今年4月9日、ブリュセルで、EUの行政府であたるヨーロッパ委員会(EC)が、『2013年:EUレポート』を発表した。これは、EU加盟国政府に選らばれたが、独立したパネルが起草したものだった。例えば、英国の海外開発研究所(ODI)、ドイツ開発研究所(DIE)、ヨーロッパ開発政策管理センターなどが参加した独立パネルであった。レポートには、先進国が、2000年9月の「ミレニアム国連特別総会」で採択した「ミレニアム開発ゴール(MDGs)」に代わる新しい開発援助の青写真が描かれていた。
従来のMDGsは、2015年までに達成すると公約したが、その間、日、米、そしてEUが金融危機に見舞われ、達成は困難視されている。EUは、「新しい青写真は、MDGsの枠組みであった貧困の根源に取り組む、持続可能な、統合的な開発援助」を踏襲したものだと言っている。
今回のEUのレポートは、2000年に、国連で採択された「MDGsは、かつてない規模のグルーバルな開発運動を巻き起こした」と自画自賛した。しかし、MDGsに代わるプランでは、貧困国に対して、いっそう多くの援助を必要としていることは確かで、単に第1期MDGsを踏襲だけに留まってはならない。 ブッルセルでの記者会見で、ECの開発委員会のAndris Piebalg委員長は、「第2期では貧困根絶と同時に持続可能な開発に取り組むべきである」、「援助だけでは解決出来ない。資金の供給以外の方法を考えるべきだ」と語った。
ECはしきりと、このレポートは、EUの提案ではないと言っているが、パネルのメンバーの言い分は違う。英国ODI のPedro Martins は、レポートが言わんとしているのは「グローバルな開発の論議の中で、持続可能性、社会的差別根絶、不平等などのテーマが欠けているという点だった」そして「レポートは、これらのテーマについての答えをだしているのではないが、問題提起をしている」と述べた。
一方、ECのPiebalgs開発委員長は、「レポートはECの援助に際しての指針である」と述べている。確かに、第1期MDGsには欠けている点があった。例えば、第1期MDGsは、格差の解消については触れていない。また、生産的雇用、気候変動、ガバナンス、移民、紛争、人間の安全保障、身障者などは、取り上げられていない。EUのレポートは、先進国がMDGの公約を遂行しなかったことを非難している。また、援助する側の国の政策とMDGの目標とマッチしていないことが多かった。援助の結果が、意図とは異なって“白い巨象”に終わってしまう場合もあった。
しかし、レポートが強調しているのは、ミレニアム以後、気候変動、貿易などについて国際的な合意を得ることが出来なかった、また、安定した、透明性のある国際金融システムを構築することが出来なかった、ことである。
国連は、第2期MDGを草案する「ハイレベルのパネル(HLP)」を任命している。低開発国グループは、貧困根絶を妨げている要因を明らかにすべきだと主張している。 アフリカの低開発国は、豊富な天然資源を持っているが、それに見合う収入を得ていない。それは、多国籍企業が税制度を操作し、金融ヘイブンを利用し、さらに不公平な一時産品のロイヤルティ協定を結んでいることによる。
以上のテーマは第2期MDGsの作成にあたって、考慮しなければならない。ECのパネルが起草したレポートの内容は悪くない。また、国連が任命したHLPが起草する提案を待たねばならない。しかし、肝心なことは、第1期MDGについての評価もないことと、第2期についての議論が全くない、という点である。
------------- Yoko Kitazawa
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