インドネシアの警察当局は過去16年間で最大の森林火災による公害(大気汚染)をひきおこしたとしてマレーシアのプランテーション会社クアラルンプール・ケポン(Kuala Lumpur Kepong)の子会社を告訴する方針を決めたと新聞発表された。クアラルンプール・ケポンは容疑を否認し、焼畑は行っていないと抗弁しているとされる。また、インドネシア当局は他にも複数の企業に責任を問う方針だという。記事はニューヨークタイムズの7月13日〜14日付。
日刊ベリタの6月27日付の和田等記者の記事でこの煙害のすさまじさとこれが周辺国との国際問題に発展している経緯が記されている。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201306271103124 環境保護団体グリーンピースやさまざまな地元の環境団体によれば、この森林火災がひきおこされる原因は多様な植生が繁栄し、豊かな動物をはぐくむ熱帯雨林をアブラヤシだけのプランテーションに変えることにあるとされている。つまり、森林に火をつけて、焼き尽くしてしまって、その後にアブラヤシを植えるというのである。そして今回のような手におえない大規模な森林火災に発展してしまったとされる。
「アブラヤシは果実から得られる油脂を目的として栽培が行われている。単位面積当たり得られる油脂の量は植物中屈指[1]である。今日産業的に大規模栽培されたアブラヤシから収穫された果実は、石鹸や食用植物油の生産に使われている。果実のうちの果肉からはパーム油が、また、中心部の種子からはパーム核油が得られる。パーム油とパーム核油の品質は異なっており、パーム油は調理用、パーム核油は加工食品用としての用途が多い。また、アブラヤシの油はバイオディーゼル燃料としての利用も考えられている。」(ウィキペディア)
普通の焼畑農業の場合は一定の期間を置いて、土地が肥沃になった頃に再び農民がその地に戻って農業を行うために大きな環境問題には発展しないが、プランテーションの’焼畑’の場合は森林をつぶすこと自体が目的であるため、地域の自然体系を大きく変えることにつながっている。多様な生物の環境をわずか1種類の植物のプランテーションに変えてしまうからだ。それは当然ながら地元の先住民族の暮らしにも影響を与えている。
ニューヨークタイムズによると、インドネシアから煙害で告訴される見込みの企業はクアラルンプール・ケポン(告訴されるのは現地法人とされる)。
同社のウェブサイトによると、1906年創業の老舗のマレーシア企業だ。もともとマレーシアでゴムとコーヒーのプランテーションを行う企業だった。その面積も当初は640ヘクタールだった。ところが、その後、1994年にインドネシアにも展開。ブリトゥン島、スマトラ島、カリマンタン中部と東部などにプランテーションを拡大し、今ではマレーシア国内での彼らの植林面積とほぼ同面積にまで拡大している。そしてマレーシアとインドネシアを合わせると合計25万ヘクタールのプランテーションを行う大企業に発展した。インドネシアのプランテーションはクアラルンプール・ケポンの稼ぎかしらになっているという。クアラルンプール・ケポンが森林火災をひきおこしたかどうかは別にして、同社の発展がインドネシアの熱帯雨林の縮小につながったことは事実だろう。
mongabay.comのRhett A. Butler記者によると、インドネシア・スマトラ島の熱帯雨林は1990年から20年間で750万ヘクタールを失った。つまり、同島の熱帯雨林の36%が失われたことになるという。プランテーションがその最大の原因だ。製紙用パルプとアブラヤシが主だったものだという。
スマトラ島というと、一見、単なる島に過ぎないと思えるだろうが、面積は日本全土より広い。日本がおよそ37万7千平方キロに対して、スマトラ島はおよそ47万3千平方キロ。その熱帯雨林の36%が20年で消えたのだから、相当の勢いである。
http://news.mongabay.com/2013/0626-haze-eoy-analysis-google-earth.html
■WWFのレポート 「スマトラ島の森林の減少」
http://www.wwf.or.jp/activities/2009/09/699714.html
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