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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2015年02月22日13時28分掲載
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コラム
ユグノー戦争の記憶 Charlie Hebdo 襲撃事件とフランス
1月7日に発生したCharlie Hebdo襲撃事件に対するわが国の新聞などの論壇を見ていると、フランスの歴史と風刺と宗教に関する説明ではせいぜい1789年のフランス革命まで遡って言及されたくらいだったのが意外だった。
思うにフランス人がこの問題を見る時に重ねているのはもっと古い時代ではないか。つまり、フランス革命より2世紀古いユグノー戦争(1562年 - 1598年)に対する国民的記憶ではないかと思えるのだ。「ユグノー」とはキリスト教の新教、つまりプロテスタント派を指す言葉である。そこにはカトリック側から見た侮蔑のニュアンスが含まれているとされる。
私的な記憶になるが、デンマークのコペンハーゲンを訪ねたことがある。そこで北欧の著名なデザイナーの家族の一員である女性が名刺をくださったのだが、名前を見るとデンマーク人なのに実にフランス的な名前なのである。聞くと、16世紀のユグノー戦争時代に戦乱と弾圧を避けて北欧に移民してきたのが彼女の先祖だと言うのだ。フランス国内の新教と旧教の血で血を洗う残虐な戦乱はおよそ40年続いた。
その様子を追体験したければ近年癌で亡くなった著名な演出家、パトリス・シェローが監督した「王妃マルゴ」を見るのがよいと思う。ユグノー戦争時代の中でもひときわ血なまぐさいサン・バルテルミーの虐殺が描かれている。刃を首につきつけられて「カトリックに改宗するか、それとも死ぬか」と迫られ、改宗を拒否すると首を切られて殺される。実際にそんなシーンがこの映画にあるのだ。
フランスのユグノー戦争は最終的に新教徒だったアンリ4世が王になる時、カトリックをなだめるためにカトリックに改宗すると同時に「ナントの勅令」を出して、プロテスタントにも信仰の自由を一定程度与えるという妥協を成立させた。その英知によって、アンリ4世はフランス歴代王の中で今でも人気NO1の王とされる。シェローの映画「王妃マルゴ」でアンリ4世を演じたのが当時、人気抜群のジャン=ユーグ・アングラードだったことからもその人気を理解できよう。
同じキリスト教徒同士で凄惨な殺し合いを続けるユグノー戦争の記憶はどこかでイスラム教のシーア派とスンニ派の確執に重なって見えるのではないかと思う。フランスはユグノー戦争を経た後、2世紀を経て、さらにフランス革命を行い、政教分離を原則とする国となる。しかし、フランス人が第一の原則とする「政教分離」の原則の原点はユグノー戦争に遡るのだ。
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