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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2015年07月05日22時39分掲載
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印刷用
文化
夏目漱石著 「吾輩ハ猫デアル」の復刻に挑戦 2
Q この本の技術上の特色は? A 明治期に西洋式造本を取り入れた際、書物の工芸的性格を払拭してこれを導入。その後、日本独自の装飾的装丁が施されて今日までの和式洋本装丁文化を創り上げてきたわけです。その善し悪しは別として、これは天麩羅、トンカツを始め、欧州ではお目にかかれない洋品小間物等と同列上にある現象で、「書物」とてこれらと同列であることを再認識したいという気持ちはありますね。それがどうした、と言われても困りますが…。
Q 旧字体を使って本を作った? A PC上の旧字体が意外に豊富に揃っていることを発見したからです。
Q 表紙は凸版印刷? A 九ポ堂によります
Q 中のページは通常の印刷工場でプリントを外注した? A 仮綴じの工程も専門職に委ねました。
Q 綴じるのは手作業・・・・
A 本来は「仮綴じ(フラン ス綴じ)」のままで提供すべきところですが、これだとすぐに壊れてしまいます。在パリ6年余の製本師に「日本で仮綴じ本で刊行したら誰も買ってくれませんよ」とクギを刺されました。そこで買ったままでもある程度の繙読に耐えるため、背を寒冷紗で補強しました。これに仮表紙を添付するのが老2代目の役割ですが、目下、少部数なので何とかこなしているけど注文が多くなると老人仕事ではとても手に負えないでしょうね。
仮綴じ、凸版印刷による表紙もさることながら、オフセットカラーによる挿画もかつてなく良くできたと自負しています。これらは、服部・大蔵書店版のかなりな痛本を安価に入手出来たのでここから複製しました。ところで、この元図版は本によって仕上がりのムラが激しく、どの状態が原板として相応しいのか掴めないので、二代目がかなり恣意的に再表現しました。中には、その再表現への手がかりも得られなかった図版もあります。
Q 実は印刷技術のイメージがつかみにくい点があります。つまり、金属の文字を1字1字拾っていくイメージがありますが、酒井さんが「猫」でやられたのもそういうイメージですか?それとも??
A ははは、初代九ポ堂は確かに鉛活字を1字1字を拾っていましたが、2代目の場合はOCRで汲み上げて組版し、オフセット印刷で作りました。活字を手で拾っていたりしたら、『猫』の場合は素人では10年掛けても完成しなかったでしょう。印刷と本文の綴じは、業界一流の工場に助けていただきましたが、表紙の凸版印刷は九ポ堂3代目の手刷。背固めと表紙の添付は老2代目夫婦の手作業によっています。
Q OCRとは?
A OCR( optical character recognition)は古い活字印刷面読み取りソフト。現在、PCワープロにおける旧漢字の充実振りは驚くべきものです。ここで用いたソフトはいまやとっくに発売終了しているEGワードと言う代物。惜しむらくは、私が用いたヒラギノ明朝体というフォントには「又」の字のフウリンが付いていないことです。
Q 今回、猫を読んでいると、やはり旧漢字の世界に入っていることを感じさせられます。その奥には漢文とか、そういう江戸時代までの教養があるのだろうと思います。
A 確かに漢文は江戸の教養に属するんでしょうが、このことをあまり事大主義的に解釈するのはマズいでしょうね。今の人ならさしずめロックやマンガをベースに会話が成立するのと同質の雰囲気が感じられますね。
Q なるほど、漱石だからと言って腫れ物扱いしないことが「猫」の読書の肝である、と。時々、「猫」的でなくなる、というか猫の存在感が薄くなるところがありますね。
A 正にその点を読み取ることが重要だと思います。岩波の四六判漱石全集における『猫』の校訂姿勢は、現在の国文学的には正当な方法の一つでしょうが、読者目線で作品に接する場合には必ずしも作品的統一感を味わうのが難しいですね。その点、旧字・旧かな +適度なルビ(この版独特の読みが散見できる)による「寸珍版」は完成度が高いと思っています。
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復刻された漱石の「吾輩ハ猫デアル」。明治44年の「寸珍版」を復刻
挿画 烏たちに笑われる猫
旧漢字にルビ
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