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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2014年01月23日10時53分掲載
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文化
【核を詠う】(139)『角川短歌年鑑平成26年版』の「自選作品集」から原子力詠を読む(1)「この国に人の住めざる地は増えむ 遠く松木村、今、原発に」 山崎芳彦
角川学芸出版編集による「角川短歌年鑑平成26年版」(平成25年12月、株式会社KADОKAWA発行)は、2013年の短歌界をさまざまな視点から総括する評論、座談会、作品の収載、さらに短歌界に関わる各種資料などを編んで、貴重な年鑑である。毎年、このような企画が続けられていることは、短歌文学についての歴史的な資料的価値とともに、短歌界、歌人が当面している課題や問題点を一年を区切りにして提起するという大切な役割を果たしているというべきだろう。この連載では前回まで短歌研究社の「短歌研究2014年版短歌年鑑」を読んだが、それにつづいて角川の「短歌年鑑」から、この連載、「核を詠う」短歌作品の収集と記録、という立場から読ませていただくことになる。「核を詠う」短歌作品ということで読んでいるのだが、筆者の読み、受け止めによってのものであるので、作者の作歌意図にそぐわない場合もあると思う。筆者が責めを負うしかないがご寛容をお願いする。
同年鑑には、歌壇展望として、篠弘「震災詠が喚起するもの」、佐佐木幸綱「歌の主題」、伊藤一彦「他者への想像力―ゆるきやらのわれわれ―」の各評論が、また特別論考として、小高賢「批評の不在」、三枝昂之「与謝野寛をめぐるもの思い」、島田修三「聖域のほとり」、大松達知「仏像に魂は入っているか」のそれぞれの論考が掲載されている。 さらに、特別座談会として「今年の週歌集十冊」(馬場あき子、高野公彦、永田和宏、水原紫苑)、「秀歌とは何か」(岡井隆、米川千嘉子、永井祐)がある。
作品については「作品点描」(歌人11氏が、平成24年後期から25年にかけての、総合短歌各誌、結社誌などから、それぞれ作品・作者をとりあげて、「点描」的に論評していて、論評をする歌人11氏の視点、取り上げられた作品、作者が面白かった。 筆者)、「年代別 平成25年度 自選作品集675名」月刊歌誌「短歌」が毎月発表している「公募短歌館」の特別作品集・年間ベスト20、などがあり、この年鑑に収録された作品の数は膨大なものである。すべてに当たって「核を詠う」作品を整理するのは、困難である。
今回は、「年代別 平成25年度 自選作品集675名」(作者の自選5首)から、原発、原爆など原子力に関わって詠われた(と筆者が読んだ)作品を抄出し、読み、記録させていただくことにした。
なお、評論・論考には、原子力詠に関わっての言及、問題提起がなされている内容に注目させられた。この連載の中で、私見も含めて触れさせていただくつもりであるが、今回は先ず作品を読んでいきたい。
本稿を書きながら、筆者には、原発問題にとってきわめて重大な意味を持つ東京都知事選挙をめぐる動向が気になってならない。原子力エネルギー・原子力発電を引きつづき「基幹的エネルギー源」として、原発の再稼働、新増設、海外輸出を進めようとする現政権と与党自民党が押す候補者に対して、脱原発・原発ゼロを実現する政策を掲げる候補者が二人、一本化できず選挙戦に臨むということになる可能性が強まっていることについて、筆者は、この都知事選挙の最大争点が「原発ゼロ」か、「原発容認推進」にある、それが都民にとどまらず全国民的な意識であると思うから、「原発ゼロ」を基本政策に掲げる候補者が統一できないまま、選挙戦に突入する事があってはならないと痛切に考える。 脱原発、原発ゼロをめざして全国的な運動を進めてきた勢力が、この選挙で二つに分かれて、あいたたかうなどということがあってはならないだろう。現状では、一本化するとすれば、道はおのづから決まっていると考えなければならない。
前茨城県東海村長・村上達也氏は、朝日新聞1月22日朝刊の「声」欄に投稿して、「脱原発票が割れる事態は避けられないのか。脱原発を望む多くの国民の期待に背くことにならないか。」と述べ、「国民は『元首相連合』の立候補表明に、これで脱原発の流れが確定すると歓迎したのではないか。『脱原発をめざす首長会議』世話人の私もその一人である。今最も大事な政治課題は現行憲法が保障する平和主義、基本的人権の尊重、国民主権の三つを守れるか否かである。原発問題は、このいずれにも密接に関わっている。脱原発を唱えて政権をただす意味は大きい。・・・脱原発陣営に大いなる前進のための英断を希望する。」としている。筆者の思いも同じである。ここで決断できるのは、「元首相連合」ではないだろう。
今後に残される課題はあるだろうが、それを解決し脱原発を実現し、現政府のさまざまな危険な政治を押し返して行く力の源泉としての主権者の、人々の運動の高まりを確信して、それを支え推進する役割に徹することの重要さを考えることが、いま必要であろう。脱原発・原発ゼロを掲げる候補者が、なんとしても勝利しなければならない選挙だと思う。沖縄の名護市長選挙、福島の南相馬市長選挙につづいて東京都知事選挙で現政権の押し出している候補者を打ち破ることの意義を考えよう。
『角川短歌年鑑』の、「自選作品集675名」から、原子力に関わる作品を読んでいきたい。
◇自選作品(一)から◇(作者の生年ー以下同じ- 大正元〜大正9年)
▼被災者を棄民にすなと声上げし女性政治家搦め取られぬ 棄民とふ語聞きしはじめは『蒼氓』なりきそして満州移民、残留孤児 (北沢郁子)
▼放映に添ひ黙祷す 広島をふた月前に離(さか)りしこの身 (深井芳治)
◇自選作品(二)から◇(昭和元〜昭和9年)
▼核の雨に濡れそぼちたる生き物の迷走の涯ての波の花はや 朽ち惜しや 玉城徹の芸と技いまこそ観たし みちのく短歌 (秋元千恵子)
▼夫語ることなきも除染続きゐる古里よ彼(か)の幼き日耀ふ (穴澤芳江)
▼この国に人の住めざる地は増えむ 遠く松木村、今、原発に (井上美地)
▼ひまわりのTシャツを着て鍔広帽 脱原発の集いのために 夏帽子の女性よりビラを手渡さる「NО NUKES!」赤と黒文字 「たまらなくなってきました」呼びかけ人の寂聴さん私もおんなじ炎天 の下 会場にて友いくたりと出会いたりかつての職場の変らぬ仲間 一人一人がこぶしを空に向けるとき十七万人の意志となる風 (大畑悳子)
▼陽に灼かれ雨に打たれて汚染土は捨て所無ければ市役所に置く (勝井かな子)
▼憲法も被災者の生活もなほざりに明けても選挙暮れても選挙 (来嶋靖生)
▼原発の汚染水漏れまたも起く震災ありて二年余経るに (北原由夫)
▼いくたびもソーラーパネル勧めくる電話のありて梅雨は深まる (篠 弘)
▼復興にさまざまな障害ありといういく度思う政治とは何か (島本正靖)
▼白鳥はかなしからずや逝く春のセシウムの湖(うみ)にパンの耳食む 不機嫌に湖(うみ)は水皺(みしわ)を寄せておりホットスポットに降る冬 の雨 (須々木誠一)
▼「想定を超える災害」どう備へるか只筆硯の今世の老人 (永平利夫)
▼放射能の村の並木のさくら花見る人のなく咲きて散りゆく (日野きく)
▼「福島原発」何でもなかった顔をして異国へ原発売り込む総理 (平山良明)
▼しらじらしく無を告げられてセシュウムもプルトニュウムも見えてくる なり (福島美恵子)
▼原爆の投下に米ソの「読み」ありし真相いよよ夾竹桃燃ゆ (増井定子)
▼ヒロシマもフクシマも止めなかつた神の十戒なんぞ守らぬ (松川洋子)
▼放射能検出されずの野菜一覧 ピンクの市報今日また届く (山口恵子)
◇自選作品(三)から◇(昭和10年〜昭和19年)
▼原発事故・不況・政治不信すべてを吹き飛ばせ三社の賑わい (梓 志乃)
▼又水溢れかかかる言葉もこの時に切実ならず報道のさま 事起こる前に語るべき意見かとわが呟きて今日の昼となる ありて知る過ぎて知ること又と言ふ言葉の先にあるものは何 (大河原惇行)
▼二千年楠の幹の崩(く)いゐるに昭和・平成のセシウムを負ふ 視得ぬもの見ようとしない人ら増え破れし国の山河知らざり (川井盛次)
▼ハンタイの声の切れ間に渡さるる柚子の香のたつのど飴ひとつ 除染とは水で無理やり線量を他の地点に付け換えること (小高 賢)
▼原発の稼働許さじいっせいに紅く燃えたつウルシの山は (菅原恵子)
▼セシウムに犯さるる水どのあたり山下水の微かの音する (砂田暁子)
▼二千年のちの世、遺跡発見と原発燃料棒を掘り出す 破壊力秘めたるままに地下ふかく永遠に眠れと埋めたりしが 隙あらば噴く力もて地の底に神さぶ魂あやふく眠る 無害には三十万年朝風の稲穂に祈る天長地久 (関場 瞳)
▼じわじわと汚染する土を水を風を知らずに咲くよ造花しらゆり (高尾文子)
▼放射能埋めし公園に桜咲ききのふもけふも花見してをり 「十万人原発反対集会に行かうか」と主婦言へりゆふべ葱刻みつつ (前川 博)
▼被災地の復興予算流用せり生業(なりわい)の目処たたぬといふに 福島の風評被害とどまらず野菜の価格低迷つづく 小雨ふり視野おぼろなる丘の上 正悪乱れしままなる世にて (山本 司)
次回も「自選作品」から原子力詠を読む (つづく)
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