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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2012年12月16日21時49分掲載
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検証・メディア
人気司会者性犯罪疑惑報道をめぐる、英BBC危機の実態と教訓 ―「新聞協会報」より
故・人気司会者ジミー・サビルの制犯罪疑惑に端を発し、BBCが揺らいだ。疑惑に関連した調査報道番組での誤報をきっかけに、経営陣トップが辞任。誤報以前には、疑惑を調査していた番組が放送中止となった一件があった。後者の件について、調査報告書が今週、発表される予定だ。疑惑報道の発端からこれまでについて、週刊「新聞協会報」12月4日発行号に寄稿した。その後の新情報も含めて、以下に掲載したい。(ロンドン=小林恭子)
(記事中では敬称を略しています。)
***
英BBC危機の実態と教訓 ―疑惑と誤報で崩れる名声 取材の初歩、おろそかに
英国放送協会(BBC)が、批判の矢面に立つ日々が続いている。きっかけは10月上旬に広く知られるところになった、BBCの元人気司会者ジミー・サビル(故人)による、未成年者に対する性的暴行疑惑だ。
昨年末、この疑惑について調査を行っていたBBCのテレビ番組「ニューズナイト」が、急きょ、予定番組の放映を中止したことが分かった。BBCが同氏の素行を隠ぺいした疑いが出た。
追い討ちをかけるように、同番組は今年11月初旬、別の性的暴行疑惑について誤報を出した。BBCへの国民の信頼は下落し、経営陣トップが引責辞任する事態となった。
事態の拡大を時系列で追いながら、BBCの危機の実態と教訓を考える。
―解明への初動遅れる
昨年末から年頭にかけて、BBCは慈善活動家としても知られたサビル氏の功績をたたえる複数の番組を放映した。同時期、調査報道で知られる「ニューズナイト」はサビル氏が児童を性的に虐待していたとする番組の制作を進めていた。放送予定になっていたものの、11月末、直前で中止となった。
今年年頭から、「ニューズナイト」の番組放映中止が一部新聞で報道されていたが、10月上旬、民放最大手ITVがサビルの虐待疑惑を番組化して放映したことで、BBCでの同様の番組の放映中止が大きくクローズアップされた。
10月2日、「ニューズナイト」の編集長ピーター・リッポンはBBCのウェブサイトに設置されたブログで、BBCによる「事態隠ぺいはない」、「編集上の理由で」放映を中止したと説明した。
翌3日、ITVは犠牲者らのインタビューが入った、サビルの番組を放送。「自分も虐待にあった」と警察に連絡をする人が出てきて、本格的な捜査が始まった。
12日、ジョージ・エントウイッスルBBC会長(当時)は記者会見を開き、「ニューズナイト」の番組放映中止問題とサビルの性犯罪疑惑解明のための調査を実施すると発表した。ITVの番組放映から9日後で、活発な24時間報道体制が機能する英国では、遅い決断と見なされた。
―「知らない」で通し、辞任へ
23日、会長は、下院の文化・メディア・スポーツ委員会の公聴会に召喚され、サビル問題について質疑を受けた。同氏は今年9月中旬、会長職に就任したばかり。前職はBBCビジョン(テレビ部門)の統括者で、問題となったサビルの追悼番組を含むテレビ番組すべてを監督下に置いていた。
公聴会で、エントウイッスルは昨年時点でサビルの性犯罪疑惑に関する番組についてほとんど知らなかったと述べた。疑惑発生後にも番組の関係者と直接話をしていなかった。その理由はBBCの組織が「階層的になっている」ため、つまり、現場に会長の自分が直接連絡をする仕組みになっていないためだという。「知らない」「分からない」の連発の答弁であった。
前日22日にはBBCの調査報道番組「パノラマ」(テレビ)が、サビル報道の放送中止の経緯を関係者への取材を通して明らかにした。浮かび上がったのは経営陣による現場掌握の不完全さや「ニューズナイト」の編集責任者と制作スタッフとの意思疎通の悪さであった。
11月上旬、ニューズナイトの制作スタッフは、新たな性的暴行疑惑に関する番組を準備。共同制作者となった非営利組織「調査報道局」の編集長イアン・オバートンは、2日午前中、「大物政治家で児童性愛主義者についての番組が今晩、『ニューズナイト』で放映される」とツイートした。午後1時過ぎ、元「ニューズナイト」の記者で現在は民放チャンネル4のマイケル・クリック記者が「『大物政治家』は主張を否定。BBCを名誉毀損で訴えるという」とツイートし、事実誤認の可能性を指摘した。これと前後して、「政治家」とは保守党政治家アリステア・マカルパインである旨のツイッターが多数流れた。
2日夜の番組で「ニューズナイト」は、1980年代、ウェールズ地方で発生した性的暴行疑惑を犠牲者のインタビュー付きで放映し、加害者の一人が当時の大物政治家である疑いを報じた。番組は加害者の名前を明らかにしなかったが、放送後に「政治家」とは保守党政治家アリステア・マカルパインンであることがツイッターで多数流れた。
8日、ガーディアン紙が電子版で(紙版では9日付1面)、BBCが嫌疑をかけた人物はマカルパインではないとする記事を出した。翌9日、犠牲者自身が暴行を行った人物はマカルパインではないことを認め、同氏に謝罪。「ニューズナイト」も番組内で謝罪した。「ニューズナイト」は、マカルパインの写真を犠牲者に見せて本人確認をすることを怠り、同氏に返答をする機会を事前に与えていなかったことが後に分かった。
10日、BBCラジオの朝の時事番組「トゥデー」に出演した会長は、司会者ジョン・ハンフリーズからサビルや誤報事件について取材を受けた。辞任の可能性については、「十分にやることはやった」と答えた会長だったが、誤報を出した番組を当日は見ておらず、事実誤認を指摘した一連のツイートの存在を認識していなかった。ガーディアンの1面に掲載された関連記事も読んでいなかった。「すべての番組や言論を確認できない」と説明したものの、「番組を見ず、ツイートに気づかず、新聞も読まない」と司会者に評された後、メディア組織のトップとしての地位は大きく揺らいだ。その夜、会長は辞任を発表した。
12日、「ニューズナイト」による誤報の経緯を調査していたBBCスコットランドの責任者は、「番組内容に誰が最終的に責任を持つかがあいまになっていた」ことを混迷の原因として挙げた。
BBCはマカルパインに対し、誤報による名誉毀損で賠償金18万5000ポンド(約240万円)を払う羽目になった。マカルパインは、疑惑を報じたITVの番組とも賠償金12万5000ポンドを受け取ることで合意した(11月8日、ITVの朝の情報番組内で、生出演中だったキャメロン首相に、司会者の一人が「ネット上で児童性愛主義者として名前が挙がった人のリスト」を手渡し、コメントを求めた。リストには保守党政治家などの名前が並んでいた)。
さらに、ツイッターで名前を特定した人のうち、影響力が強いと思われる人も訴えるという。12月中旬、マカルパインは、下院議長夫人で、活発なツイッター利用者であるセーラ・バーコウに対し、名誉毀損の損害賠償として5万ポンドの支払いを求めていることを明らかにした。
一連の事態の教訓は少なくとも2つある。「メディア組織の幹部は瞬時の判断を求められる」、そして「取材の初歩をどんな状況下でもおろそかにするべきではない」。後者は番組および組織の名声を一瞬にして崩壊させるばかりか、トップの首を飛ばす可能性があるのだ。
***
12月12日、ロンドン警視庁が発表したところによると、ジミー・サビルによる性犯罪疑惑事件で、同氏に性的虐待を受けたと申告した人の数は450人に上った。また、同氏の関係者による虐待の申告までを含めると、589人になるという。
申告者のうち、82%が女性で、80%が児童・未成年者だった。
サビル氏関連の性犯罪捜査は10週間前に開始され、30人の捜査員が関与。これまでの捜査費用は200万ポンドに上っている。
性犯罪の疑惑件数はこれまでで199件となり、31件がレイプ疑惑だ。
サビル氏事件に関連して、性犯罪疑惑で逮捕された著名人は、PRコンサルタントのマックス・クリフォード、コメディアンのフレディー・スター、DJのデイブ・リー・トラビス、タレントのゲーリー・グリッターなどがいる。
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