カンボジアの首都プノンペンで開発のために立ち退きを迫られた住民が抗議行動を繰り広げているが、その行動の先頭に立っている女性たちが次々当局により逮捕されている。国際人権NGO、アムネスティはこれらの女性たちを直ちに釈放するよう、キャンペーンを展開している。(ベリタ編集部)
以下は、アムネスティによる呼びかけ――
プノンペンにあるボン・コック湖周辺では、開発事業のため、住民たちが強制的に立ち退かされました。しかし政府が用意した立ち退き先は、十分な設備がなく不衛生で、劣悪な暮らしを強いられています。女性たちが先頭に立って改善を求めていますが、当局は嫌がらせ的な逮捕を繰り返し、抗議行動を終息させようとしています。平和的な抗議行動で逮捕された10人の女性活動家を今すぐ釈放するよう、要請してください。
■代替地の改善を求めて逮捕された女性たち
ボン・コック湖周辺では、2008年8月以来、約3,500世帯が強制的に立ち退きを迫られました。
強制立ち退きにあった家族たちは、代わりの土地を政府から提供されました。しかし、移転先はインフラが整っていない土地で、毎年雨季に洪水が発生し、家屋が浸水してしまいます。この洪水の問題を解決するよう、女性活動家たちは当局に要請していました。
女性たちの最高齢は78歳、多くは30代、40代です。家族のため、地域の子どもたちのために、居住権を守るよう平和的なデモを行い、各国大使館へ働きかけるなどして、カンボジア政府に改善を訴えています。
しかし、当局は2014年11月、平和的なデモを行っていた10人を交通法違反として逮捕しました。警官が彼女たちに暴行を働いたという報告もあります。彼女たちは、半年から最長2年半の刑と3万円から5万円の罰金刑の宣告を受け、現在プノンペン郊外の刑務所に収監されています。
■最高齢のニエット・クンさん(78歳)の場合
抗議行動をしている住民のなかで最高齢のクンさんは、2005年から湖の近くに住み、2007年から活動に加わりました。10人の家族と一緒に暮らす家が浸水した問題について、当局に何度も要請を行っていました。それまでは話し合いをしていたのにもかかわらず、突然、警官から殴られ、警察署に連行、逮捕されてしまいました。
■ヘン・ピックさんの場合(29歳)
ピックさんは、夫と4人の子どもといっしょに、1994年からボン・コック湖近くに住んでいました。ピックさんの逮捕によって、夫はそれまで勤めていた警備会社での仕事を減らして子どもの面倒を見なければならず、収入が激減しました。
【背景情報】 カンボジアでは、1970年代のポルポト政権下で住民が強制的に地方へ移転させられました。その後、土地の国有化や所有権についての混乱が未解決のまま、復興のために首都プノンペンへ移り住む人びとが急増しました。
開発事業が進むなか、プノンペンにおける貧困層への強制立ち退きが2000年代から激増し、2007年以来、ボン・コック湖周辺では何千人もが家を追われ、強制的に立ち退きを迫られてきました。
移住させられる場所はインフラも整っていないような所で、土地の価格に見合った十分な補償金も受け取れません。住民たちが立ち退きを拒否すると、嫌がらせや、脅迫を受けました。
この間、女性活動家たちは、強制立ち退きに反対し、抗議行動を行ってきました。2012年5月、13人の女性活動家が、平和的な抗議に参加しただけで逮捕され、最長2年半の刑を下されました。彼女たちは控訴して執行猶予になったため、6月に釈放されました。
住民たちは、絶えず監視下に置かれ、嫌がらせや脅迫を受け、訴えられたりしています。
◆アクションに参加しよう! ボン・コック湖の10人の女性活動家を今すぐ釈放するよう、カンボジア首相・司法大臣に要請してください!
https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/cambodia_201503.html
アクション期間 2015年3月6日〜5月中旬 要請先 フン・セン首相、アン・ヴォンワッタナ司法大臣
写真:過去の写真などを掲示して抗議するニエット・クンさん
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