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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2013年10月29日09時30分掲載
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アラン・マバンクゥ著 「黒人のすすり泣き」('Le sanglot de l'homme noir' par Aain Mabanckou )
フランスで「プレス」と書かれた看板のある店には新聞・雑誌が専門に置かれている。しかし、近くのプレスには小さな文庫本のコーナーがある。50冊もないだろう。その中にアラン・マバンクゥ(Aain Mabanckou,1966-)という名の著者の作品が3冊置かれていた。筆者はまったくもって知らない作家だ。しかし、プレスの女主人が「いい作家だ」というので読みやすそうなエッセイ集を試しに一冊買ってみた。
タイトルは「黒人のすすり泣き」(Le sanglot de l'homme noir)。アラン・マバンクウという名前の、コンゴ生まれの黒人小説家の体験と思索を綴ったエッセイ集である。マバンクゥ氏はパリ大学(ナンテール校)に留学し、学んだのは法律だった。その後小説を書いて認められた。ルノードー賞という文学賞も得ている。そして、後にアメリカに渡り、現在はカリフォルニア大学ロサンゼルス校で、フランコフォン文学(フランス語圏の文学)を教えているという。
マバンクゥ氏の著作のタイトル、「黒人のすすり泣き」はパスカル・ブリュックナーという作家による「白人のすすり泣き」という本のもじりだと記されている。マバンクゥ氏はこのエッセイ集で、白人たちが抱いてきた<罪の意識>とは別に、黒人自ら、来た径・行く末を描きつつ、自己批評を行っている。その眼差しは単純化を避け、クールであり、客観的でもある。
「僕らは国家独立の太陽の時代の子じゃない。僕らはルワンダの虐殺の後の子なんだ」
1960年の独立時代から50年が過ぎた。だから、今存在するすべての悪を白人ひとりに帰することはできない、と言っているのである。マバンクゥ氏は白人の罪と同様に、黒人自身も被告席に座るしかない、とこのエッセイ集を締めている。
パリには黒人が多数生活している。また黒人と白人とのあいだに生まれたメスチソ(混血の人)たちも数多く生きている。しかし、フランス映画で黒人が主役になることは少ない。だから、彼らの意識や生活はあまり知られていないのではないだろうか。
マバンクゥ氏はアフリカ、パリ(欧州)、アメリカという3つの大陸を横断して生きてきた。これらの地域は奴隷貿易に関係した地域である。奴隷貿易、人種差別、植民地主義、独立運動と国家の独立、アメリカの公民権運動、ネグリチュード運動、フランコフォン文学運動・・・マバンクウ氏は蟻のように地上を歩きながら、世紀をまたぐ黒人の生を思索している。本書をまだ読了していない段階なのだが、筆者がマバンクゥ氏の本書が面白いと思った理由は締めの言葉にあったのではない。これまで黒人の作家と言えば1つの地域に深くコミットしている印象があった。だから、マバンクゥ氏のように大陸を越境しながら、「黒人」という共通の人生を語るあり方が新鮮に思われたのだ。
ところで、僕はパリである若いメスチソ(フランス語ではmetis,メチス)の女性に話を聞く機会があった。彼女は自分はフランスもアメリカも好きではない。アメリカは力づくで世界を動かそうとするし、テキサスに自分が行けばレイシストに狙われるかもしれない。自分が好きなのはキューバである、と言う。僕はパリで毎日数多くの黒人やメスチソと出会うが、彼らの心の中身を知る機会はあまりない。
マバンクゥ氏とは別に、町の書店で数冊並んでいたのが黒人作家ダニー・ラフェリエール(Dany Laferriere、1953-)の小説である。マバンクウ氏の「黒人のすすり泣き」の表紙が目をかっと開き、帽子に手をあてる男の写真で、非常にまじめな印象であるのに対して、黒人作家ラフェリエール氏の本はもっと洒脱に見える。ある本のタイトルは「僕は日本人の作家なのだ」(Je suis un ecrivain japonais)。表紙にはワニが浴槽に入っている写真が使われている。ラフェリエール氏には「ニグロと疲れないでセックスする方法」というタイトルの小説もあり、こちらも新しい作家が登場している印象である。ラフェリエール氏はハイチに生まれ、カナダに移住した作家である。
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作家のアラン・マバンクゥ氏「青・白・赤(Bleu-Blanc-Rouge)」、「ヤマアラシの思い出(Memoires de porc-epic)」、最新作には「唐辛子(Petit Piment)」など
俳優セルジュ・レジアニの写真を前に





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