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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2014年11月18日22時59分掲載
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社会
風俗で働くということ(上)
2014年1月27日に放送されたNHKクローズアップ現代では、20代のシングルマザーの約80%が年収114万円未満の貧困状態に置かれている現状を指摘し、「託児所付きの風俗店がシングルマザーのセーフティーネットとなっているケース」を紹介して社会に衝撃を与えた。実際はどうなのか、シングルマザーで数年前まで風俗店で働いていた女性に、風俗で働き始めた動機や働いていた頃の店での様子をインタビューした。(能村哲郎)
今回インタビューするAさんは、シングルマザーで、数年前まで首都圏にあるピンサロ(フェラチオを提供する店)やファッションヘルス(個室でSex以外の性的サービスを提供する店)で働き、現在は医療事務の職に就いています。今回は、Aさんにピンサロで働き始めた動機や働いて事の話を伺います。
■シングルマザーとなった経緯は?
私は、大学に進学し一人暮らしを始めて直ぐに、フリーターをしていた彼と付き合いはじめました。中学時代から女子校で恋愛経験がなかったこともあり、恋愛に夢中となった私は、自然と深い関係となってしまいました。大学1年生の秋に妊娠2か月目で気づき、いろいろな人に相談しましたが、両親は激怒し「堕せ!」と言い、友人にも出産を反対されました。しかし、私は、絶対に堕胎をしたくありませんでした。私は、今までの関係を全て断ち切って彼と新しい生活を築こうと、知人の全くいない地域へ駆け落ちをしました。
駆け落ちをしましたが、彼は、私に性的な関係を求めるばかりで、職に就こうともしませんでした。彼は、私の実家が資産家なので、生活を援助してくれると思っていたようですが、駆け落ちしたので援助は頼めません。たちまち生活に困窮しました。つわりと慣れない生活に何度も嘔吐する私を、彼は気持ち悪がって暴力をふるい、駆け落ちをして4か月ほどで彼は蒸発をしてしまいました。
彼とは、入籍もしていませんでした。冷静になってみると、彼にとって私は性的なはけ口でしかなかったと気づきましたが、家族にも頼れる状況でもなく、自分の置かれている状況に背筋が凍りつきました。
■どうやって出産したの?
私が大学入学時に祖父からもらった100万円は、彼に隠していたんです。それでなんとか生活をやりくりし、出産をしました。
■妊娠5か月目から100万で出産。大丈夫だったの?
とりあえず携帯を解約して、母からもらったネックレスやPC、バッグなど、売れるモノは全部売って、後は電気もつけず、食費も徹底的に切り詰めました。
体内の子どもにも自分にも、危ないことだとは分かっていましたが、お金がなかったので産婦人科にも行けませんでした。妊娠9か月目に駆け落ちして初めて産婦人科に行ったんです。病院の先生に、なぜ早く来なかったのか怒られました。幸い検査をして胎児に異常はなかったのですが、出産費用の高さに驚かされました。私は父の健康保険の扶養家族のままだったので出産一時金を受給してなんとか出産はできました。元気そうな女の子で、産声をあげた瞬間は嬉しかったです。しかし、病院からは支払い能力が低いと早期の退院を促されました。
■風俗店に入ったきっかけは?
出産をした事で、祖父からもらった100万円も10万円を切り、底をつきかけました。オムツや粉ミルクも十分に買えず、家賃や光熱費も滞納し、私の食事もパンの耳とバナナだけという日が続きました。「自分も子どもも死んでしまうのではないか」という恐怖と不安で、自分が壊れてしまいそうでした。出産後1か月ぐらいの頃、風俗店の求人広告をみつけ、託児所もあるというので、即入店しました。風俗嬢になることに躊躇はありましたが、生きていくためには仕方がありませんでした。
■生活保護を使うとかは考えなかったの?
まさか、自分に生活保護を使えるなんて、思いもしなかったです。病院でも役所でも「親に助けてもらいなさい」と強く言われ、誰も生活保護が使えるなんて、教えてくれませんでした。私のような境遇の人でも生活保護が使えると知ったのは、医療事務の仕事をするようになってからです。
親に連絡すれば娘と引き離されるのではないかと怖かったし、彼には逃げられ、産婦人科でも役所でも怒られ、私には社会の全てが「自分の敵」に見えていました。自分で産んだ娘を、その敵からなんとしてでも守るんだと必死でした。
■風俗店で働いてどうでした?
就職した店は、ピンサロでした。働き始めたものの、知らない人の男性器を口に含むのは嫌でしかなく、客が帰ると吐いていました。お客さんから「可愛いね」などを声をかけられても気持ち悪かったですし、働くことで私の全てが汚されていくような感じがしました。それでも、店で働けば日中4〜6時間の勤務で1万6千円〜3万円弱(時給4000円+指名料、サービス料)の収入になり、それを退勤時にもらえます。恥ずかしい話ですが、私は、初出勤の退勤時に、1万6千円の入った封筒をもらったときに、号泣してしまいました。それで、おしめや食べ物が買える、もう少し働けば家賃や光熱費も払えると、心の奥底から嬉しさが込み上げてきたのです。風俗店が神様に見えました。
■お金のためとはいえ、辛そうですね
初月の収入は、9日の勤務で20万円程度になりました。資格もない私が、乳児を育てながらこれほどの額を稼ぐことは、他の仕事以外では無理です。しだいに私は、客を喜ばせるロボットを演じていると信じることで、職場に入ると同時に自分の心が麻痺するようになっていました。あの店が無かったら、私たち親子はどうなっていたのか分かりません。あのお店には、感謝しています。
■Aさんのような境遇の人は多かったですか?
シングルマザーは、だいたい2割ぐらい。資格取得や進学、何かを購入するなど、目的意識があって働いている人が6割ぐらい(学生や本業が他にある人がほとんどです)。後の2割ぐらいが、プロとして風俗嬢をしている人でした。若い女性が在籍していることを売りにした店だったので、シングルマザーの比率は低い方だと思います。
■子育ては大丈夫でしたか?
勤務の日(月10日前後)だけ、店で契約している託児所に7時間、娘を預かってもらうようにしました(月3万円ほどかかりました)。託児所の保母さんや他のお子さんのお母さん方から、いろいろな情報を得ることもでき、子育てにとても役立ちました。娘が託児所にいる以外の時間は、娘との時間を大切にし、娘と公園で遊んだり、お絵かきをたくさんしました。「シングルマザーの娘だから…」と言われたくなかったので、しつけも厳しめにしました。
娘への影響を考え、風俗店のモノは絶対に家に持って帰らないようにしました。保湿クリームを塗る以外、マニキュアも髪染めもせず、ほぼノーメークで生活しました。
■そのお店は、長く続けたんですか?
2年ほど続け、収入も増えました。しかし、家賃や娘との生活費を払うと、十分な額を貯蓄することはできませんでした。自分の身体や娘の成長を考えると、風俗嬢を長くは続けられません。辞める日までに、娘のために出来るだけお金を貯めておきたいと考えるようになっていました。
ちょうどその頃、寮付きのファッションヘルス(個室でSex以外の性的なサービスを提供する店)ができたんです。悩んだ末、私は、寮付きのファッションヘルスで働くことにしました。
(インタービューは(2)につづく)
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