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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2013年01月04日13時39分掲載
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文化
【演歌シリーズ】(29) “ひばり映画”と昭和銀幕の華―津島恵子の純白― 佐藤禀一
ひばりちゃんは、男の子だ!! 歌が先か、映画が先か定かではないが、美空ひばり出演映画は、ことごとく当たり、そこで歌われた歌は、ことごとくヒットした。私が『悲しき口笛』(昭24)を観たのは、ラジオで歌を聴いてからだったと記憶している。11歳の時である。“ひばりちゃん”は、1歳年上のお姉さんだが、同時代のスター誕生と心を踊らせた。この作品以前の“ひばり映画”3本『のど自慢狂時代』(昭24 監・斎藤寅次郎 出・アチャコ 杉狂児 灰田勝彦 並木路子)『踊る龍宮城』(同 監・佐々木康 出・大辻司郎 川路龍子 奈良光枝)『あきれた娘たち』(同 監・斎藤 出・田中春男 アチャコ 久我美子)は観ていないが、ひばり10代の58本すべてリアル・タイムで観惚けた。
◆美空ひばり10代の『ひばり映画』
“ひばりちゃんは、男の子だ”と思ったのは、『悲しき口笛』の印象である。なにしろつば付きの帽子をあみだに被った半ズボンの“浮浪児”姿で、原っぱの土管で寝泊まりしている。キラキラ輝く女の子を見ようと思った少年の想いを裏切ったのだ。観ているうちに“少年ひばり”に心惹かれていった。 翌25年スラップスティック(ドタバタ笑劇)の名手斎藤寅次郎監督の傑作『東京キッド』(出・アチャコ エノケン 堺駿二 川田晴久)のひばりちゃんも少年姿だ。「右のポッケにゃ 夢がある/左のポッケにゃ チューインガム」『悲しき口笛』と同じ詩・藤浦洸 曲・万城目(まんじょうめ)正コンビによる曲ともども大ヒット。“ひばりちゃんは、男の子だ”は、まだまだつづく。同じ斎藤監督による『とんぼ返り道中』(昭26 出・高田浩吉 宮城千賀子 坪内美子)で少年角兵衛獅子を演じ「笛にうかれて 逆立ちすれば」と『越後獅子の唄』(詩・西条八十 曲・万城目)を歌い、『鞍馬天狗 角兵衛獅子』(同)で同じ役をやっている。
ひばりの男役は、男っぽい立居振舞も含め彼女の当り役の一つになるのである。例えば、『ひばり捕物帖 唄祭り八百八町』(昭28 監・斎藤)『ひばりの三役/競艶雪之丞変化』(昭32 監・渡辺邦男)『江戸っ子判官とふり袖小僧』(昭34 監・沢島忠)『ひばり十八番/弁天小僧』(昭35 監・佐々木康)などなど枚挙にいとまが無い。いずれも主題歌を歌っている。 美空ひばり出演劇映画の最後は、芸に生きた舞踊家に扮した時代劇『女の花道』(昭46 作・川口松太郎 監・沢島 出・田村高廣 辰巳柳太郎 森光子 杉村春子 北林谷栄)34歳の時である。『たけくらべ』(昭30 監・五所平之助 出・北原隆 市川染五郎(松本幸四郎) 岸恵子 山田五十鈴)を除く全作品で歌っている。歌先でつくられた映画に『リンゴ園の少女』(昭27 監・島耕二)がある。これとて同名ラジオ・ドラマの主題歌『リンゴ追分』(詩・小沢不二夫 曲・米山正夫)が大ヒットし、それを挿入歌として制作された。ひばり15歳。この曲は、美空ひばりの歌手としての才能を全面開花させた名曲である。
2012年7月山田五十鈴、8月津島恵子と相継いで逝った昭和銀幕の華が、こうした“ひばり映画”で存在感を示しているのである。
◆『悲しき口笛』の津島恵子
戦後は、しばらく“人尋ねの時代”であった。戦争で家族がバラバラ、復員兵も家族の行方が不明、NHKラジオが「尋ね人」放送をし、国民すべてが耳を傾けた。“帰って来た英霊”おおよそ10万人、驚いたことに、靖国神社に奉られたはずの夫や息子が帰って来たりもしたのだ。ここに“靖国”のインチキ性が窺える。なにしろ“神”が“人”になって現れたのだから……。この時代を象徴する歌に『岸壁の母』(歌・菊池章子 詩・藤田まさと 曲・平川浪竜)がある。帰らぬ息子を引き揚げ船の着く港で待ちつづけた母の実話を基にした。
『悲しき口笛』も人捜しの映画だ。監督の家城巳代治(いえきみよじ)は、戦時中(昭19)にもかかわらず炭坑事故の問題をも抉った恋物語『激流』(出・小沢栄太郎=栄 水戸光子)でデビュー、後に田宮虎彦原作の戦争で歪んだ心を持つ男(三國連太郎)に翻弄された女(田中絹代)を描いた『異母兄弟』(昭32)などを演出した社会派人間ドラマ作家である。『悲しき口笛』も復員してきた兄(原保美)の作詩・作曲した歌を手懸りに、それを歌う妹(ひばり)を捜すヒューマン・ドラマである。
ひばりが寝ている原っぱの土管のそばを一組の父娘が通りかかり、哀れに想い、家に連れ帰る。父(菅井一郎)は、流しのヴァイオリン弾き、娘(津島恵子)は、酒場で女給をしている。暮らしは、貧しい。娘が稼ぎを増やそうと変えた働き先が密輸組織、様々なトラブルが待っている。筋はともかく、ボロをまとった少年ひばりが、津島恵子にブラウスを着せてもらい少女に変身する。11歳のガキは、津島恵子にいかれた。なによりも目の表情の柔らかさに参ってしまった。“純白”のイメージであった。 11歳のガキに“純白”のボキャブラリーがあるはずがない。後に、貼りつけた言葉だ。映画は、歌の実力が認められひばりは、兄のつくった『悲しき口笛』をシルクハット、燕尾服とステッキの出で立ちで歌う。舞台は、クラブ、そこで兄と再会し抱き合ってハッピー・エンド。
11歳のガキは、ひたすらひばりちゃんの歌姿と津島恵子の眼差しに酔い痴れていたのである。(敬称略)
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