・読者登録
・団体購読のご案内
・「編集委員会会員」を募集
橋本勝21世紀風刺絵日記
記事スタイル
・コラム
・みる・よむ・きく
・インタビュー
・解説
・こぼれ話
特集
・教育
・文化
・アジア
・国際
・入管
・中国
・市民活動
・米国
・欧州
・みる・よむ・きく
・核・原子力
・検証・メディア
・反戦・平和
・外国人労働者
・司法
・国際
・農と食
・イスラエル/パレスチナ
・市民活動告知板
・人権/反差別/司法
・沖縄/日米安保
・難民
・医療/健康
・環境
・中東
提携・契約メディア
・AIニュース
・司法
・マニラ新聞
・TUP速報
・じゃかるた新聞
・Agence Global
・Japan Focus
・Foreign Policy In Focus
・星日報
Time Line
・2024年11月21日
・2024年11月20日
・2024年11月18日
・2024年11月17日
・2024年11月16日
・2024年11月15日
・2024年11月14日
・2024年11月13日
・2024年11月12日
・2024年11月11日
|
|
2015年10月07日21時04分掲載
無料記事
印刷用
TPP/脱グローバリゼーション
TPP交渉大筋合意 反対運動は国会での批准阻止を狙う
TPP(環太平洋経済連携協定)交渉を続けている12カ国の間で10月5日、大筋合意が成立した。米国・アトランタで開催されていた閣僚会合でまとまったものだ。合意を受け安倍首相は「日本のみならずアジア太平洋の未来のとって大きな成果」と手放しの喜びよう。マスメディアも「世界最大の自由貿易圏の誕生」とはやし立て、「成果」を持ち上げる報道に終始した。一方、TPPに反対してきている生活者や農民グループ、市民グループは相次いで大筋合意に対する抗議声明を発表、今後は国会における批准阻止に焦点をあさせ、運動を強めていくとしている。また、TPP交渉に参加している米国やオ―ストラリア、ニュージーランドなどでは、TPPに反対する市民運動が大きく広がっており、各国とも今後は自国の国会に対する批准阻止運動に力を入れることになる。日本の市民運動は国内での運動と同時にTPP阻止の国際的な連携を一層強めていく方針だ。(大野和興)
◆大筋合意の勝者は米日資本
大筋合意に至るまでの閣僚会合の議論は混迷を極めた。9月30日に始まった会合は三度の延長を重ね、延べ六日間を費やしてやっとまとまったという印象であった。最後まで懸案事項として残ったのは、自動車部品の原産地比率問題、乳製品の関税と貿易拡大問題、医薬品のデータ保護期間問題、と三つであった。 それぞれの問題の詳しい内容は省くが、各国とも自国の産業の利害が絡まる問題であり、それだけに難航した。大筋合意の本質を簡潔に整理すると、米国と日本が自国資本の権益を掲げて新興国を抑え込んだということに尽きる。例えば自動車部品の原産地比率問題。TPP域内で生産された部品の率でTPPで削減される関税の恩恵を受けられるかどうかが決まる、自動車産業にとっては極めて重大な意味を持つ取り決めだ。NAFTA(北米自由貿易協定)に参加し、米国自動車産業と密接な関係も持つメキシコは、60%以上を主張した。一方、TPP域外アジア各国で部品生産をしている日本の自動車産業は40%を主張、結局メキシコ側が折れ、45%という圧倒的に日本に有利な比率で決着した。交渉妥結を急ぐアメリカからの圧力がメキシコにかかったとみられている。
◆自動車の見返りに農業が丸裸になった日本
同じ構造は日本内部でも見られる。日本政府は自動車産業の権益を最優先して、原産地比率で有利な妥結を得たが、その見返りに農業・農産物では次々と譲歩を重ね、丸裸と言ってもよい状況になった。 例えばコメは、米豪向けに新たな無関税の特別輸入枠7万8400トンを設けることになった。1995年にGATTウルグアイ・ラウンドの取り決めで日本に入ってきている特別輸入枠(ミニマム・アクセス米)の年間輸入量77万トンと合わせると、国内消費量の1カ月分を超える量が無関税で入ってくることになる。生産者米価はここ何年も大幅引き下げが続いている。借金して規模拡大してきた稲作経営者ほど打撃は大きく、借金返済が滞る経営体が増えている。そこに新たに一カ月分の安いコメが市場に流入して来ることになる。米価の大暴落は必至といえる。 その他、牛・豚肉、乳製品も関税引き下げや輸入枠拡大をすることになった。畜産農民の経営は大きな打撃を受けることになる。いま、国内の米価下落を最小限でとどめているのは、畜産向けの飼料米栽培があるからだが、肝心の国内畜産が減退したのでは、せっかく作った飼料用米の持っていく先がなくなる。結局、コメ農家も畜産農家も共倒れということになる。
◆戦争法制との連動
TPPは米国のアジア軍事戦略と密接に結びついている。読売新聞10月7日号は安倍首相が6日に行った記者会見で「TPPは日本の安全保障にとって重要な役割を果たすとの認識を強調した」と伝えた。アジア太平洋地域の覇権を狙う中国に対し、TPPの枠組みを利用してけん制出来るというのがその理由だ。さらに同紙はブリンケン米国務副長官が5日に行った記者会見での発言として、「(TPP参加国との)経済関係を強めることは、米国が将来にわたってこの地域に関与することの証だ」という言葉を伝えている。 安倍政権は、集団的自衛権の行使を前提に、米国との武力行使の一体化を図る戦争法制を強行採決で成立させている。TPPは、軍事安保と支える経済安保という性格を強く持っていることが明らかになったといえる。
◆公約も国会決議も反故
2012年12月衆院選で自民党は「ウソつかない、TPP断固反対」のポスターを全国に貼りめぐらして選挙運動をし、翌13年には安倍首相が「聖域なき関税撤廃を前提とするTPP交渉には参加しない」と言明した。また、国会では2013年4月に衆参院両院の農林水産委員会が与野党一致で「 米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること」「食の安全・安心及び食料の安定生産を損なわないこと」などを内容とする決議を行っている。今回の政府のTPP大筋合意参加は自民党の公約にも国会決議にも反しているのである。
◆批准阻止に焦点
「大筋合意」の成立は、TPP交渉のステージが一段上がっただけにすぎない。今後、調印に向けて交渉は続き、並行してTPPに沿った国内法制度の整備、批准に向けての国会審議が控えている。TPP阻止の運動を続けてきている市民団体「TPPに反対する人々の運動」は、まず「大筋合意に至る交渉の経過と合意内容を直ちに全面的に公開する」ことを要求すると同時に、国会での批准審議に焦点を合わせ、批准阻止の闘いを組む方針を打ち出している。 また、戦争法廃止とTPP阻止を結合させ、2016年7月の参院選で与野党逆転を実現させようという呼びかけも始まっている。米国でも大統領選挙と絡ませながら市民グループによる議会への働き掛けが活発化する見通しだ。米議会内でも、今回の大筋合意の内容に対する反発が、TPP推進・反対の両派から上がっている、批准はきわめて難航するとの予測もある。国際的な運動の連携が重要になる。
|
転載について
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。
|
|
|