アラビア語のニュースサイトに「ワタン」というものがあることを本紙の寄稿者「アラブの眼」の記事で知った。ワタンとはどこの国の新聞なのか、記事のリンクをたどると米国で作られているネット媒体で英語バージョンもある。その中でヨルダン王女がらみの短い記事をグーグル翻訳で見るとヨルダン王女がFacebookでクルド人が「イスラム国」の捕虜を焼き殺したと書きこんだと告げているらしい記事がある。グーグル翻訳なので正確かどうかは不明だが、そのような記事が確かに出ているのである。
しかし、クルド軍がイスラム国の捕虜を焼殺したという情報はアラビア語ではない西欧語の新聞のネット媒体では未だに見ていない。アラビア語でのみ露出した情報なのだろうか。しかも、個人の書き込みノートに過ぎないfacebookに20歳前の若い女性が書きこんだものをもって「公表」としてよいのだろうか。それは公表なのか。
この記事ではクルド軍がイスラム国の捕虜を報復で焼殺したことが真実かどうかは触れられていない。王女がそういう書き込みをしたことを新聞の伝聞情報で伝えているのである。そこには前提となる焼殺の信憑性に対する判断は留保されている。詳しいことは触れないが、何となく匂わせる。すると、そんな印象がいつしか読者に定着する。
もし、そのFacebookが偽王女でなく、ホンモノの王女のFacebookだったと仮定すれば、その情報はヨルダン王女がどのように事態を見ているかに関する何がしかの空気を伝えるものだ。しかし、彼女が書きこんだ内容であるクルド軍によるイスラム国捕虜の焼殺情報の真偽はどうでもいいというものでもないだろう。少なくとも、王女がそれを「発表」とか「公表」した、と表現されればその情報自体が信憑性を帯びてくるからだ。そのことはイスラム国と戦っているクルド人の名誉にも関わってくる大きな問題である。クルド人は長い間、民族を分断され、貧苦と差別の中で生きてきた人びとである。イスラム国が女性を奴隷にしているため、クルド兵には女性の志願兵も多い。そうした人々全体の名誉に関わることである。
「アラブの眼」はパリにおけるCharlie Hebdoの襲撃に関しても、フランス警察の動きが怪しいとする記事を紹介して、イスラエルによる陰謀説を紹介してそれが大きな反響を呼んでいる、と報じていた。「アラブの眼」によればアラビア語圏ではそうした情報が反響を呼んでいるようなのである。しかし、それを裏付ける中身のある記事はその後、1つも本紙に出ていない。
イスラエルの陰謀も、クルド軍による報復焼殺も、もしそれが本当なら国際的な大スクープになるはずである。アラブの見方を伝えてくれている寄稿者らしいだけに、それらの続報が楽しみである。
■ワタン アメリカのアラブ情報媒体
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