7月10日に行われた安保法制特別委員会の集中質疑のダイジェストをお送りします。今回初めて、維新の対案と維新・民主共同提出の領域警備法案も同時進行で審議されました。今回もまた、政府答弁がコロコロ変わり、あいまいさも次々と露呈しました。これで「審議が尽くされた」などとは到底言えません。
10日夕方に野党5党は党首会談を行い、強行採決に反対することで一致しました。週明け13日(月)には中央公聴会と一般質疑が行われます。一部メディアは、政府与党が維新に配慮して15日の委員会採決を一日延ばすことを検討し始めたと報じましたが、全く予断を許しません。週末の議員への働きかけも極めて重要になっています。
【関連情報】 野党5党首 安保法案の強引な採決認めず(7月10日、NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150710/k10010146611000.html
特集ワイド:続報真相 安倍さん、強行採決が「民主主義の王道」? (7月10日、毎日夕刊)
http://mainichi.jp/shimen/news/20150710dde012010004000c.html
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【7月13日(月)「安保法制」中央公聴会(衆議院第一委員会室)】
<公述人の意見陳述> 9:00〜9:15 岡本行夫(自民推薦、岡本アソシエイツ代表) 9:15〜9:30 小沢隆一(共産推薦、東京慈恵会医科大学教授) 9:30〜9:45 木村草太(維新推薦、首都大学東京法学系准教授) 9:45〜10:00 村田晃嗣(公明推薦、同志社大学法学部教授) 10:00〜10:15 山口二郎(民主推薦、法政大学法学部教授)
<公述人に対する質疑> 10:15〜10:35 今津寛(自民) 10:35〜10:55 寺田学(民主) 10:55〜11:15 柿沢未途(維新) 11:15〜11:35 岡本三成(公明) 11:35〜11:55 赤嶺政賢(共産)
※中継 http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
★NHKに重要な中央公聴会を中継するよう働きかけましょう! <要望先> (TEL)0570−066−066 (メールフォーム) https://cgi2.nhk.or.jp/css/mailform/mail_form.cgi (FAX)03−5453−4000
【一般質疑(4時間)】
13:00〜13:30 岩屋毅(自民) 13:30〜13:59 伊佐進一(公明) 13:59〜14:38 横路孝弘(民主) 14:38〜15:17 緒方林太郎(民主) 15:17〜15:56 後藤祐一(民主) 15:56〜16:26 水戸将史(維新) 16:26〜17:00 宮本徹(共産)
※中継 http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
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【7月10日(金)「安保法制」特別委員会質疑ダイジェスト】
※総括的集中質疑(7時間):首相出席、NHK中継あり
衆議院TVアーカイブ
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=45120&media_type
冒頭、岸田外相がホルムズ海峡での機雷掃海をめぐる自らの答弁について、「他国の掃海をもって第二要件(注:他に手段がない)を満たされるということはない」としたが、「満たさなくなるということはない」と答弁すべきだった、として「先の答弁を訂正しお詫び申しあげます」と表明。
◆小野寺五典(自民) 「維新案は国際法から見てどうか?」 秋山外務省国際法局長「自国への武力攻撃が発生していないにも関わらず武力行使を行うものであり、個別的自衛権では正当化できない。集団的自衛権または国連決議に基づく集団安全保障措置により正当化されるべきもの」
◆小野寺五典 「維新案は国際的には先制攻撃となり問題になる。独善的な国と見られる。また、「外国からの要請」が書かれていない。これは戦前からの反省に基づかぬものだ」
◆岡田克也(民主) 「重要影響事態法と国際平和支援法とで国会承認などに違いがあるのはなぜか?」 安倍「重要影響事態は我が国に対するもの。まず重要影響事態法の適用を検討し、その適用のない場合にのみ、国際平和支援法の適用を検討する。同時に適用することはない。重要影響事態では緊急を要する場合がある」 岡田「国会の事前承認は公明党が入れさせたもの。重要影響事態法と国際平和支援法の垣根は低い。総理の「世界の平和と安定なくして我が国の平和と安定なし」という論法を使って、国会の事前承認が難しいときに重要影響事態法を適用しようとするのではないか?」
◆岡田克也 「重要影響事態法の「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」について、中谷大臣は「あくまでも例示で定義そのものに全く影響を与えないということか?」との質問に「ご指摘の通り」と答弁された。絞り込まれておらず、公明の努力は成功していない」 安倍「事態というのは相手のあること。これだけと言えないのは共通認識」 ◆岡田克也 「邦人輸送する米艦への攻撃についての存立危機事態は、時系列的にどこまでいけば認定されるのか?」 安倍「米艦が攻撃される明白な危機という段階で認定が可能」 岡田「米艦が襲われる前でもいいのか?」 安倍「まずは米国への武力攻撃が発生しており、さらに我が国への攻撃が切迫している。米艦に対しては明白な危険の段階で認定できる」 ※6月26日には「米艦にミサイルが発射された段階において判断することもあり得る」と答弁していた。
◆岡田克也 「存立危機事態における「武力攻撃の着手」とは日本へのものか、米国へのものか?」 安倍「米国への武力攻撃が発生し、さらに我が国への攻撃が切迫していると認識し得る場合だ」 岡田「「明白な危険」は存立危機事態における防衛出動の要件だが、それが即、武力行使の要件にもなるのか? 総理の説明はごちゃごちゃで意味不明だ」
◆岡田克也 「イラク特措法での航空自衛隊の輸送活動の具体的実績は?」 中谷「C130H輸送機で計821回、46479名、貨物672.5トン、その内米兵は23727名」 岡田「以前情報開示を求めたが真っ黒だった。一方で米国からのものは詳細だった。あれから10年、今出せない理由はない。情報公開を」
◆細野豪志(民主) 「「1万3千人の新自衛官を確保するには、2015年は新成人の50人に1人だが、少子化により2030年には40人に1人、2040年には30人に1人、2060年には25人に1人が入らないと確保できない」 中谷「ここ数年、倍率は7倍で続いている。募集環境は厳しくなる中でも優秀な若者が入っている」 細野「非常に楽観的な見通しだ。今後、奨学金のような制度を拡充して、ゆくゆくはアメリカのように実力部隊に入った後、学校に行けますよというようなことが現実にあり得る。経済的アドバンテージを与えて自衛隊に入ってもらうのは憲法18条違反か?」 横畠法制局長官「公務員制度全体の中で整合するなら可能だ。強制でないので憲法違反ではない」 細野「私は懸念を持つ。志願していなくても経済的理由で自衛隊に入ることをどう考えるのか。ですから、自衛隊の役割を絞り込むべきだ。自衛隊の確保は基本的には志願によるべきだと思う」
◆細野豪志 「ISILへの後方支援について中谷大臣は「法的にあり得る」と答弁された。イラク戦争時の安保理決議678は、この国際平和支援法の国連決議に当たるのか?」 岸田「該当し得る。ただし、決議があるだけでなく、国際社会の一員として主体的に寄与すべきかなどの要件を満たすかどうかを判断する」
◆大串博志(民主) 「審議が尽くされていない論点がたくさんある。また、要求した政府見解も出されていないものが非常に多い。8割の国民に理解されていない中、来週の採決などあり得ない」 安倍「議論され、時がくれば委員会で決めること」 大串「かつて民主党政権は国民との対話集会を重ねた。こうした努力も行うべきだ」
◆長島昭久(民主) 「7月6日産経新聞の桜井よし子さんのコラムに衝撃受けた。「中国が東シナ海のガス田開発を拡大している確かな情報がある。1年で6ヶ所から12ヶ所に増えた」と。これは事実か?」 岸田「新たなプラットホームの建設を含む開発を確認している。強く抗議し中止を求めている」 長島「南シナ海に目を奪われている隙にガス田開発が拡大された。こんな悠長な対応でいいのか。レーダーでも据えられたら情報が筒抜けだ」 中谷「中国がプラットホームの軍事利用を進めると、自衛隊の活動が従来よりも把握される恐れがある」
◆辻元清美(民主) 「昨日、院内集会で元最高裁判事からも「憲法違反ではないか」との発言があった。テレビで別の元判事で外務事務次官をされた方の「慎重に」との意見も見た。どう考えるか?」 菅「憲法については砂川事件判決、政府見解、現憲法の範囲内で新3要件を作り提出した」
◆辻元清美 「百田さんとの対談本で総理は「(イラクのサマワでの活動について)ここは戦闘地域になったのでお先に失礼します、オランダ軍の皆さん、頑張ってください」と言って帰国することになる。これは非常識だ」と話されている。それについて百田さんは「全く通用しません」と。総理は「そんな国と一緒にやろうと思わない」とも」 安倍「それは今回のような後方支援活動ではない」
◆辻元清美 「ここに『イラク復興支援行動史』という陸上幕僚監部の内部文書があり、ジャーナリストの布施祐仁さんが情報公開で入手された。私も防衛省から入手した。ここには黒塗り部分が多い。中谷大臣と同期の番匠幸一郎さんが中心に作られた。この文書は公開すべきではないか?」 中谷「今後の参考のためにまとめたもの。不開示部分の公表も検討を始めており速やかに結論を得たい」 辻元「イラクの問題をしっかり検証すべき。審議中に公表するよう協議を
◆辻元清美「陸自内部文書を読むと、死亡時の処遇や精神疾患を患う方の処遇など出てくる。宿営地への砲撃、敵対勢力の存在、車両への爆弾事案などリアルに書かれている。番匠幸一郎さんの前書きに「イラク人道復興支援活動は純然たる軍事作戦だった」「我々がいかに幸運に恵まれたか」とある。今度は弾薬まで運ぶ兵站を行う。今度の後方支援は純然たる軍事作戦では?」 中谷「番匠さんは「ライオンである陸自がロバのような仕事をする」と書いている。自衛隊は日頃から訓練を受けリスク管理できる存在だ」
◆穀田恵二(共産) 「イラク派兵では14回23発のロケット弾、迫撃弾による攻撃を受け、バグダッド上空では携帯ミサイルに狙われている赤ランプが点灯し、頻繁に回避行動をとった。非戦闘地域でも危険だった。どう検証したのか?」 安倍「経験を踏まえて、柔軟性を持ち整理していくべきだ」
◆穀田恵二 「ここに陸自幕僚監部が作った『イラク復興支援行動史』という黒塗りでない文書がある。番匠幸一郎氏の前書きはどう書かれているか?」 中谷「「人道復興支援活動は純然たる軍事作戦だった。本体部隊と陸幕等の総力あげた軍事作戦。軍事組織としての真価問われた任務だった」と書かれている」
◆穀田恵二 「「至近距離射撃を重視した訓練、制圧射撃訓練をした」とある。制圧射撃とは?」 中谷「連射で一定時間、複数又は単数目標に射撃を行う事」 穀田「防衛省規格には敵に損害を与えて戦闘力を妨害、火力で圧倒し文字通り敵を制圧する射撃、とある」 中谷「要件を満たせば制圧射撃も可能だ」 穀田「制圧射撃のような武器使用は、自己保存のための武器使用であるはずがない」 中谷「突進してくる敵の足を止めるのは認められる範囲だ」 穀田「2005年12月8日に車列が囲まれた際、弾薬装填の手前まで行った。「危ないと思ったら撃て」と言った指揮官が多かったともある」
◆穀田恵二 「2012年、米軍主催のペルシャ湾での国際掃海訓練に参加した際の外務省資料には、イランの海峡封鎖は自らの経済活動の封鎖につながるものだとある。外務省の認識が変わったのか。機雷掃海を「限定的かつ受動的」と区別する国は他にあるのか?」 岸田「把握していない」 安倍「日本は憲法との関係からそう説明している。他国は武力行使するのが前提であり、説明の必要はない」
◆穀田恵二 「政府は機雷敷設をきっかけに紛争がエスカレートした例はない、というが実際にはある。1988年4月、イランイラク戦争で米艦がイランの機雷にふれ破壊され、米軍がイランを攻撃し、イランがタンカー等を攻撃した。正式停戦前のどの時点で機雷掃海を開始するか?」 岸田「判断は大変難しい」 穀田「米国主催の掃海訓練への参加だけでもイランの反発を生みかねないのに、戦時下ではさらに危なくなることは明らかだ」
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<特別版 第15号(7月8日の一般質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=308
<特別版 第14号(7月6日の埼玉参考人会質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=304
<特別版 第13号(7月3日の集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=297
<特別質疑版 第12号(維新独自案発表と研究会声明)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=290
<【声明】[維新独自案]法案の修正ではなく、閣議決定の見直しを>
http://www.sjmk.org/?page_id=283
<特別版 第11号(7月1日の参考人質疑・一般質疑録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=278
<維新「独自案」に関わる3つの論点> 6月29日 川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=265
<特別版 第10号(6月29日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=275
<特別版 第9号(6月26日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=255
<特別版 第8号(6月22日の参考人質疑録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=251
<特別版 第7号(6月19日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=247
<特別版 第6号(6月15日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=241
<特別版 第5号(6月12日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=239
<2つの政府見解に関するコメント> 6月10日 川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=217
<特別版 第4号(6月10日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=226
<特別版 第3号(政府見解等を掲載)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=207
<特別版 第2号(6月5日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=187
<特別版 第1号(6月1日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=136
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発行:集団的自衛権問題研究会 代表・発行人:川崎哲 News&Review特別版 編集長:杉原浩司 http://www.sjmk.org/ ツイッター https://twitter.com/shumonken/ ※ダイジェストはツイッターでも好評発信中です。ぜひフォローを。
◆発売中の『世界』8月号に当研究会の論考が掲載されています。
http://www.sjmk.org/?p=300
◇『世界』7月号、6月号にも論考が掲載されました。
http://www.sjmk.org/?p=194
http://www.sjmk.org/?p=118
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