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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2014年06月28日11時12分掲載
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松本晃一著「アマゾンの秘密」 アマゾン日本進出の記録 〜出版・流通業界の退廃をついたアマゾン〜 日本の書店はアマゾンから学べる
フランスでインターネット通販「アマゾン」の本の無料配送を禁止する法案が可決された。ユーザーの視点からすると、「なんてことするんだ」と思うかもしれないが、パリに行ってみると、地域に密着している小さな書店主たちは口をそろえてアマゾンを非難する。その理由はアマゾンが無料配送や様々なサービスによって実質的な本の値引きをしていることだ。しかも、家賃を払わない巨大なオンラインビジネス企業と小さな書店が戦うのは相当厳しいことであり、実際にパリの書店はどんどん減っている。フランスで可決された法律はパリの小さな町の書店を文化の拠点であると位置づけ、書店を守るためのアクションなのである。
松本晃一著「アマゾンの秘密」はその業界の巨人、アマゾンが欧州進出を手掛けた後に満を持して日本進出にやってきた時の日本人スタッフの日々の試行錯誤をつづっていて興味深い。松本氏はアマゾン日本法人の社員ではなく、あくまでコンサルタントという外部の立場で関係していたため、アマゾンに対するある距離感があり、それも本書の信頼感を増していると思う。本書を読んで、アマゾンが伸びた理由は日本の出版業界・出版流通業界がアマゾン進出以前にすでに構造的な退廃に陥っていることを示していると思えた。松本氏はもともと書店が好きだった。町の小さなリアル書店のことだ。
「だがいつの頃か、街の小さな本屋さんの本棚はどこも似たりよったりの品揃えに変わっていた。そしてその結果、僕も次第に街角の小さな本屋さんには立ち寄ることが少なくなっていた。 本屋さんも商売だから、儲からなくては困る。しかも毎日200冊近い新刊本が出版される時代だという。どれがこの先売れる本なのか、街の本屋さんが独自の視点で目利きすることはますます難しくなっている。結局、世間的に話題となって売れている本だけが店頭を占拠していく。売れるかどうかわからない本は返本され、その結果、小さい店に個性的な本の品揃えは期待できなくなった。 このことは客にとっても不幸なことである。どの街角の書店にもその時点で話題になっている同じような本だけが置かれているため、自分が欲しいと思う本を書店に探しに行くのはとてつもなく難しい・・・・アマゾンに出会ったとき、これこそ本好きのための本の売り方だ、と思った」
僕はこれまでアマゾンというと、単純に「書店の敵」としか思えなかったのだが、これを読むと、アマゾンに対する見方も少し変わってきた。アマゾンが書店の脅威であることは変わらないが、日本に関する限り、アマゾンが進出する以前に日本の「書店」の多くがすでに役目を終えて、文化の拠点としての書店であることをやめていたのである。書店の経営が非常に難しい今日、厳しい言い方になってしまうが、客の率直な声は松本氏とまったく同じであると思う。
しかし、恐ろしいことはそうした金太郎飴的な品揃えでなく、個性的な品揃えに注力していた書店までも店をたたんでいることである。たとえばパリの書店もどんどん減っているのだが、パリでは日本のような金太郎飴的な本売り方はしていない。それでも店をたたんでいるのだ。もっともこれはフランスの不動産事情も関係しているのだが・・・。
この本で「なるほどな」と思わされことはアマゾンがインターネット書店の弱点を補強するために取り組んできたことだ。それは読者の読後の声をネット上にどんどん反映させることである。書店のように立ち読みがしづらいネットでの本の販売ではそうした客の声が立ち読みと同様の効果を発揮する。しかも、その声は等身大のユーザーが自腹で買って読んだリアルな感想であって、無料で本を受け取って書評を書いて収益を得ているであろう識者よりも信頼がおける、ということである。これも実際に世の読者のリアルな感想であるに違いない。これは新聞の文化欄が面白くないことと通底することである。優れて刺激的な書評に新聞で出会うことも勿論あるけれども、そうした経験は10年前、20年前、30年前に比べて少なくなってきたように思われるのだ。
さらに今の町の書店では一部の幹部を除くと、書店員の多くが本にさして詳しいわけではない。一方、アマゾンは関連書籍を次々に出して見せてくれる。本来町のリアル書店が強みだった接客においても逆転してしまっている。
本の流通も、本の批評も世の人々の思いとずれてきて「裸の王様」と化している。アマゾンはそこをついたのである。そう考えれば書店にとってアマゾンは手ごわい敵だが、そこには書店に対する、出版業界に対する批評があることがわかる。書店はそこから学ぶことができるのではないだろうか。だが、これは書店だけでなく、流通、出版、法律も含めた総合的な取り組みが必要だろう。
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