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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2015年10月09日13時50分掲載
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文化
【核を詠う】(番外篇・戦争法) “暑い夏”の新聞歌壇に読む戦争法詠(2) 「朝日歌壇」(7~9月)① 「若者に波及しはじめ漸くに反戦デモは報道さるる」 山崎芳彦
「日本の資本家が彼等の企業の危機を侵略によって開こうとし、冒険的な日本陸軍がそれに和した結果、私は三八式小銃と手榴弾(しゅりゅうだん)一個をもって比島へ来た。ルーズベルトが世界のデモクラシイを武力によって維持しようと決意した結果、あの無邪気な若者が自動小銃を下げて私の前に現われた。こうして我々の間には個人的に何等殺し合う理由がないにも拘らず、我々は殺し合わねばならぬ。それが国是であるからだが、しかしこの国是は必ずしも我々が選んだものではない。」という、大岡昇平の小説『俘虜記』の一節を、筆者は新聞歌壇から戦争法にかかわって詠われたと読んだ短歌作品を記録しながら、不意に思いだし、昭和42年発行の新潮文庫版を本棚から探し出し、既に赤茶けたページを繰って確かめた。『俘虜記』と並んで昭和29年発行の同文庫の『野火』もあった。読み返し始めている。読みながら、戦争法が「成立」した現在について、思うことは多いし、戦争に向かう国家権力の本質についての示唆を受けている。
今回から朝日新聞の『朝日歌壇』(今年7月~9月)の入選作品のうちの戦争法にかかわっての作品を抄出、記録させていただくが、選者の一人である佐佐木幸綱は『朝日俳壇』選者の金子兜太との対談で、金子がいくつかの俳句作品(『朝日俳壇』の入選作《憲法が散華してをる揚花火 馬目 空》ほか5句)をあげて、 「いまの時代を非常に危険だと感じておられる。『こらいかん!』という思いを、そのままぶつけている印象です。」と語るのを受けて、 「戦後、俳句や短歌を格下の文学とみなす『第二芸術論』が現われました。『戦争中に戦争反対できなかったじゃないか』とも批判された。歌壇はすぐに応答し、金子さんらも『社会性俳句』を提唱された。60年安保闘争に向かって、社会詠が大いに盛り上がった。今回、それ以来の盛り上がりのような気がします。」として、作品《憲法が守りてくれしわが人生、銃撃(う)たざりき撃たれざりけり 松下三千男》ほか2首を挙げた上で、「『私の責任』を感じながら、過去の反省を現在の問題に重ね合わせて、止むにやまれず詠む気持。それを歌が発散している。作者の真剣な表情を見ているような気がします。」と応じている。(朝日新聞デジタル記事「安保法制を読む作品、続々 朝日俳壇・歌壇の2選者が語る」8月6日より)
たしかに「朝日歌壇」の入選作品には戦争法にかかわっての作品がかなり多い。入選作品の背後には相当の数の作品があることを思うと、強行採決により「成立」したとはいえ、戦争法制に対する抵抗がさらに持続し、高まり、広がるエネルギーは、詠う人々、短歌人の中にも間違いなくさらに強まると確信できる。詠うことも行動であり、その行動は人々を結びつけさまざまな力を生み出していくに違いない。「戦争法内閣」を退陣させ、憲法を現実の生活、社会のあり方に生き生きと貫徹させる主権者の意思を、さまざまな形で、確かな連携と共同の力にしていきたいと願う。
なお、朝日歌壇の選者は、馬場あき子、佐佐木幸綱、高野公彦、永田和宏の4氏である。
▼「朝日歌壇」(朝日新聞) ◇7月6日◇ この国は見えない地図の中にあり九条を捨て何処に行くのか (佐佐木幸綱選 三郷市・岡崎正宏)
特攻は命じたものは安全で命じられたる者だけが死ぬ (永田和宏選 奈良市・直木孝次郎)
学問と言論にまだ自由あり自民の推した学者が違憲と (永田選 西海市・前田一揆)
◇7月12日◇ 憲法に合う世にすべき政治家が憲法を世に合わす策を練る (佐佐木選 大阪市・由良英俊)
若者に波及しはじめ漸くに反戦デモは報道さるる (佐佐木選 大阪市・瀬川幸子)
大国のうしろにつけば安全か おまえ前へ行けといわれたらどうする (高野公彦・佐々木共選 奈良市・直木孝次郎)
あれちのぎくに降りそそぐ雨むしろ旗砂川は不服従の原点 (高野選 水戸市・中原千絵子)
「貫通銃創」「戦死」「此段通告候」事も無げなる戦死公報 (高野選 福津市・下村靖彦)
戦死者を柱と数うるこの国は置き去りもせり木切れのように (永田選 水戸市・中原千絵子)
筍の皮をむきつつ聞くニュース憲法九条満身創痍 (永田選 羽島市・大野日出治)
島山に塹壕地下壕戦車壕七十余年無言の悪夢 (馬場あき子選 東京都・大村森美)
新聞に安保の疑義のなき日なくどくだみにおう梅雨となりたる (馬場選 西条市・亀谷克礼)
◇7月20日◇ 戦場へ昭和生まれは送るひと平成生まれは送られる人 (高野選 半田市・依田良雄)
ニュース見る中一娘にもわかる「安倍ちゃんは戦地に行かないもんね」 (高野選 豊橋市・赤石裕佳里)
若きらはシュプレヒコールをテンポよくラップにのせて繁華街ゆく (永田選 長岡市・田原モト子)
デモ隊を子連れで歩く足取りの重さは暑さのせいばかりでもない (永田選 茨木市・渡辺 太)
仲間らのマスコミ批判を表現の自由と答える総理なる人 (永田選 古河市・鯉渕 治)
沖縄や報道への威嚇も言論の自由と聞きて唖然慄然(あぜんりつぜん) (永田選 大阪市・由良英俊)
新聞の勲章である 真実を書いて「潰す」と脅かされしは (永田選 熊本市・垣野俊一郎)
「マスコミを懲しめる」との発言あり懲らしめられる新聞を読む (馬場選 登別市・松木 秀)
フクシマとヒロシマナガサキオキナワと日本国中カタカナとなる (馬場選 さいたま市・田中ひさし)
◇7月27日◇ 金曜日雨が降ろうがSEALDs(シールズ)はラップ調にて"憲法守れ" (永田選 葛城市・林 増穂)
「うちの子は戦死しました」と言いたくないだから私はプラカードを持つ (永田選 豊橋市・赤石裕佳里)
戦争をさせないデモへ行く夕べ君と食べてるカレーの平和 (永田選 東京都・白倉眞弓)
見舞ふたび九十二歳の枕辺に山西省が読み止しのまま (永田選 行方市・額賀 旭)
竹槍を研ぎて突きたり標的の藁人形を繕いながら (永田選 所沢市・風谷 螢)
老い父の同窓生の名の横に戦死戦死と戦死が並ぶ (馬場選 ひたちなか市・猪狩直子)
敗戦も知らずに逝きし父なりき逝きて七十年父なき戦後 (馬場選 行方市・鈴木節子)
沖縄の基地を風刺の芸人をあざ笑うごと軍用機飛ぶ (馬場選 半田市・依田良雄)
戦死せし叔父は未だに二十三年戦争法案阻止に起つ我は喜寿 (高野選 向実市・松重幹雄)
長き世を戦災人災くぐり抜け憲法解釈の時代となりぬ (高野選 福井市・甘蔗得子)
◇8月3日◇ 軍曹とうあだ名の上司はただ一度シベリアの極寒の霧を語りき (馬場選 山口市・藤原多美子)
よかったと言ひたる父の親ごころ航空兵に不合格われに (馬場選 下関市・牛島正行)
「戦争法」の露はらうごとイージス艦登舷礼し母港に入り来 (馬場・佐々木共選 横須賀市・梅田悦子)
ヒトラーを止められなかった国民を体験している戦後七十年 (馬場選 宮崎市・木許裕夫)
永久とは七十年なるかぐらつきし憲法九条祈るごと読む (佐佐木・高野共選 長野県・沓掛喜久男)
存立の三半規管狂わせて安保法制強弁の通る (佐佐木選 千葉市・田中文雄)
幻想か国会前を曽孫抱き樺美智子氏静かに歩む (高野選 長野市・青木武明)
ギャグなのか若手議員が集まって「文化芸術」マスコミおどす (永田選 藤沢市・坪井睦彦)
座り込みを続ける人にひと声もかけられぬまま辺野古を去りぬ (永田選 瑞穂市・渡部芳郎)
◇8月10日◇ 戦争に捲き込まれたらきつと言ふ「想定外」と口を揃へて (佐佐木選 前橋市・荻原葉月)
責任は自分にあると言ひ続け誰も責任とらぬ現実 (佐佐木選 高松市・島田章平)
「過ちはくりかえしませぬ」という碑文安保法案成らば嘆かむ (佐佐木選 三原市・岡田独甫)
『陸軍』という映画あり手を合わす昔も今も母は子のため (佐佐木選 春日市・伊藤流水)
〈賛成の諸君〉がのったり起立して安保法案強行採決 (佐佐木・永田共選 安中市・鬼形輝雄)
解釈で憲法を変えた人物として教科書に載りたがってる (佐佐木選 宮崎市・大田原良治)
読み返す『思い出袋』鶴見氏の反戦の意志リレーしたくて (佐佐木選 常滑市・井上啓子)
骨つぼに石ころひとつからんころん東洋平和のいくさの果てに (高野選 名古屋市・諏訪兼位)
強いられて父が使いし日本名金子健太郎を捨てた八月 (高野・馬場共選 大阪府・金 忠亀)
国民に充分に理解はされていないと言ひつつ審議を打ち切る不思議 (永田選 新潟市・伊藤 敏)
理解した上で反対なにゆえに「理解すすんでいない」と言うのか (永田選 東京都・井ノ川澄夫)
読み返す『思い出袋』鶴見氏の声が聞こえる人を殺すな (永田選 常滑市・井上啓子)
安保法案話題にするを何となく互いに避ける今日の飲み会 (永田選 中央市・前田良一)
名古屋場所高校野球盆踊り平和であるから九条あるから (馬場選 松山市・宇和上 正)
金子兜太の「アベ政治を許さない」てふ太筆の文字揺れる間に法案通る (馬場選 横浜市・坪沼 稔)
次回も「朝日歌壇」の作品を読む。 (つづく)
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