欧州で芸術と言えばフランス。あるいはイタリア。それが常識だが、ドイツも侮りがたいパワーを持っていた!今欧州の書店で売り出し中の絵本がロバート・ルイス・スティーブンソン作「海賊と薬剤師」(Der Pirat und der Apotheker)。表紙を見ればおわかりの通り、わくわくするイラストがつけられている。この本、パリで信頼できる個性的な書店複数で同時に売出し中だった。ドイツ語は不明だが、イラストにスタイルがあり、力があると思った。
イラストレーターのへニング・ワーゲンブレット(Henning Wagenbreth)氏とはどんな人物なのだろうか。独自のスタイルを持っているし、色彩感覚も独特だ。ドイツのジャーナリスト、マティアス・シュナイダー氏によると、ヴォルフラム・フロムレット作『月と夜明けの星(Mond und Morgenstern)』(1999)の挿絵、T・コラゲッサン・ボイルの短編『極地探検家(Der Polarforscher)』(1995)など、本の装丁やイラストあるいはポスターをたくさん作ってきたそうだ。そしてベルリン芸術大学で教鞭もとっているという。
http://www.goethe.de/kue/lit/prj/com/cck/hew/jaindex.htm 直接ドイツにいるワーゲンブレット氏に問い合わせてみると、今月、オランダで行われるアニメーション映画祭の審査委員になっているそうだ。その映画祭のポスターもワーゲンブレット氏の手になる。「海賊と薬剤師」のイラストもそうだが、黄色が色鮮やかだ。
マティアス・シュナイダー氏によると、ワーゲンブレット氏は米国のアンダーグラウンドの漫画に影響を受けたそうだが、日本の版画からもインスピレーションを受けたそうだ。以下は、ワーゲンブレット氏のメールから。
「私は日本の木版画(浮世絵)の大ファンです。私自身いくつも木版画を所有していますよ。買ったのはミュンヘンやポーランドや西ドイツでした。木版画は日本で買うより欧州で買った方が安いって本当ですか?
私が日本の木版画に魅了されるのはその平面性です。いかに奥行きのある立体の世界が二次元の世界に翻訳されるのか。そこが興味深いのです。でも、日本の木版画に注目した欧州人は私より前にたくさんいますよ。ゴッホがおじを描いた絵画でもおじの背後に日本の木版画が飾られています へニング」
(以下は英語の原文) I am a big fan of japanese woodcuts. i own quite some. i bought them in munich and poland and west germany. i was told they are more expensive in japan than in europe. Is that true?
i like how flat they are. how perspective was translated into 2 dimensions.
But i know i am not the first one who discovered that. there is a famous van Gogh painting of his uncle. on the wall in the background are pinned japanese woodcuts on the wall.
henning
独特の暖かさを持つワーゲンブレット氏の芸術は子供だけでなく大人にとっても楽しめるものだ。
以下はユーチューブにUPされている興味深い映像。場所はベルギーの画廊。ワーゲンブレット氏が同じくドイツ人のイラストレーター、ソフィア・マルチネック氏と共同で個展を開いているのだが、そこで楽器演奏も披露している。素晴らしい演奏だ。
http://www.youtube.com/watch?v=7VfAHMgtNII
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