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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2014年03月01日22時04分掲載
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核・原子力
政府・原子力規制委が原発再稼動の条件とする「世界一厳しい規制基準」の嘘―原子力市民委員会が厳しく指摘 山崎芳彦
原発再稼働推進、新増設もすすめることを方針とするエネルギー基本計画が3月に閣議決定される。原発再稼働を目指して、新規制基準の適合審査申請が各電力会社から目白押し(玄海3・4号、川内1・2号、伊方3号、大飯3・4号、高浜3・4号,止まり1・2・3号、柏崎刈羽6・7号、島根1・2号、女川1号 2014年1月末現在)で、この夏にも稼働を目指しているという異常、異様さである。
3・11福島原発事故が収束どころか、いまも進行中であり、また原発事故の被災に生活の再建、地域の再生、健康に対する影響の判断も見通しがつかない深刻きわまりない現状を無視して、政府・予党・財・官を中心に「原子力ムラ」はより強固に稼働している。さらに「世界一の規制基準による安全の認定」という「安全神話」が語られている。
現在開会中の国会における審議の中では、首相から担当大臣、予党の質問議員に至るまで「世界一厳しい規制基準」の宣伝発言が飛び交っており、この基準による審査で認められれば原発再稼働は当然であると言い続けている。福島第一原発の放射能汚染水漏出のための対策が、あってはならない現場作業員の健康・生命を脅かすような被曝労働によっても有効性がなく、放射能汚染物質、使用済み核燃料などの処理処分方法もまったく見通しが立たず、原発立地地域および周辺地域の人々の3年間の苦難はさらに、よりさまざまな深刻な事態を抱えたまま長期化されていこうとしている。そのような現状、今後の見通しの中で、原発の維持・再稼働・新増設への道を担保するためのエネルギー基本計画など認めることはできない暴挙としか言いようがない。にもかかわらず、安倍政権は原発存続路線を、当然のごとく進んでいる。
その原発再稼働推進勢力が、錦の御旗にしている「世界一の安全規制基準」に対して、2014年3月までに「脱原子力政策大綱」の作成を目指して取り組んでいる原子力市民委員会(舩橋晴俊座長 法政大学社会学部教授)は、去る2月15日に開いた第8回原子力市民委員会に提出した「原子力規制部会」(井野博満部会長)の資料のうち、「新規制基準は世界一厳しい基準か?」(滝谷紘一部会コーディネイタ 元原子力技術者・元原子力安全委員会事務局技術参与)を発表し、「世界一厳しい基準」の欺瞞を明らかにした。
原子力市民委員会のホームページから、「第八回原子力市民委員会」の議事内容のうち、「新規制基準は世界一厳しい基準か?」(滝谷紘一)の内容を見る。(概要であり、その文責は筆者にある。) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◇新規制基準は世界一厳しい基準か? 滝谷紘一◇
〔主旨〕 (1)1992年に原子力安全委員会が「過酷事故対策は事業者の自主的整備に任せ、規制の対象外とする」と決定したことが福島原発事故で炉心溶融、格納容器破損という深刻な事態を防ぎ得なかった根本的原因の一つだった。
(2)福島事故の教訓と反省をもとに策定された新規制基準において初めて過酷事故が規制の対象になり、その新規制基準について、「世界一厳しい基準ができた」と田中俊一原子力規制委員長は公言しているが、それが事実かどうか検証した。
(3)福島原発事故が生じる以前の段階から安全性を高めた原発として設置が承認された欧州加圧水型炉(EPR)の安全対策に照らし合わせると、溶融炉心を貯留・冷却するコアキャッチャーの設置、航空機衝突に対しても頑健な原子炉格納容器などいくつかの重要な設備が新規制基準にには入っておらず、新規制基準が「世界一厳しい基準」でないことは明らかだ。
(4)留意すべきこととして、EPR水準の安全対策を備えたとしても、その有効性の実証は十分になされておらず、過酷事故による放射線災害のリスクがあることに変わりはない。
(5)規制委員長が「世界一厳しい基準」と自ら公言すること自体、原子力施設の規制及び運営に携わるすべての組織・個人に求められている安全文化の醸成・堅持に反している。
〔説明〕 1. 福島事故が起きるまで過酷事故を規制対象外にしていた大きな過ち(概要 筆者による) (1)1979年のスリーマイル島原発の炉心損傷事故後、当時の原子力安全委員会は事故調査委員会による調査・検討をもとに52項目に及ぶ教訓を摘出し、基準、設備、運転などの改善を図ったが、大規模な安全設備の変更や追加を求めることはなかった。
(2)1986年のチェルノブイリ原発の史上最悪の炉心溶融・爆発事故が起きたことを踏まえ、1987年に原子力委員会は過酷事故対策のあり方の検討に着手、通産省が大型プロジェクト「原子炉格納容器信頼性実証事業」を立ち上げ、15年間にわたって実施した。1992年に原子力安全委員会は「シビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて」を決定した。
(3)しかしこの規制文書では、「わが国の原子炉施設の安全性は、現行の安全規制の下に、十分確保され、過酷事故は現実に起こるとは考えられないほど発生の可能性は十分小さくなっている」として、過酷事故対策の整備は「事業者の自主的整備に任せる」こととし、規制の対象外とした。
(4)その背景には、過酷事故対策を国の規制対象とすると、様々な追加設備が必要となって費用がかかること、過酷事故の可能性を認めることは地域住民からの原発批判が高まること等を懸念した政治、行政、産業、大学等にわたる原子力利用推進関係者の総意があった。
(5)事業者の自主的整備に任された対策はきわめて不十分なままに放置され、2011年の東日本大震災の際に福島原発で過酷事故が生じた根本原因の一つになった。
2. 過酷事故を規制対象に入れた新規制基準は世界一厳しくはない!(概要 筆者による)
(1)福島事故の発生後、原子力安全委員会は原子力規制委員会に改組されるとともに、過酷事故を規制対象とする新規制基準が策定され2013年7月に施行された。過酷事故対策としては代替電源設備、代替注水設備、フィルターつき格納容器ベント設備、水素燃焼装置などの設置が要求された。
(2)この新規制基準に関して「世界一厳しい基準ができた」と田中規制委員長は公言し、その理由として「シビアアクシデント対策とか重大事故対策、あるいは起こったときのマネジメントについては、世界一と言っていいぐらい厳しい基準、要求になっている」、「地震、津波などヨーロッパではほとんど考えなくていい厳しい自然現象に対する要求をしている」ことを挙げている。
(3)自然、津波など自然現象に関しては、地震国である日本と、他国と比較するべきものではない。過酷事故対策に焦点をあてて、欧州加圧水型原子炉(EPR)との比較を行うと、フランスとドイツの規制機関の勧告に従いながら、福島事故が起こる前から安全性の向上を図ってきた新型の加圧水型原子炉の標準概念設計と、日本の新規制基準には、安全上重要な系統設備の多重性(EPRは独立4系統、日本は独立2系統)、コアキャッチャー(原子炉圧力容器外に流出した溶融炉心を格納容器内に貯留する設備)の設置(日本は要求なし)、格納容器熱除去設備(コアキャッチャーを水で循環冷却する機能と原子炉を水棺にできる機能を併せ持ち、溶融炉心を長期冷却する設備)の設置(日本は要求なし)、頑健な原子炉格納容器(航空機衝突に耐え、設計圧力を高めた二重構造の格納容器)の設置(日本は要求なし)と、差異があり新規制基準はEPRの安全水準に達していないことは明らかで、「世界一厳しい規制基準」ではない。
(4)その上で留意すべきことは、EPR水準の安全対策を備えたとしても、その有効性の実証は十分になされておらず、過酷事故による放射線災害のリスクがあることに変わりはない。
3. 規制委員長自ら安全文化を軽視 田中規制委員長が「新規制基準は世界一厳しい基準である」と公言すること自体に安全文化に関わる大きな問題点が含まれている。国際原子力機構IAEAは、チェルノブイリ事故をきっかけに、安全最優先の価値観が全体として共有され、その価値観に基づいて日々の業務が実行される安全文化の醸成、堅持を世界中の原子力関連の組織と個人に求めている。わが国ではJCO臨界事故(1999年)、東電の自主点検記録の不正問題(2002年)など事故や不祥事があるたびに、その組織的背景として安全文化の不足、劣化が指摘されてきた。福島事故についても国会事故調は、規制当局と事業者の双方が安全第一に徹し、必要な備えに怠りなきを期していれば「防ぎ得た」災害であると述べ、事故の背景要因として規制当局が構造的に安全文化と相いれない組織であったことも厳しく指摘している。規制委員長が「新規制基準は世界一厳しい基準だ」と公言することは、「根拠のない自己満足」に当たると言わざるを得ない。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以上、原子力市民委員会が公表した第8回委員会の資料から、滝谷紘一氏の「新規制基準は世界一厳しいか?」を要約(文責は筆者)したが、この内容からも、安倍政権をはじめとする「原発族」が原発の維持、再稼働、さらに新増設、核燃料サイクルまでを推進して行く態勢の基礎に「世界一厳しい規制基準によって安全と認められた原発は動かして行く」という新安全神話をおくことの欺瞞と危険性は明らかであろう。
原子力市民委員会は2013年10月に「原発ゼロ社会への道‐新しい公論形成のための中間報告」を発表してから、8回にわたる検討会議を「脱原子力政策大綱」を取りまとめるために開催するとともに、東京、広島、新潟、福岡、愛媛、大阪、静岡、福島、愛知、北海道、福井など各地で意見交換会を幅広い人々の参加を得て開催してきている。その中で提起された意見や要望を反映させながら原子力政策改革の具体的な方向性について、包括的な全体像を指し示すことを目指すとしている。
脱原発社会を構想する政策・プログラムが、国民的合意形成を目指して策定されることの意義は大きいと思う。期待するとともに、原発再稼働を許さず、脱原発・原発ゼロ社会を目指す運動を、いまこそねばりづよく、大きく高め前進させなければならないと考える。
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