8月25日に行われた参議院特別委員会の集中質疑のダイジェストをお送りします。質疑が行われるほど、法案の不備や矛盾がボロボロと明らかになっています。福山議員による安全確保規定の欠落に関する追及では、何度も速記が止まり、NHK中継はしばらく草原の動物たちの映像に切り替わりました。テレビ入り審議での長時間ストップは異例だそうです。
----------------------------------- 【8月25日(火)参議院特別委員会 集中質疑ダイジェスト】 ※首相出席、NHK中継あり、約7時間
ネット中継アーカイブ
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php ※カレンダーの日付(25日)をクリックしてご覧ください。
◆山本一太(自民) 「危機感を煽るべきではないが、朝鮮半島情勢は平和安全法制がいかに必要かを明らかにした」 安倍「偶発的に何が起こるかわからない。しっかり備えをしていくべきだ」 山本「「事後承認による政府の独走があるのでは?」との懸念があるが他国は?」 岸田「仏は海外派遣後、3日以内に国会に通知。独は原則事前に過半数の国会議員の賛成、人員少なく限定的な場合は5%以上の議員の要請がなければ審議されたとみなす、英は基本は政府判断」
◆山本一太 「自衛隊のミサイル部隊の展開状況、部隊編成の詳細、具体的な作戦などは特定秘密に当たるか?」 中谷「手のうちを明らかにする場合について、指定するかどうかは個別具体的に判断するが、一般論で言えば、それらは特定秘密保護法の別表に該当し、特定秘密に指定することはあり得る」
◆福山哲郎(民主) 「8月11日の川内原発再稼働の際に総理は山梨の別荘へ行かれた。不安を抱える周辺住民に配慮はあったのか。15日午前の桜島噴火の際にも午後に別荘へ、16、17日にはゴルフをされた。避難する住民にどう思いを寄せられているのか。そして、この法案を慌てて力でやらなければいけないのか」
◆福山哲郎 「存立危機事態における後方支援を行う米軍等行動関連措置法で、自衛隊員の安全確保の規定はどこに明記されているか?」 中谷「安全確保の必要な措置として、武器使用及び活動の範囲を書いている」 福山「もう一度、どこに明記されているのか?」 中谷「一時休止、中断とか実施区域の指定に関する規定はない」 (速記が何度も止まる)
◆福山哲郎 「(安全確保の規定がないなら)「安全に配慮し、円滑な活動が実施できる」との中谷大臣の先日の答弁は虚偽、ないし間違いだったと撤回されるか?」 中谷「安全に配慮し、円滑な活動が実施できる前提で後方支援を行う」 福山「さっき「ない」って言ったじゃないですか?」 中谷「重要影響事態法や国際平和支援法のような安全確保規定はないが、後方支援であり安全確保は当然」 (この間、何度も速記止まる) 鴻池委員長が「暫時休憩」を宣言。 しばらくの「暫時休憩」後、午前11時48分頃、鴻池委員長が「再開」したものの、再度「休憩し13時に再開します」と宣言、午前の質疑は終了。
◆午後の質疑再開。冒頭、鴻池委員長から「自衛隊員の安全確保は国民の重大な関心事だ。これ以上議論が噛み合わないと後の質疑に支障が出る。委員長預かりにさせていただき、政府にはより検討を加えて善処してほしい。質疑を続行したい」と。福山議員は「受け入れたい」
◆福山哲郎 「総理は安全確保の規定がないことを承知していたか?」 安倍「承知していた」 福山「知っていたなら、総理の「自衛隊員の安全確保の措置は「全ての法案に貫徹されている」「全ての方針が法案の中に盛り込まれた」との答弁は、国民に対して、「騙す」は言葉が悪いが、誤解を与えたのではないか?」 安倍「(隊員の安全確保を含む)「北側三原則」は与党で何度も協議した。合理的に必要な限度内で行うと限定しており、隊員の安全確保についても配慮したうえで支援を行う趣旨を含むと理解している」 福山「解釈で安全規定をやられたら自衛官はたまったものじゃない。中谷大臣の答弁を蒸し返すものだ」
◆安倍首相が着席したまま、「同じことだ」とヤジ。福山議員が抗議。首相は「趣旨として中谷大臣と同じことを述べている」と釈明するも紛糾。速記が止まり、再開後、安倍首相は「席上で「同じ答弁になる」と述べたのは撤回する」と表明。
◆福山哲郎 「米軍等行動関連措置法は、現に戦闘が行われている場所でも実施可能だが安全確保規定がない。総理が知っていながら「安全確保の原則が貫徹」「自衛隊員のリスクは減る」などと述べたのは国民を騙すものだ。安全確保規定は法案の根幹。答弁を撤回して質疑をやり直すか、自衛官に「安全じゃないけど行ってください」と言うべきだ」 中谷「役務提供の後方支援であり、性質上安全に配慮しながら行うものだ」 安倍「指針において担保する」
◆水岡俊一(民主) 「自衛隊法95条の1項と同様に、改正案2項の米軍等他国軍の武器等防護でも主語は「自衛官」だ。2項の武器使用の最終判断は誰が行うのか?」 中谷「自衛隊法57条にあるように、上官の命令で武器使用をする」 水岡「95条2項に「指揮官の命令」と書いてあるのか?」 中谷「書いていない」 水岡「法律に書いていないことでよければ、何でもいい事になる」
◆寺田典城(維新) 「違憲法案だ。昔なら内閣法制局の段階で止まっていた。本来なら憲法改正すべきだ。憲法違反の法律提出は憲法99条の憲法擁護義務違反だ」 安倍「当然合憲の法案だ」 寺田「多数決で成立させるのは立憲主義に対するテロ行為ではないか。日本の存立危機事態だ」「中国を名指しするのは外交的失敗だ」
◆井上哲士(共産) 「沖縄、相模原と在日米軍による事故が相次いでいる。8月12日に沖縄で墜落した米軍ヘリは当初「H60」という一般仕様のヘリと発表されたが「MH60ブラックホーク」だった。漁業関係者の不安と怒りが広がっている。日本が提供している沖縄の米軍訓練水域の漁業補償は?」 中谷「去年が約7億4200万円」 井上「米軍でなく水域を提供する日本が負担している」
◆井上哲士 「ヘリが墜落した正確な場所を把握しているか?」 中谷「ホワイトビーチ水域内だ」 井上「漁業者は水域外だと怒っている。昨日聞いたら米に照会中だと。まだ把握していない。漁協組合長会は全会一致で抗議決議を初めて採択した。組合長は辺野古漁協の会長で「不安と恐怖を与えている」と抗議した」
◆井上哲士 「米陸軍トップの参謀総長は「1件の出来事に過剰に反応するつもりはない。事故は時々起こる」とうそぶいた。県民の怒りを歯牙にもかけない。すぐに同型機が発着した。何の反省もなく、許すことはできない。抗議すべきだ」 菅官房長官「引き続き米軍に情報提供と不安解消、安全な運用確保を求めている」
◆井上哲士 「嘉手納の米特殊作戦群が20日に伊江島訓練場で突然パラシュート降下訓練をした。必要な7日前までの通報はあったのか?」 中谷「なかった。沖縄防衛局が確認すると「事務的不備で通告できず遺憾。再発防止措置をとる」と。 井上「ひどい話だ。6年ぶりに通告すらなく降下訓練を行った。それに抗議すらしないで、米国の要請に日本が主体的な判断などできるのか」
◆井上哲士 「事故を起こした部隊は「ナイトストーカーズ」、闇夜に忍び寄る部隊と呼ばれ、グレナダ、湾岸、イラク等で特殊作戦に従事した。東富士で目撃されたヘリと同じか?」 中谷「静岡県で空砲3発が発見された事案は照会中だ」 井上「ヘリから足を投げ出しての危険な訓練が東富士で目撃された」
◆井上哲士 「事故でケガをした陸自特殊作戦群とは? いつから訓練に参加したか?」 中谷「約300名の選抜隊員で平成15年に習志野駐屯地に新編された。米軍ヘリ部隊との情報共有、連携要領、移乗要領の研修を平成21年度より例年実施している」 井上「米側は「いくつかの国との特殊作戦訓練中だった」としている。「研修」だと言い逃れはできない」
◆井上哲士 「米軍特殊部隊との訓練がなぜ必要か?」 中谷「不審船の武装解除やゲリラ・特殊部隊への対処に必要だ。我が国を取り巻く安保環境が厳しさを増す中で重要な課題だ」 井上「今回の訓練は自衛隊の海外活動拡大の先取りではないか?」 安倍「平成21年度から実施しており法案とは関わりはない」 井上「特殊部隊には米国内でも批判が出ている。6月6日のニューヨークタイムズ電子版のレポートは「地球規模の行き過ぎた殺害マシーン」と。国際法無視の米軍との軍事的一体化を進める法案だ。訓練をやめ、法案は廃案に」
◆中西健治(無ク) 「水野賢一議員の質疑のフォローをしたい。存立危機事態の認定には武力攻撃を受けた国からの同意や要請は必要か?」 中谷「武力攻撃を受けた国からの同意や要請がないまま、存立危機事態を認定することはない」 中西「これだけ大事なことがすぐに出てこない。法律にしっかり書き込まれていないのではないか」
◆福島みずほ(社民) 「ウィキリークスが暴露した米軍のイラク民間人虐殺のビデオがある。この実態をご存知か?」 安倍「イラク戦争はフセイン政権が大量破壊兵器が存在しない証拠を説明せずに起きた。日本は後方支援でなく復興支援を行った」 福島「日本が加害者になる。戦争下請け法案であり、人員、財力、リスクの肩代わりをするのではないか。法案の裏側に殺される市民がいる」
◆福島みずほ 「現行の周辺事態法が戦闘機への給油、整備を含まないとしているのはなぜか?」 中谷「武力行使との一体化とみなされないように」 福島「憲法上できないとしてきたのに、できるようになるのは問題だ」「給油する戦闘機にクラスター爆弾などが搭載されていないことをどう確認するのか?」 中谷「対象国の要請につき必要な調整を行い、武器弾薬を確認する」 福島「いちいちチェックできるのか疑問だ。日本が給油した米軍機が民間人やジャーナリストを虐殺することを止められるのか」
◆山本太郎(生活) 「ジュネーブ諸条約を批准している日本は国際人道法に違反する他国を支援しないか?」 安倍「支援しないのは当然だ。日本が共犯者になることはない」 山本「米軍が国際人道法違反を行ったら支援、協力しないか?」 安倍「対象国のいかんに関わらず支援しない」
◆山本太郎 「ジャーナリストの志葉玲さんによれば、2006年3月15日、米軍はイラク中部イシャキ村で、手錠をかけた無抵抗の11人を虐殺した。BBC等も報道した。地元の小学校教師の家で生後5ヶ月や5歳などの子ども、姪なども含まれている。家は爆破され、家畜も殺された。これは戦争犯罪ですよね?」 安倍「承知しておらず論評は控えたい」 山本「一般論でいいので答えてほしい」 安倍「確認できないので答えは差し控えたい」
◆山本太郎 「(広河隆一さんの写真を示しながら)米国は戦争犯罪常習国だ。ファルージャで米軍の学校占拠をやめてとのデモを銃撃した。2004年4月のファルージャ総攻撃ではジャーナリストを締め出し街を完全包囲。救援に向かった約40人の医療関係者のうち17人を射殺した。交戦規定は毎日のように変わり、「生きている者全て撃て」にまでなった。『冬の兵士』というDVDに詳しい。1次攻撃で7百人以上が、2次攻撃で約6千人が死亡、3千人が行方不明になった」
◆山本太郎 「こうしたファルージャ総攻撃で子ども専用墓地まで出来た。これは戦争犯罪ですね?」 安倍「中身を検証する材料がないのでコメントは控えたい」 山本「当時、小泉首相はこの総攻撃を「成功させなきゃいけない」と発言した。あなたは当時反対したか?」 安倍「どの程度事実に基づくか承知していない」
◆山本太郎 「広島、長崎の原爆や東京など各地の大空襲で50万人以上が死亡した。総理、一般市民への無差別攻撃は戦争犯罪ですね?」 岸田「国際法の基盤にある人道主義の精神に合致しない」 山本「当時ジュネーブ条約はなかったがハーグ陸戦条約があり、完全な戦争犯罪だ。総理は宗主国様の事は言えないんですね」
◆山本太郎 「米国は1776年建国以来の239年間の93%の期間で戦争を続けていると言われる国だ。日本が運んだ武器弾薬がファルージャに届いたかもしれない。法案で米軍と共に加害者になる可能性が大だ。米軍は白リン弾、クラスター弾、劣化ウラン弾などまで使用した。自衛隊は米軍の2軍ではない。過去の検証もなく任務を拡大させるわけにはいかない。第3者によるイラク戦争検証委員会を設置すべきだ」
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<特別版 第27号(8月19日の参院一般質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=388
<特別版 第26号(8月11日の参院一般質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=385
<特別版 第25号(8月5日の参院一般質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=382
<特別版 第24号(8月4日の参院集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=378
<特別版 第23号(8月3日の礒崎補佐官参考人質疑&一般質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=375
<特別版 第22号(7月29日の参院集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=371
<特別版 第21号(7月28日の参院集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=357
<特別版 第20号(7月27日の参院本会議質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=354
<特別版 第19号(7月17日の衆院強行採決抗議声明はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=359
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------------------------------------ 発行:集団的自衛権問題研究会 代表・発行人:川崎哲 News&Review特別版 編集長:杉原浩司
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