8月5日に行われた一般質疑のダイジェストをお送りします。8月6日の70年目のヒロシマデーを前に、「核ミサイルの輸送は法文上可能」との答弁が飛び出しました。今までも多用されてきた「法文上可能」との決まり文句は、政府に裁量を与える恐ろしい言葉だと思います。今後の審議については、礒崎総理補佐官の再招致をめぐって水面下での協議が続いている模様です。(集団的自衛権問題研究会 News&Review :特別版 第25号)
安保関連法案:防衛相「核ミサイル輸送も法文上は可能」(8月5日、毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20150805k0000e010230000c.html
他国軍支援で核兵器の輸送も法律上は可能(8月5日、TBS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2556419.html
【資料】参議院安保法制特別委員会(計45人)メンバーの要請先一覧
http://www.sjmk.org/?page_id=349 ※FAX、電話での要請にお役立てください!
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【8月5日(水)参議院安保法制特別委員会 一般質疑ダイジェスト】
※首相出席なし、NHK中継なし
◆北村経夫(自民) 「今朝の東京新聞に「米艦単独行動せず」「防護根拠揺らぐ」との記事が掲載された」 中谷「単独も複数もあり得る。日米共同海上作戦を想定して訓練しており、新ガイドラインにも「アセット防護(有事前の段階で防護し合う)協力」と明記されている。自衛隊は米艦へのミサイルや魚雷に対処する」
◆白眞勲 「礒崎補佐官は総理にとってどんな人か?」 中谷「総理を補佐する人」 白「いい人ですか?」 中谷「有能でよく勉強された立派な方だ」 白「山谷大臣、仲はよろしいんですか?」 山谷「誤解を招いたと真意を説明された」 白「「法的安定性は関係ない」は直球ど真ん中だ。誤解じゃない」
◆白眞勲 「核弾頭付ミサイルを運ぶのは法文上可能か?」 中谷「核兵器は保有していない。米国も存在を明らかにしておらず、ACSA(物品役務相互提供協定)ではミサイルは含まない。核兵器の輸送は想定していない」 白「法文上は可能か?」 中谷「法文上排除していないが想定していない」 白「大変な事だ。とんでもない」
◆白眞勲 「安倍総理は「我が国は唯一の戦争被曝国として核兵器廃絶を主導する」と言いながら、片や戦後初めて核兵器の輸送を行える法案を通そうとしている。岸田外相はこれを知っていたか?」 岸田「この法律の現状について、今、私自身も承知した」 白「知らなかったんですね。被爆地広島出身の大臣として、国民に謝罪し白紙撤回すべきだ」
◆白眞勲 「法文上、核兵器は提供できるか?」 中谷「保有しておらず提供はあり得ない」 白「核兵器は消耗品か?」 中谷「弾薬に当たる」 白「憲法上、核兵器を持つことは可能か?」 横畠法制局長官「憲法上、保有してはならないという事ではない」 白「驚き驚きの大変な状況になってきている」
◆白眞勲 「「電力不足」との報道は聞いたことがないが、政府は再稼働させようとしている。安倍政権はもしかしたら独自の核抑止力を持ちたいのか?」 中谷「我が国は非核三原則を持ち、核不拡散条約の締約国であり条約を誠実に履行する。核を持つことは決してない」
◆白眞勲 「法案で毒ガスは運べるのか?」 中谷「持っていないし運んだこともない」 白「法文上、運べるのか?」 中谷「法文上は除外していない」 白「大量破壊兵器を含めて、この世にある全ての兵器、弾薬を運べるのか?」 中谷「法律上、特定の物品の輸送を排除する規定はない」 白「運ばないのは政策上の判断だ。最初から法案に「大量破壊兵器、非人道兵器は除く」とか書いておくべきではなかったのか?」 中谷「運ぶことはあり得ないし、拒否する」
◆白眞勲 「核ミサイル・爆弾を積んだ戦闘機に給油はできるか?」 中谷「できる」 白「空中給油もできるか?」 中谷「法律上できるが政策判断として実施」 白「核を積んだ原潜に補給できるか?」 中谷「補給する選択肢はないが、除外規定はない」 白「要は何でもできる」
◆白眞勲 「後方支援について、危なくないところで運ぶなら、土地勘もある民間輸送会社に頼めばいい。私が敵なら、「危なくなったら帰る」という自衛隊を狙う」 中谷「戦闘現場でないところで、実施区域を指定し、しっかり安全対策をとって実施する」 白「今度はリュックに水と食糧ではなく、爆弾を背負う。リスクは高まるのではないか?」 中谷「現在も備えている。軍事的オペレーションの中の活動だ。装備、訓練、情報を持って行い、民間では出来ない」 白「軍事的オペレーションなら武力行使との一体化ではないか」
◆白眞勲 「海外で医師法は通じるか?」 塩崎厚労大臣「管轄権の範囲内に効力は限られる」 白「衛生兵は医師、看護士免許を持つか?」 中谷「持つ者も持たない者もいる」 白「応急セットの数は?」 中谷「平成23年から3年で8品目になる」 白「装甲救急車は?」 中谷「ない」 白「きちんと整備するのが先だ」
◆白眞勲 「6月19日の日本イラン局長級会議の報告は聞いているか?」 岸田「会議の中身は今日は承知していない」 白「ホルムズ海峡の問題でイランから抗議と遺憾の意は伝えられたか?」 上村中東アフリカ局長「そういう事はない」 白「議事録を理事会に提出を」 「攻撃姿勢を示して今までの友好関係をぶち壊している。日本は紛争を止めに入るべきだ」
◆藤末健三(民主) 「核兵器を搭載した原潜を防護できるか? 核を投下しようとする戦闘機に給油できるか? 核に関する修理、整備、訓練業務はできるか? 法文上これらは可能か?」 中谷「排除する規定はないが、非核三原則があり、米国は他国に依頼しない」 藤末「ご都合主義だ。それでは暴走を止められない」
◆藤末健三 「我が国がA国から武力攻撃された場合、A国に公海上で武器弾薬を輸送するB国を攻撃できるのか?」 中谷「A国には武力行使できるが、B国は後方支援のみで我が国に武力行使をしておらず、3要件を満たさないので攻撃できない」 藤末「我が国防衛上、それでいいのか?」
◆藤末健三 「武藤貴也議員の「戦争に行きたくないのは極めて利己的」とのツイートを見たか?」 中谷「拝見した」 藤末「どう思うか?」 中谷「大学生の息子がいる。若者は真剣に国のことを考えている。若者は学びつつ真実を見つけてほしい」 藤末「武藤議員は「戦争ではない」と説明しながら、戦争を前提に発言している。国の命令で戦争に行く事を断れなくなる。撤回するよう指導を」
◆寺田典城(維新) 「礒崎補佐官は謝罪を通り越して発言を撤回した。言葉に責任を持って職を辞するべきだ」「違憲の疑いのある法律をなぜ法の番人である法制局が止められなかったのか? 憲法99条を遵守しているのか?」 横畠長官「法的安定性は保たれ、憲法の範囲内であり、99条の憲法遵守義務の点でも問題ない」
◆寺田典城 「(長官に)のこのこしゃべられたんじゃ困る。法制局は「法の番人」との権威も失った。8割近い方々が「理解できない」と。賛成は3割もいない。異常だ。国民は曇りガラスを拭いても見えない」「国民が理解できない法律を通そうというのは横暴だ。謙虚になるべきだ」 「内閣法制局はもう崩壊している。通ったら裁判を起こされる。即刻辞めた方がいい。盆休みもとれる。耐え難きを耐え、忍び難きを忍んでやっているのだろうが、普通じゃない」
◆寺田典城 「こんなにグラグラする国会はない。危険を煽る必要はない。平和を希求するのが日本のあり方だ。安倍さんは子どもの戦争ごっこをしているようだ。兵站についても理解していない」「安倍さんに「もう降りる」と言う勇気を持つことが自民党と日本という国を救うことだ。まだ遅くない」
◆大門実紀史(共産) 「与党は中国の「脅威」をさかんに宣伝している。他に言うことはないのか。まるで戦争前夜のような質問だ。佐藤正久議員は「南シナ海で潜水艦からミサイル発射の動きがある」と発言した。米国防総省の中国に関する年次報告には「弾道ミサイル搭載潜水艦は2015年中に配備の可能性」と。運用開始は確認されていないのではないか」 中谷「2015年に核抑止パトロールを開始する予定とされている」
◆大門実紀史 「中国脅威論や「巡航ミサイルトマホークを持て」などの荒唐無稽な質疑がテレビで簡単に流されている。デニス・ブレア元米太平洋軍司令官は「東アジアは軍事紛争の可能性はない。統治権をめぐる紛争であり、軍事対立より遥かに低いレベル」と発言している」 中谷「承知しているが、米国の各種戦略文書で「緊張は増している」とも書かれている」
◆大門実紀史 「中国は「脅威」でなく「懸念」でいいか?」 中谷「日本は特定国を「脅威」とみなす発想に立たない」 大門「外交的平和的手段で問題解決を追求するのが両国の国益に沿う。日中間の紛争解決は、1)平和的手段で武力や威嚇に訴えない。2)防衛分野の対話・交流を重視して不測の事態を防ぐ。との大変大事なことを確認してきた」 岸田「中国を脅威とはみなしていない」
◆大門実紀史 「東南アジア諸国は話し合い解決を探り、南シナ海「行動宣言」から「行動規範」という強い枠組みを作ろうとしている。日本もこのために汗をかくべきだ」 岸田「行動宣言の完全履行と行動規範の早期策定を発言する」 大門「戦争シミュレーションでなく米中戦略経済対話のような強固な関係作りを行うべきだ」
◆大門実紀史 「統合幕僚監部防衛計画部の「取り扱い注意」の内部資料では、中国に対して平時から攻勢的な抑え込み戦術を行うとのシミュレーションをしている。何を考えているのか?」 中谷「対中国の軍事的シミュレーションではない」 大門「対中と明記されている。近隣の脅威ばかりを煽る。こんな議論をしているのは日本の国会だけだ」
◆アントニオ猪木(元気) 「法案は違憲だと思えてきた。砂川判決の機密文書開示の本を読んだ。この公文書は重く受け止めるべきだ」 岸田「裁判過程で日米間で交渉した事実はない。米国もコメントしていない。我が国もコメントするのは適切ではない。6月10日の衆院特別委で理事会協議事項となり、確認したが外務省で当該文書の保有は確認されていない」 横畠「報道は承知しているが、コメントする立場にない」
◆浜田和幸(次代) 「来年度の防衛予算は5兆円を超すとされる。F35ステルス戦闘機の導入予定は?」 石川博崇防衛政務官「計28機を整備する。平成27年度は6機分で、1機172億円の見積もりとなっている」
◆浜田和幸 「高額なF35より無人偵察機=ドローンをもっと活用すべきだ。ただ、データが膨大で米国も解析を一部民間に任せている。日本も自前の情報分析官が必要だ」 中谷「新ガイドラインにも共通の情勢認識・情報共有が明記された。無人機情報の日米間共有と活用を検討していく」
◆浜田和幸 「ロボット兵士導入の日米協力も行うべきだ。大阪大学は世界最高の4兆ワットのレーザーを開発した。米国のDARPA(国防高等研究計画局)から共同開発の提案も来ている。2050年はロボットが主役になる」 石川政務官「自律性技術には米国も高い関心を示している。積極的に技術基盤の向上に努めていく」
◆水野賢一(無ク) 「自衛隊が在外邦人を救出する場合、拘束した相手は捕虜ではないか?」 中谷「捕虜ではない」 水野「邦人が殺害された時に犯人を捕まえる権限はあるのか?」 中谷「ない」 水野「邦人救出の派遣には国会承認の歯止めがない。シベリア出兵のように万単位の自衛隊を送りこめるのか?」 中谷「制限はない」
◆又市征治(社民) 「尖閣の国有化、靖国参拝、村山談話を変更するのではと思われる認識など、憲法前文と真逆の動きをしている。安倍政権は火種をまいて戦争法案を作り、火事を大きくしようとしている」「サマワ以上に戦闘現場に近づく。相手国からは交戦国とみなされ、原発などが攻撃される恐れがある」
◆主濱了(生活) 「法的安定性を欠いた欠陥法案であり、即座に取り下げるべきだ」「日本が攻撃した第3国と集団的自衛権のある第4、第5の国が日本に武力攻撃する可能性がある。戦争へ突入する恐れがあるが、その覚悟はあるのか?」 中谷「新3要件という厳格な条件のもとで発動する」
◆荒井広幸(改革) 「ドイツには議会関与法がある。存立危機事態で作る対処基本方針の中身は?」 前田内閣審議官「経緯、認定、認定の前提となった事実、重要事項などを記載する」 荒井「基本計画の策定は?」 黒江防衛政策局長「活動範囲、経緯、影響、理由などを基本計画に記載する」
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<特別版 第24号(8月4日の参院集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=378
<特別版 第23号(8月3日の礒崎補佐官参考人質疑&一般質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=375
<特別版 第22号(7月29日の参院集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=371
<特別版 第21号(7月28日の参院集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=357
<特別版 第20号(7月27日の参院本会議質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=354
<特別版 第19号(7月17日の衆院強行採決抗議声明はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=359
<第18号以前のバックナンバーはこちらからご覧ください>
http://www.sjmk.org/?page_id=11
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発行:集団的自衛権問題研究会 代表・発行人:川崎哲 News&Review特別版 編集長:杉原浩司 http://www.sjmk.org/ ツイッター https://twitter.com/shumonken/ ※ダイジェストはツイッターでも好評発信中です。ぜひフォローを。
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