棒を入れているプールの水面が揺れ、各所で警報装置が音をたてたと言う。原発施設だけでなく、多数の関連原子力各施設をどこまで精密に点検しての「異常なし」なのか、これまでの電力企業の事故隠し、各種の隠ぺいの経過を思えば、疑念は消えない。もう少しレベルの高い地震だったらどうなったか、福島の4号機プールはどうなっているのか、原発がある限り、つねに危険にさらされていることを思わないではいられない。 それでも、大飯原発は動き続けているし、再稼働へとのどから手が出るような思いでいる原発勢力は、この選挙戦の中でも、「現実」主義を振りかざし、ごまかしと、鎧の下から袖の見える原発論議をやめない。
しかし、そのような総選挙であるからこそ、私たち主権者は単に投票することで、誰かに主権を預けるものではないことを確認し、主権者であるにふさわしい行動を、生き方を具体的になすことを軸にして、考える時にしなければならない。どこかの政党や政治化グループに託すのではなく、主権のありどころを自らに位置づけ、主権者としてどうするかを自分から、そして共にたたかえる力を身の回りから作り上げることに起たなければならないのだと思う。主権は行なわれてはじめて主権なのだから、この選挙も受身のものとしてではなく、本気になって考え、できる行動を誰かから指示されてではなく、していくことが必要な時だと考える。
いま、選挙状況に巻き込まれるのではなく、あるいは傍観するのではなく、そしてこれが脱原発社会への始まりとする重要なステップであることを確認しながら、呼びかけあい、ともに動ける陣地を構築したい。 ひどく抽象的で昂ったことを書いてしまったが、福島の詠う人々の短歌を読むことは、私にとっての学びである。前回に引き続いて『福島県短歌選集』の作品を読む。
▼原発の事故に戦き覚えつつひと日ひと日を過ごして居りぬ 1首 大友サタ
▼土壌汚染作付けできぬ水田の果てなくつづく原発フクシマ
芝草や庭木刈り込みセシウムをわづかに下げて新盆迎ふ 2首 大庭輝夫
▼ふとおもう内部被曝?時のあり空行く雲に問うてみたかり
自然治癒の恵みを頼りの食卓は日本(にっぽん)食が力量みせる
列島へ飛来はじめし白鳥は線量汚染を知らず純白 3首 大部里子
▼連日を陸上練習走りいし孫は放射線拡散のなか
放射線の拡大知らず無防備に戸外走りし 今更どうする
すつぽりと放射線被り吸い込んでその後マスクの着用要請
転校か家族離散かしんこくな原発事故の生みし現実
放射線成長期の子を如何にせんと息子らの声耳を離れず
奥会津より届きたるマイタケはセシウム検査の鑑定書つき
特産のみしらず柿の風評を風評として箱詰めをする
かじかむ手雪近づくにふるさとの家さ帰れぬ被災地の児は 8首 大堀千枝子
▼フクシマ人はゼッケンつけよと言いしとう被災者われらに都会の人ら
たくましき雑草茂る道々を分け入りながら無人の我家 2首 大和田元子
▼放射能に外の遊びも叶はざる風の子と今日県外目指す
ままごとに放射線量はかる子の翳りなき顔素直なる顔 2首 岡田 稔
▼さわやかな五月の風にも不安増す聞き慣れたるマイクロシーベルト
砂場にはひまわりの花咲き揃い子等の声無く秋風の立つ 2首 岡部久美子
▼殺処分さるるとふ牛達は帰ることなき牛舎いでゆく 1首 荻野 昭
▼原発の安全神話を吹き飛ばし悪魔が手持てかき回したか
三月の十一日から動けない明るくあせびの花咲くのに
わが耳は安心を求め説明会に安全の音のみ追いかけており
何事もなかったような空の青放射能は色も見せずに
便利さは自然を汚すと言われたり記者会見のドナルド・キーン氏 5首 荻野 しげよ
▼斯くもろく電源絶たるる原子炉をテロの標的といふ声のあり
原発の孕むもろさを詠み来し君無事なる電話よ避難先より
原発の地より老いらを送り届けガソリン乏しく帰りゆきたり
脚(あし)高く原発の芝生歩みゐしダチョウの番ひ逃げおほせしや
原発より逃れ来し人らを思はずも山の療養所にて吾は診るなり 5首 小野木正夫
▼ふくしまのほんとうの空蒼いうみ救わるるのは何時の日のこと
地震津波原発風評被害など話題は尽きず 同級会果つ 2首 小野洋子
放射能受けしやも知れぬふきのとう春のいぶきと花瓶にさしぬ
外に出て遊べぬ孫等わが家でかくれんぼする「もういいかい」 2首 小原富子
▼眼に見えず匂いもせずに放射能降り来る恐怖いつまでつゝ゛く
放射能の影響ならんこの秋は蜻蛉の姿あまり見かけず 2首 加藤次男
▼日に幾度楽の如くに聞き馴れしシーベルト、シーベルト 降る夏の雨 1首 加藤日出子
▼「福島」がトップニュースになっているこの春の日の深き憂鬱 1首 加藤道子
▼葉のすべて四つ葉の品種のクローバー幸せさがす幸せうばう
滅亡の日はひたひたとやってくる何かが足りぬこの瞬間も 2首 金澤憲仁
▼永遠(とこしへ)にあの古里は戻らぬか荒れ野に咲けるみそ萩の花 (原発事故) 1首 金田美代子
▼寝たきりの母にかまけて原発の不安まぎらすそれも良しとす
沸き起る憤怒のマグマ堪へつつ真冬を迎ふ見知らぬ街に 2首 鎌田清衛
▼老いたれば風評などは気にもせず福島の恵みの桃をいただく
放射能に屋外活動ままならず夏に長袖子等に強いらる
標(しるべ)とす自然の移ろい常なるも農に励むを阻む放射線量
作付けを間近に控え農吾等放射能汚染に日々の戸惑い
側溝の除染に疲れ仰ぎ見る紺碧の空に白雲の妙 5首 鎌田佳子
▼米の作付可能指示あれど遅れし作付に迷ひてをりぬ
我が町の放射線量値一日三回の広報をしつかりメモして過ごす
原発事故屋内退避に暮れる日々庭の水芭蕉満開となる
裏山のタラの芽ワラビ原発被害に伸び放題の新芽を見つむ
この緑食むか食まぬかキヌサヤを手にし迷へり原発ゆゑに
うぐいすやかつこうの鳴く吾が村に放射能測定値の広報響く
植ゑ終へし田を見つめつつ原発の不安を抱ふ今年の稲作 7首 蒲生君江
▼避難しか選べる道はないのかと娘のメールにゆれ動く日々
原発のメルトダウンの危険しりて孫との帰郷を拒みて居りぬ
原発に負けずに咲けとヒマワリの五十余の花天高く伸ぶ
花火さえ川俣産というだけで打ち上げ中止の風評被害 4首 菅野節子
▼擬似神話くづれてむなし朝々を放射能汚染の測値たしかむ
住民に強ひる犠牲はいつまでか楤の芽の汚染椎茸もまた
汚染土に春耕できぬ君が村黄の色ゆたかに茎立菜咲く
放射能汚染に捥がざる庭の梅自づと落ちて匂ふ寂しさ
岡の辺の木苺熟るる赤き実を放射能恐れて摘むことはなし
セシウム値高くあらむか稔り田に雀脅しの案山子もあらず
大津波に原発事故に追はれ来し人らを襲ふゲリラ豪雨は
被曝地の復旧遅れを嘆く歌わが県民の声と聞きたり 8首 菅野福江
▼二十年原発の町に帰れぬと友の電話に返す言なし
放射能流るる程に台風の雨降らむかと避難者のいふ
放射能恐れ柿捥ぐ人なくて鴉群れきて啄みてをり 3首 菅野八重子
次回も、『福島県短歌選集』を読み継いでいく。 (つづく)
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