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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2014年05月03日23時06分掲載
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文化
【核を詠う】(152) 山本司歌集『揺れいる地軸』から原子力詠を読む(2) 「原発の作業員死せり原因は不明と発表 未だに変わらず」 山崎芳彦
前回に引き続いて山本司歌集『揺れいる地軸』から原子力にかかわる作品を読み続けるのだが、歌集に収録された山本さんの作品は、東日本大震災の大地震・津波による被害の深刻さや、あるいは政治、経済、社会の動向、さらには世界的視野での動き、その他多方面にわたり、その作品群をもって編むことによって「揺れいる地軸」を掘り下げ捉えようとする意図があるのが特徴だと思えば、原子力詠に限定しての作品抄出は、作者の意に合わないだろうことを考えながら、あえてこの連載の意図によって読ませていただくことをお許し願いたい。
筆者はさる4月20日に福島県・三春での「三春花見まつり〜滝桜の下で四たびの集いを!」(三春町芹沢農産加工グループ、滝桜花見まつり実行委員会、福島「農と食」再生ネットの主催による)に参加した。三回目の参加であるが、桜を見ることはもとよりだが、地元三春町の農業者、東京をはじめ各地からの参加者との交流が喜びで、今回はこれまでにない満開の滝桜を堪能した後の交流集会で多くのことを学ばされ、感じさせられた。 筆者は今回の集会に参加するにあたっての問題意識として、いま原発推進勢力が進めている「放射線安全神話」の流布、定着化のための許しがたい策動を、放射線禍の中で三春の農業、農産加工、消費者への供給に、原発の電力を拒否して、支援と共同、連帯の力で自ら太陽光発電による農産加工場を稼働し、食品加工を行っている「芹沢農産加工グループ」の人々や、各地から参加した人々がどのように受け止めているかを知りたいということがあった。
放射線被ばくについて、「土を測り、耕し、作物を作り、その作物を測り、加工して測り、直売所に出す前に測る・・・一つ一つの作物や加工品の放射線測定値を少しでも低くするための栽培、加工に日々取り組み、研究を重ねている」三春の芹沢農産加工グループにとって、あるいはこの地の農業者にとって、政府が、原発村の住人である科学者・医学者や原子力推進関係機関が組織的に広めている「放射能安全神話」は、“風評被害”をなくし、福島の農業を復興する力になると受け止めることができるものだろうか。
交流会の中では、原発事故、放射能の排出、放射線被ばくによって惨憺たる苦しみ、生活全般にわたる不安と実害、精神的な苦痛の日々について、そして本当に身を削るような努力によってたどり着いた現在について語られたが、とりわけ放射線の問題にかかわっての深刻な被害、作れない、出荷停止、食べられない、家族構成によっては別居生活をせざるを得ない、将来への不安・・・怒りと淋しさと悲しみの日々の中で、しかし生き抜いていくための日々の営み、思いを聞かせていただきながら、改めて、この国は、原発を国策として推進し、欺瞞の美言を連ねた「原発安全神話」を練りあげた原子力村の構成者たちは、どれほど人々を苦しめ、塗炭の苦悩のふちに追い込んだのか、について思わないではいられなかった。 原発事故がもたらした放射線禍のもとで、自分たちが置かれている環境についてしっかり調べ、受け止め、そこで人として生きるための知恵と力、生活の実践的な見直しや工夫、農業生産と放射能についての自分たちが生きている地の条件を踏まえての様々な粘り強い取り組みによって放射線量を引き下げ、安全安心の食品を供給するために、地域で共同し、村や農協と協力し、消費者と結び、各団体と交流しながら、いまを生きている福島の人々にとって「原発安全神話」も「放射線安全神話」も受け入れることはできないに違いない。
人間の生きる根底を突き崩すほどの事態を招いた福島原発事故はいまもなお続いて、混乱から抜け出せないでいる、いったい何が起きたのか、いまどうなっているのか、これからどうなっていくのか、全く明らかでない中で、「加害者」たちは、原発再稼働を急ぎ、原発を国際商品として輸出しようとし、福島の原発立地地域を人の暮らせない、当面の放射性廃棄物のゴミタメにしようとしている。
そしていま、「放射線安全神話」、原発事故から生じる低線量放射能は人の生命や健康に大きな被害を及ぼすことはない、つまり人類は原発と共存できるのだ、とする宣伝、教育を計画的に、原発村構成者のあらゆる力を動員してすすめている。政府関係機関が連名で作成した「放射線リスクに関する基礎的情報」冊子、福島の避難指示区域の見直しを行っての、避難者の早期帰還を推進するための「放射線リスクコミュニケーションに関する施策パッケージ」の公表、そして一方で原発再稼働のための安全審査基準を「世界一厳しい水準」とする不当表示の下での再稼働推進。
こともあろうに、東京電力が小中学生対象の福島原発事故や廃炉対策の現状について伝える副読本を経済産業省と連携して作ろうとしているといわれる。また、九州のある県では放射線の安全を主張している学者が中心になって学校向け副読本を作ったとも伝えられている。様々な手段・方法・媒体で「放射線安全神話」が拡げられようとしている。 原発事故が起き、放射能が排出拡散され、放射線被ばくがある、福島原発事故について考えるとき、放射線レベルの問題についての視点からだけ物事を考えるのは間違いであろうとも思う。 人々が営んでいる生活、人間としての丸ごとの存在と関係を一変させ破壊するほどの災害を受けての不安や怒りや不満、あるいは絶望、耐え難いほどの悲しみ、その現実を見ないで、「100ミリシーベルト以下の被ばくなら安全です。」などと宣告し、あるいは「ヨーロッパでは自然放射能の被ばくは生涯で300から600ミリシーベルトだが健全な生活を営んでいる。」などと解説することを中味とする「放射線安全神話」を広げ、子供たちに教え込むような非道を許してはならないだろう。
山本さんの短歌作品を読む前に、筆者の雑然とした思いを書きすぎてしまった。歌集『揺れいる地軸』の原子力詠を読もう。
◇越えねばならず―2011年6月◇ 原発の停止ゆえの節電をおどしのように関西電も
脱原発を村上春樹氏スピーチせり推進派への批判をこめて (6月9日、カタルーニャ国際賞授賞式にて)
今にして明らかなりぬあらかたの原発の下に活断層あり
東京の六・一一デモ参加二万人なれども報道少なし (6月11日、第3回「原発やめろデモ」が新宿で)
イタリアの国民投票なされたり圧勝したる反原発が
海水よりストロンチウム検出す限度の二百四十倍とは
パリ空港で静岡の緑茶廃棄さる基準値超ゆるセシウムゆえに
汚染せし瓦礫の処理はすすまざり最終処分の方法あらず
福島の三十万人に線量計配られしとう異変の日常
原発の安全神話うそばかりニセアカシアの花は清(すが)しも
安全とだまして儲けし詐欺行為 電力不足と次は脅しを
福島より「原発なくそう」と発信す全県集会の切なる声が (6月25日、福島市で千余名の参加)
「安心して空気吸いたい」「牛返せ」かかげしプラカードの命の叫び
節電の“でんき予報”日々載りぬ統制強うる電力会社が
以前より病名不明の死者おりき極秘にされし原発作業員
◇陰と陽が―2011年7月◇
電力使用制限令発動せり独占企業があやつる政府
新たに伊達市四地区に避難の勧奨なされし線量たかく
原発の推進マニュアル発覚す大事故好機と“原子力村は”
「原発ゼロめざす緊急行動」ぞ うずめつくせり全国の“怒”が (7月2日、明治公園にて2万人以上が参加)
原子炉の水素爆発防止とぞ窒素の注入作業はじむる
給食の放射能測定はじまりぬ見えざる恐怖が首都圏覆う
十二人の原爆症を認定せりいまだにつづく放射能被害 (7月5日、東京地裁にて)
九電の“やらせメール”追及なる玄海原発再稼働できず
被曝による癌のリスクのさだまらず実証しうる資料あらざり
発電の百パーセントを自然エネ アイスランドがすてになしおり
震度4の余震とともに津波あり少々なれど心の騒ぐ (7月10日午前9時57分頃、東北地方を中心に)
原発ゼロ・復興支持の署名やデモ 全国各地でつづくも報ぜず
双葉郡の原発被災者デモをせり日比谷公園より国会に向け
原発の報道内容監視せりエネルギー庁の適否の判断
炉心を冷やすタンクの故障せり大飯原発の一号機停止 (7月16日、調整の運転中に)
不測の事態起きたり原発の不安定ゆえの不安つのりぬ
福島の牛の出荷停止さる生業(なりわい)失せたるすべての農家が (7月19日、原子力災害対策本部指示)
米国が臨界前核実験を ノーベル平和賞も汚されており
ロシアより輸出中古車もどさるる放射線量高きがゆえに
福島の相馬野馬追(そうまのまおい)なされたり復興の思い込めたる甲冑 (7月23・24日、南相馬市にて千年の歴史を持つ行事が)
浜岡の原発廃炉の大集会 手に手に造花のひまわりかかげ (7月23日、静岡近県五千人参加)
汚染せし浄水場のどろ・残土 処分先あらず山積みのまま (14都県の汚染残土計約10万4千トン)
群馬の風評被害のきのこ農家 電気料滞納に送電停止が
テロによる原発攻撃の予測せし外務省極秘の電源喪失 (1984年に被害予測、放射能流失で1万8千人死亡など)
次回も山本司歌集『揺れいる地軸』から原子力詠を読み続ける。(つづく)
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