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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2013年07月12日13時58分掲載
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文化
【核を詠う】（115）三原由起子歌集『ふるさとは赤』から原発詠を読む（3） 「やりなおしできない世界を覚悟して警戒区域はいつも真夜中」 山��芳彦
いまたたかわれている参院選の福島選挙区では自民党、民主党の陣営が原発問題を選挙の争点から外そうとしていると、朝日新聞の「2013参院選注目区から」では書いている。「福島 原発語らぬ自・民」の見出しで、「自民 高市発言ショック、封印徹底」「民主 電力労組支援 歯切れ悪く」のサブ見出しが目立つ。共産・社民両党は脱原発を訴えているという。なぜ、共産、社民が脱原発で協力し統一候補が立てられないのか、この福島で原発問題を大争点にして論議を徹底してつくせないのか、いろいろあるかもしれないが、残念でならないと思うのは筆者だけだろうか。両党とも国民主権を大切にするというのだから、国民の意思が議会に反映できるよう、大道について欲しかった。「わが党が伸びれば・・・」だけではない道が無いはずはないだろう。筆者の切実な思いである。
7月8日には新しい原発規制基準が施行され、さっそく各電力会社が原発再稼働を目指し「安全審査」を申請している。規制委員会が審査をし、基準に適合のお墨付きを与えれば地元自治体の同意を得て再稼働に入るということだ。これまでより厳しい基準で、審査には時間がかかるとはいうが、安倍自民党政権は原発再稼働を「安全な原発は積極的に稼働」と全面支援どころか推進の原動力になろうという構えである。原子力規制委員会が「独立性を担保された」国の機関であるというが、福島原発事故の原因が精確に明らかにされてもおらず、福島原発事故の被災者が苦しみに喘いでおり、さらに使用済核燃料の処理の方法も確立されていない中で、新基準が本当に「安全確保」を保障できるのか、否であると言わなければならない。如何なる事態があっても安全な原発など、あり得ないからこそ、原発エネルギーからの離脱、脱原発が求められている。新基準も「安全神話」新版なのだ。かぎられた条件を置いた上での、神の手のように絶対に人為的ミスや、機器製造上の不備や、操作の過ちが未来にわたって無い、かぎられた条件以外の事が絶対に起らない原発の稼働など、ありえようが無いではないか。
あるのは、「エネルギー需要」に応え、「経済力の強化」「利益の確保」のための原発維持、再稼働という、まことに非人間的な政治・経済の論理であり、アベノミクスに代表される「富国強兵」平成版ではないのか。なんとしても原子力は手放さないという妄執ともいうべき権力者たちの行為を、なぜ許し、認めなければならないのだろう。原発がなければ地域経済が、地方財政が・・・などということの蒙昧さは、既に証明済みではないだろうか。
原発があったから、地域が崩壊し、人々の暮らしが破壊され、先行きの困難がどのようなものになるかさえ見通せない。繰り返してはいけないのではなかったか。原発再稼働につながる「安全神話」の改訂版など信じてはいけないのではなかったか。
原発なしでも電力をまかなえる社会を、というのは夢物語ではないと思う。最近、ドイツの脱原発の取り組みに対して、困難にぶつかっている、無理が多いなどとする情報が増えている。順調に進み、脱原発が実現しては困る勢力があるのだ。だが、原発があって、本当にいいのか。この選挙の中でも、そして選挙が終っても考えなければならない。原子力社会からの離脱を、なんとしても果たさなければ、この国の未来は闇だ。
原発は差別の体系によってのみ存在することは、脱原発を求める多くの原子力に関る学者らによって指摘されている。ウラン鉱石の採掘現場で先住民がその地を追われ、あるいは被曝を強いられてきている。原発立地がどのようにして狙われてきたか、そして原発作業員の下請け構造、労働者差別、ついには事故による放射能汚染で被曝地域の住民に対する差別的な扱いが公的にも私的にも生まれ、「風評被害」による結果的な差別被害も少なくない。原発は人間に苦悩と悲しみ、そして時に憎悪の感情を生む。かつて、原爆被爆者に対してどのような公的差別や、人々のあいだでの哀しい差別があったか、核による惨禍は絶対に繰り返してはならない。
三原さんの『ふるさとは赤』の作品を読もう。
◇十日市◇
▼原宿の竹下通りの賑わいになるわが町の新町通り
浪江町の伝統行事の１つなる「十日市」を皆たのしみとして
手伝いに帰省するのが習わしになりて夫も店番をする
子ども御輿のワッショイワッショイやけくそな掛け声さえも受け継がれてる
プラモデル山積みに売るわが店に目をきらきらと入りくる子ら
この土地の伝統はもう町民のひとりひとりに委ねられたり
「毎日が十日市」のような心地して下北沢の商店街をゆく
◇青空短歌教室―下北沢大学・二〇一二春◇
▼下北沢駅北口を出たらすぐ右肩あがりの坂道はあり
坂道の途中にテントとパイプ椅子 ここに始まる短歌教室
「ツィッターで見ました」という人が来て今日から短歌の入り口に立つ
十五度の傾斜に座って伝えたい言葉を想う背中はやさしい
次々にテントに訪ねてくる人ら言葉を求めて頭を抱える
一枚の壁を隔てて再開発の工事をする人／歌作る人
歌作るたねあかしをする講師らの心は広く開け放たれる
伝えたい想いを言葉にするうちに心ほぐれて歌を発する
テントから生まれる短歌 人々が集いて言葉を温めてゆく
短冊に一首を書いて持ち帰る人の面持ち明るくありぬ
まちづくり下北沢にいま学ぶ いつか浪江の再建のため
◇呼吸を忘れる◇
▼疲弊するわれを赦せぬわれのいて手を挙げてしまうただまっすぐに
存在を求められるままに出て行けば忘れられている福島を
やり直しできない世界を覚悟して警戒区域はいつも真夜中
苦しいと思えば呼吸を思い出す／苦しいと思えば浪江を思い出す
ふるさとの祭りは仮設住宅の敷地の中で（閉じて）開かる
行ったこともない街で開く祭りにて司会をしている 夢ではないのだ
侵略のごとく祭りにやってくるかつて栄誉を受けた人らが
「福島に何度も（俺が）来てるって言ってよ」支援者からのお願い
体育館の床にわれらを座らせて甲高い声で歌う「ふるさと」
床に座るわれらに握手を求めくる 選挙活動の一環ですか
石巻南三陸気仙沼 ひとつ覚えに人々は言う
偽りの言葉ならべる（つながろう、絆、がんばろう、元気です）
◇地団駄を踏む◇ ��
▼見えぬなら無いこととして過ごしたい気持ちになりぬ若葉仰いで
失ったときから声はくぐもりて誰が聞くのか届かぬ声を
声高に叫ばれ続けて消えてゆく復旧／復興／絆の言葉
福島をＦＵＫＵＳＨＩＭＡと表記する人ら福島にいてはりきっている
子が水を欲すれば水を蛇口から与えて親のはぐらかす日々
ワンクリックして甥っ子にペットボトルの水を届ける日常として
留まるという決断を責めた日を悔いても本当のことは見えない
「ご両親はどちらへ？」と問われて「米沢です」と答えるわれの声にも飽きぬ
東京の電気を作っていることの誇りを持てと説かれしわれら
「コンセントを差したら電気が出てくると思っていた」と打ち明けられる
ふくしまからでんきがきてるのしらなくて とうきょうはいつもいっぽうつうこう
東北のために節電していると言う人に驚く二回目の夏
訪れし仮設住宅に住む人を「仮設の人」と言ってしまえり
深呼吸を抑えてダムを眺めいる底方にあったかつての暮らし
ドライブの勢いのままに感情は向き合うべしとわれを走らす
線量計を持たずに国道六号線を北上すれば広野に入る
パチンコ屋が事務所に変わり1Ｆ（いちえふ）の廃炉見届けるまでの存在
次回も三原由起子さんの作品を読む。 （つづく）
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