・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・教育
・文化
・アジア
・国際
・入管
・中国
・市民活動
・米国
・欧州
・みる・よむ・きく
・核・原子力
・検証・メディア
・反戦・平和
・外国人労働者
・司法
・国際
・農と食
・イスラエル/パレスチナ
・市民活動告知板
・人権/反差別/司法
・沖縄/日米安保
・難民
・医療/健康
・環境
・中東
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2024年11月21日
・2024年11月20日
・2024年11月18日
・2024年11月17日
・2024年11月16日
・2024年11月15日
・2024年11月14日
・2024年11月13日
・2024年11月12日
・2024年11月11日
|
|
2015年09月06日19時07分掲載
無料記事
印刷用
政治
労働組合と安保関連法制 ドイツ労働戦線(DAF)と産業報国会 ドイツでは労組がまず解散させられた
戦時に突入した場合、労働組合はどうなるのだろうか?そのヒントを歴史に見よう。
ファシズムとは戦争に勝利することを最大の目的とし、リーダーが国会に縛られることなく自己の裁量で、国のあらゆるリソースを動員できる国家総動員体制である。選挙で首相になったヒトラーが独裁者になったのは全権委任法を可決させて、ドイツをファシズム国家に変更した時だった。全権委任法の5条は以下。
1 ドイツ国の法律は、憲法に規定されている手続き以外に、ドイツ政府によっても制定されうる。本条は、憲法85条第2項および第87条に対しても適用される。
2 ドイツ政府によって制定された法律は、国会および第二院の制度そのものにかかわるものでない限り、憲法に違反することができる。ただし、大統領の権限はなんら変わることはない。
3 ドイツ政府によって定められた法律は、首相によって作成され、官報を通じて公布される。特殊な規定がない限り、公布の翌日からその効力を有する。憲法68条から第77条は、政府によって制定された法律の適用を受けない。
4 ドイツ国と外国との条約も、本法の有効期間においては、立法に関わる諸機関の合意を必要としない。政府はこうした条約の履行に必要な法律を発布する。
5 本法は公布の日を以て発効する。本法は1937年4月1日と現政府が他の政府に交代した場合、いずれか早い方の日に失効する。 (ウィキペディアより)
ファシズムの研究者だった山口定教授は「このように、執行府が議会を無視して広範な立法権を直接に行使するという執行権独裁の体制はファシズム体制の特徴の1つである」(山口定著「ファシズム」岩波現代文庫)としている。
全権委任法はドイツが目下、国が危機的事態にあるので4年間に限り、国会に縛られず、首相である自分に全権を委任して欲しい、という「法律」だった。その第一条で憲法に縛られず必要な法律は内閣(執行権力)が制定できるとしている。さらに第4条では外国との条約も国会承認を必要とせず、政府が単独で結べることになった。
ナチスは全権委任法を4年ごとに更新して引き伸ばしていった。国会に縛られない、ということは実質的にはナチスの一党独裁になったことを意味する。
さて、今、日本の国会で採決間近に来ている安保関連法制。国会で議論されている「存立危機事態」を政府が宣言した場合、日本国内も戦時体制に移行しうることになる。戦争遂行のため、また国民を危機から守るために非常時の態勢に移行するのである。その場合、地方公共団体、病院、企業、放送局なども政府に協力して戦時体制に入ることを余儀なくされる。
敗戦の1945年以後、日本国は戦争に巻き込まれることがなかった。だから、日本国憲法のもとで戦時になった場合に、法律や人権がどのような制限を受けるのかは未知数である。安保関連法制の中に、人権侵害は必要最小限に留めるべきであるといった文言がある。ということはつまり、制限されることが法律に盛り込まれているのである。その必要最小限の解釈は政府に委ねられることになるだろう。物価の統制や民間企業の営業も戦争に勝つためには政府の統制を受けることも法案に盛り込まれている。
それでは我が国と深い関連を持つ国が攻撃を受けて、日本国も戦時下になった場合、日本で総選挙は行われるのだろうか?たとえば近いところでは来年夏の参院選である。戦争という緊急事態・非常事態において政府が戦争遂行を指揮しており、その際、選挙で政府が変わる可能性もあるということはありえるのだろうか?非常時だから、選挙の「一時停止」や裁判所の憲法判断の「一時停止」などといった事態にはならないのだろうか?もし、そうなったら、戦争が終わるまで執行権力はそのまま維持されることにもなりかねない。
日本国憲法は平和憲法であるが故に、戦時下になった場合に実際にどのような事態になるのか、よくわからないところがある。
ナチスが全権委任法を制定してファシズム体制に移行したのが1933年3月、それからわずか2ヶ月後の5月にナチスが行ったことはドイツのすべての労働組合を解散して、新たに労使一体の産業報国組織である「ドイツ労働戦線」(DAF)を創設したことだった。DAFは労働者が経営者に一方的に服従する組織だったとされる。第一次大戦中のようにストライキを打たれたら、戦争遂行にダメージを受けるからだろう。ということはもう労働者はストライキもデモも打てなくなってしまったのである。
日独伊三国同盟の一国である日本ではというと、「事業一家」という思想のもと、労使一体となって国に奉仕する産業報国会という組織が設立され、加入率は全国民の70%近くに及んだとされる。ドイツでも日本でもファシズムの戦時体制への移行と、労働組合の解体、再組織化が同時に行われた。労使一丸となって戦争に勝つための、総力戦体制になって行ったのである。
村上良太
※山口定著「ファシズム」(岩波現代文庫)の中の「動員の制度化」を参照した。
※ドイツ革命 「第一次世界大戦末期に、1918年11月3日のキール軍港の水兵の反乱に端を発した大衆的蜂起と、その帰結としてカイザーが廃位され、ドイツ帝国が打倒された革命である。ドイツでは11月革命とも言う。これにより、第一次世界大戦は終結し、ドイツでは議会制民主主義を旨とするヴァイマル共和国が樹立された」(ウィキペディア)。ドイツ革命では労働者も一斉に各地で立ち上がった。
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
|