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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2015年09月26日18時22分掲載
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「西洋政治思想史」(佐々木毅、鷲見誠一、杉田敦 共著) 知の蛸壺から出て、政治学の歴史を一望できる好著
北樹出版から出ている「西洋政治思想史」は東大を中心とする主流派の政治学者が書き下ろした政治学史です。通説の政治学の概略が本書を一読すると得られます。著者は佐々木毅、鷲見誠一、杉田敦の3人の政治学者。
著者が前書きに書いているとおり、本書はプラトンやアリストテレスなどの古代ギリシアの政治思想から、中世、近代を経て、さらにハバーマスやアドルノ、ホルクハイマー、アレントなど現代の政治哲学者や社会学者まで、広く対象にして俯瞰しており、その説明も簡潔ながら、非常にわかりやすく、読者が噛めば噛むほど含蓄がある本です。
大学の政治学の教科書として書き下ろされたと思われるテキストですが、一般人が読んでも面白く、関心に応じて好きなところから読めるようになっており、その意味で政治学の原著を読むためのガイドブックとして使える本です。
日本の法学部は普通、政治学科と法学科に分かれているため、初期の段階で所属が分かれてしまうと、それぞれの狭い蛸壺に入り込んでしまいがちです。とくに日本で近年進んだ教養課程の縮小、廃止によって、蛸壺化は一層進んでいると思われ、大学人は隣は何する人ぞ、という状態に陥っていることが推察されます。哲学は哲学で、法学は法学で、政治学は政治学で細かい重箱の隅をつついている状態こそが、今日の政治の危機や教育・学問への国家の干渉を招いており、それぞれの学者が己の蛸壺に入っているが故に隣家が燃えていることにも無感覚になってしまっていると思われるのです。
知の殿堂である大学がそうなっているのであれば一般人がそれを超えることが難しいのも当たり前のことです。そんな時に、この「西洋政治思想史」は法律と政治と哲学が未だ互いに熱く、理論形成の段階でマグマのように燃えていた時代を俯瞰することができるものです。
これから先、夏の参院選に向けて憲法論争が起きるのは必至ですが、その時、学術を装った国民を紛らわせる理論もまた出てくるかもしれません。そんなとき、その理論を看破するためには狭い蛸壺ではなく、幅広い知識を個々人がもつことが極めて大切なのではないでしょうか。
村上良太
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