2月27日、パリの自宅でステファン・エセル(Stephane Hessel)氏が亡くなった。第二次大戦後、世界人権宣言の執筆に参加しただけでなく、近年は「ウォール街を占拠せよ!」という運動やアラブの春などの抗議運動にも大きな影響を与えた。その著書は、Stephane Hessel著「Indignez-vous!」(「怒りなさい!」。英訳のタイトルは「Time for Outrage(怒るとき)」)である。
エセル氏は格差問題だけでなく、ユダヤ人でありながら、イスラエルのパレスチナにおける占領政策にも人道の立場から一貫して反対してきた。
■フランスからの手紙24 「現代の黙示録?」
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201201041101423 「ここで触れておきたいのはステファン・エセル(Stephane Hessel)が2010年に出版した本「Indignez vous !(怒りなさい!)」の中でまさしく「怒りなさい」と訴えていることだ。エセルは94歳になる品格のある人物で、第二次大戦中はナチに対するレジスタンス活動を行い、強制収容所から生還した。エセルは1948年に「世界人権宣言」を世に出した執筆者の一人である。彼は2010年に出したこの本の中で、第二次大戦後に導入された人間の暮らしを守るための社会制度が根こそぎ、フランスでは特にそうだが、世界中で解体されてしまったと指摘している。」
■イスラエルのハーレッツ紙でエセル氏が発言(2012年3月)
エセル氏がパリの自宅で、イスラエルの新聞ハーレッツ紙のインタビューを受けた記事が掲載されている。エセル氏はイスラエルのパレスチナ占領に反対しており、イスラエルの平和には、イスラエルとパレスチナの2国間による平和への取り組みが欠かせないとしている。この努力によって、イスラエルは高額の軍事予算から解放され、その資金を雇用対策に回せば、若者たちの不満も解消できると考えているようだ。また、エセル氏は1国内でユダヤ人とパレスチナ人が共存することは現状では現実的ではないとしている。
’As long as Palestinian violence exists, but not a Palestinian state, Israel is in danger. That is why I have always supported a two-state solution. I know there are voices today urging one state which will accommodate Jews, Muslims and Christians. That idea is completely unrealistic.’
「パレスチナ国家の代わりに、パレスチナによる暴力がある限り、イスラエルは危険な状態にある。だからこそ、私は二国家による解決を望んできた。もちろん、ユダヤ人、イスラム教徒、そしてキリスト教徒が1つの国に共存すべきだという声を知らないわけではない。しかしながら、それはまったく現実性を欠いた意見である」
http://www.haaretz.com/weekend/magazine/best-selling-french-author-and-holocaust-survivor-has-some-advice-for-israel-1.417320 ■エセル氏の追悼記事(ルモンド)
http://www.lemonde.fr/disparitions/article/2013/02/27/mort-de-stephane-hessel-a-l-age-de-95-ans_1839458_3382.html
■追悼に集まった人々の映像(ルモンド)
http://www.lemonde.fr/disparitions/video/2013/02/28/rassemblement-a-paris-en-hommage-a-stephane-hessel_1840083_3382.html 2月27日の夜、パリのバスティーユ広場に数十人が集まって蝋燭を灯し、追悼集会を催している。ナチスドイツに対するレジスタンス運動から最近の格差社会に対する抗議運動まで、エセル氏は人間が尊厳を持つことがいかに大切であるか、自ら行動を持って示した。
■ニューヨークタイムズの追悼記事
http://www.nytimes.com/2013/02/28/world/europe/stephane-hessel-author-and-activist-dies-at-95.html?_r=0 この記事でニューヨークタイムズはエセル氏が本当に世界で知名度を高めたのは2010年にパンフレット、「Indignez vous !(怒りなさい!)」を発行してからだと指摘している。このパンフレットにはナチスドイツに対抗して戦った彼の青春がこめられている。その胸の炎が今日の若者たちに通じているとしている。
■「デモクラシー・ナウ」にエセル氏が登場
http://www.democracynow.org/blog/2011/10/10/stphane_hessel_on_occupy_wall_street_find_the_time_for_outrage_when_your_values_are_not_respected 人間の尊厳が侵されたとき、「non violently, peacefully but definitely- 非暴力で、平和的に、しかし断固として抗議すること」と語っている。
村上良太
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