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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2015年08月19日00時01分掲載
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反戦・平和
「安倍政権と沖縄、そしてアジア」(中) 保守右翼向けとワシントン向け、安倍首相は前と後ろに二つ顔を持つヤヌスの神様 ガバン・マコーマック
安倍も安倍政権のメンバーのほとんど全員が戦前戦中の日本に理想像を求める組織例えば、「新自由主義史観研究会」(1995年設立)、「新しい教科書をつくる会」(1997年設立)、「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(1997年設立)、「明るい日本」(2013年設立)などに属しています。また閣僚のほぼ全員が「日本会議」と「神道政治連盟」のメンバーです。「日本会議」は東京裁判つまり、極東国際軍事裁判、の判決を否定し、南京虐殺や慰安婦の存在を認めず、正しい歴史と道徳教育を呼びかけ、2006年に安倍が出版した本に主張する「美しい日本」推進に固執(こしつ)しています。
◆“憲法による平和主義”に代えて積極的平和主義
「神道政治連盟」は2000年に当時の森首相が「日本は天皇を中心とする神の国」だからと発言して有名になった組織です。1969年に設立され、安倍が会の中心になり、その後会長を務めるようになると重要な組織として注目されるようになりました。天皇中心を強調する思想こそ、1930年代、1940年代の悲惨な戦争に日本を導いた当時の指導者たちの思想です。グローバル化する21世紀の思想とは相容れないものです。
米国は安倍の深い「悔悟」の念と人権、とりわけ女性の人権向上の取り組みには懐疑的であったかもしれません。しかし、過去60年の憲法解釈をくつがえして、新解釈で集団自衛権による武力行使を容認できるとしたこと、国家安全保障会議、つまり日本版NSC(国家安全保障会議?)の誕生、特定秘密保護法、武器輸出緩和などの実績を熱心に歓迎したのです。将来米国の要請があれば、世界のどこにでも「有志連合」に自衛隊が参加できることは口に出さなくても明白でした。
また沖縄本島の北部、辺野古に大規模な海兵隊基地建設を、力ずくでも進めると改めて約束をしました。22万人の自衛隊を米軍指揮下に統合すること、日本各地に散在する米軍の駐留維持費をこれまで通り何十億ドルか支払う、より反中国の姿勢を明確にする措置として、南西諸島の与那国、宮古、石垣島に東シナ海に向かった自衛隊基地を設けるなどを確認しました。
これらは全て、米国がかねてから要求していたことでした。中国と対峙し、封じ込めようと意図する米国主導の体制を支援するために、日本はより大きい分担しなければならないというわけです。 安倍訪米の直後、ジョン・マケイン上院軍事委員長は、自衛隊の韓半島、中東、南シナ海派遣を期待すると述べました。
安倍は、彼の新軍事政策を「積極的平和主義」と名付けました。米議会の聴衆に向けた英語版では「国際強調主義にもとづく積極的平和主義」と少し変えていますが、“憲法による平和主義”を追い払って、言葉のごまかしで“積極的平和主義”に差し替えたのです。安倍がいう平和とは、ジョージ・オーウェルの小説(『1984』)で宣伝省が「戦争は平和」と唱えたのとそっくりです。
◆二つの顔を持つヤヌスの神様
日本の米国従属が強制されたものではないというのが不思議な点です。サンフランシスコ条約で占領が終わり、日本国は独立を回復したはずなのですが、日本政府は米国が庇護者として日本に留まることを喜び、米国のご機嫌を損なわないよう、見捨てられないよう、それがどんなに高くついても仕方がないという態度です。今の政界にそういう日米関係のあり方が当然だと考えていないのは、共産党と社民党、少数の変わった政治家だけでしょう。
日米安保離脱とか、もっと対等な関係へと再交渉するとか考える政治家はまれです。ほんの少々の変革を試みた鳩山由紀夫首相が、いち早く首相の座から追い払われたのを記憶している人もいるかと思います。そして日本は基本的に半独立国として残っています。
国内的には安倍政権の基盤である保守右翼グループと過激な愛国主義者を満足させなければならないし、他方ではワシントンの殿を喜ばせなければならないというわけで、安倍首相は前と後ろに二つ顔を持つヤヌスの神様のようです。あっちを向いてこう言う、こっちを向いてああ言うという芸当が長期的に続けられるものでしょうか。
2014年4月、オバマ大統領と会談した安倍は、オバマが何よりも欲しいのはTPPだとわかり、日本のTPP加盟推進に向け全力を尽くしたのです。米国に高性能装備、情報付きの自衛隊を提供するだけではなく、さらにいろんな規制を外し、グローバル企業が日本で自由に活躍できることを目標にしています。 90年代に始まる新自由主義経済によって、中産層が小さくなり、プレカリアートと呼ばれる安定した仕事を持たず、資産も貯金もない、将来に不安を抱える層がどんどん大きくなりました。安倍は日本を“富国強兵”の大国にしたいのですが、グローバルに活躍する大企業の利益を視野に入れるばかりで、普通の市民を見ていません。普通の市民にとって何よりも大切なものは、戦争や暴力のない安全な国で、安心して仕事ができる生活ではないかと思います。 その慎ましい願いこそ沖縄の人々が長年求め、日本政府がそれを否定し続けてきたものです。(つづく)
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ガバン・マコ―マック氏
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