日本で発行されている英字新聞ジャパンタイムズは社説「監視されない政府」で特定秘密保護法案の危険性について報じているが、その中のテロリズムに関するくだりではこう書かれている。
'The article’s definition of terrorism includes the following phrase: activities that force political and other principles or opinions on the state and other people ― a definition far more encompassing than the widely accepted definition of terrorism at present. The bill thus carries the danger of allowing the state to intervene in the sphere of citizens’ thought and conscience.'
特定秘密保護法案のテロリズムの定義には次のようなものが含まれる。「政治的意見やその他の原則あるいは意見を国や他の人々に’強要’する行為」これは現在のテロリズムの定義から大幅に範囲を広げるものである。この法案は国家が市民の思想・良心の領域に干渉することを許容する危険性を持っている。
石破幹事長が大きな声で意見表明によって政府を’説得’しようとする反対デモの人々を指してテロと同一視したことから、将来、国や他の団体などに対する政治的運動・市民的・その他の運動を行う人々は、運動を実際に起こす前の段階で監視・捜査・逮捕の対象とされうる。さらに、国からこうした監視・捜査・逮捕についての情報を得た人々が他の人にその情報を漏らせば特定秘密漏洩として逮捕されることになる。
ジャパンタイムズはこのように、テロリズムの範囲が常識を逸脱して思想・良心の自由を拘束する思想犯の領域まで踏み込む内容になっており、また反対デモを行う人々はデモを実際に行う前の段階から監視・捜査・逮捕の対象になりうることを告げている。特定秘密保護法においては未遂でも処罰されるのである。
つまり、ツイッターなどでデモの告知をしたり、それを広めたりすること自体も〜実際にデモをする以前であっても〜監視・捜査・逮捕の対象になりえるとジャパンタイムズは警告をしているのである。それと言うのも法案の条文や石破幹事長のブログから(撤回・削除されたが、本音であると考えられる)、反対デモがテロと解釈される可能性が現実にあるからだ。
そして政府は来年の通常国会で共謀罪を可決させる見通しである。これもまた与党である自民・公明が現在多数派を握っているのであるから、数で可決させる可能性が大きい。もし共謀罪が可決されれば多くの人がデモの前段階でテロリズムの共謀ということで拘束されてしまうかもしれない。 そればかりかもし野党議員がテロリズムの共謀容疑で全員逮捕されてしまえば3年後の衆議院選挙で野党の候補者がいなくなってしまう。これはナチスが全権委任法を成立させた時の手口なのである。あの時、1933年、国会議事堂の放火事件が起こり(というより自ら起こし)、ヒトラーは大統領令を出して野党候補者を一網打尽で逮捕した結果、野党議員が国会にいなくなってナチス議員が圧倒的多数を占めた事情がある。
このように特定秘密保護法案は日本国憲法の保証する国民の権利を奪うものであって違憲なのである。したがって違憲立法という形で特定秘密保護法案自体を廃案にする必要があるだろう。だが、違憲立法訴訟を起こすには、具体的な権利侵害を伴う事件が要求される。ただ法律が違憲だと言うだけでは違憲立法訴訟を起こすことができない。だから逆説的になるが、国民が特定秘密保護法案を恐れて、言論活動を自粛してしまえば違憲立法訴訟を起こすこともできない、ということになる。
■ジャパンタイムズの12月7日付社説「監視されない政府」
http://www.japantimes.co.jp/opinion/2013/12/06/editorials/government-without-oversight/#.Uqk61fRdWSo
■山口定著「ファシズム」2 〜全権授与法(全権委任法)と国家総動員法〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201312031412342
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