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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2013年03月26日22時02分掲載
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TPP/脱グローバリゼーション
【女たちのTPP】(1)くらしを記録して 西沢江美子
「TPPに反対する百姓女の会」ができて二年七カ月になる。この会は自然発生的だった。太平洋戦争の敗戦から農家の嫁として、新しい農村で納得して生きることを求めて様々な活動をしてきた、人生豊かな中高齢女性三一人からはじまった。平均年齢七〇歳。「書く」ことで、自己表現をしてきた人たちばかりである。メールが普通ないま、せっせと手紙を書き、FAXを送り、交換ノートに回らんノートと、自分の手からつむぎ出される文字だけが力といった女ばかりが集っている。
「馬や牛同様に扱われてきた百姓女が人として生きていくことを叫び、書いてきた。やっと国民年金を四万円ほどもらい、直売所に野菜やつけものを出し、自分名義の貯金通帳を持っている。夫と二人の生活費に消えるが、それでも、自分で自由に下ろしてつかえるお金だ。TPPは、はっきり見えないけど、何代も何代もの女たちが夢み、闘ってやっと勝ちとった〝自分の金〟まで奪っていくのではないだろうか。私たちはアリのように小さいけど、アリが大きな虫をみんなで引っぱって巣に運ぶように、みんなでチエを出し合ってTPPなど吹きとばそう」
86歳になる群馬県高崎市の女性は回らんノート「百姓女」の一ページで呼びかけた。 それに答えるように 「〝TPP反対〟だけじゃ何のことかわからない。新聞やチラシ、テレビで出てくる反対の人たちと同じことをいってもダメ。自分のことを書こうよ。TPPになったら不安ということを。私はやっぱりこの家と地域がなくなるんじゃないかと思う。農協、郵便局、診療所が遠くなっちゃって、いまだって郵便局へは歩いて三十分。農協は電話で来てもらう。診療所がなくなったら病気をがまんするか入院するしかない。入院したとして、大部屋が空いていなければ差額ベッドだよ。直売所で年間六十万円ほどの収入じゃむりむり。やっぱりがまんだな。そんな状況では、子ども夫婦は出ていくよ。ここの集落じゃ八戸だ。ついこの間(昭和五〇年頃)三二戸もあったんだ。八戸のうち子ども夫婦と同居はうちだけ。TPPは病気の老人の家からつぶしていくかも知れない。」(七八歳・栃木県那須)
「私は土方に出ていたので厚生年金です。お陰で六万円(一か月)、それに椎茸とコンニャクを夫と二人でやっている。これが約五百万円ほどかな。だから年金の六万円は全部自分のものにつかっている。椎茸もコンニャクもTPPになったら終り。この年齢では他の収入源はない。夫の年金と合わせても月二十万円弱。その年金もどんどん引かれていくし。」(七五歳・長野県飯山市)
書き出したら切りがない。百姓女たちは、自分の生活の中からTPPになったらどうなるかをとらえている。何冊もの回らんノートが全国の百姓女の間をつなげている。
彼女らがなぜ、大学ノートに自分の生活を「TPP」という視点でみつめ、書き、それを次の人に郵送するまでできるのか。それは「くらしを記録する運動」(昭和二十年代後半から二〇年ほど全国に広がった)の世代であるからだ。
私自身、一三歳の時「子ども風土記」(国土社発行)に出会い、次の年(中学一年)には「わが家の貧乏とこの村の貧しさの原因はどこにあるか」を探して一年間ノートに記録することを担任の先生から与えられた。
その後の私のものの見方、考え方の原点はこの一冊の本と記録である。作文や日記は、それまでにずい分書いてきた。だが「くらしを記録する」は、書くことによって社会のしくみまで記録するといった日記とは大きなちがいがあった。 回らんノート『百姓女』は、彼女たち個々の夢はちがっているが、そのくらしの底にある社会の動きを目に見えるように伝えてくれている。
(つづく)
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