ロシア航空機墜落事件がイスラム国によるテロだったと断定したロシア政府はシリア領内のイスラム国の石油トラックや石油施設を空爆している。ロシアの報道機関RTによると、11月23日の時点で、5日間で1000台のタンクローリーを破壊したとされるが、その数について、米軍人が疑問を呈しているようである。
■ロシアの報道機関RTによる空爆報道
https://www.rt.com/news/323065-syria-airstrikes-terrorists-russia/
報道されているタンクローリーはシリア領内で採掘した原油をイラクの精製施設に送って、トルコへ密輸するコンボイだとされる。そのコンボイや石油施設の周辺に横付けされたタンクローリーを空爆する映像が公開されている。映像を見ればイスラム国の石油ビジネスは想像以上に大きく組織的に動かされていて、まさに「国家」の力すら感じさせる。それを空からロシア機が空爆するのだが、コンピューターで攻撃目標を補足するシステムではないため、その破壊数は底上げされているのではないか、と米国右派のFOXニュースがペンタゴン高官の言葉を引用して批判的に書いている。 ちなみにロシア機は地中海にのぞむシリアのラタキアの町でロシアが借りている空軍基地から飛び立っているとされる。ロシア軍はタンクローリーや石油施設だけでなく、拠点なども爆破しているとされる。
■FOXニュースによる疑問http://www.foxnews.com/politics/2015/11/23/us-steps-up-attacks-on-islamic-state-oil-trucks-in-syria.html
米国などもイスラム国の石油タンクローリーの空爆を行っている。11月21日には283台のタンクローリーを破壊したという。これはシリアとイラクの国境地帯で、 Al-Hasakah とDeir ez-Zorの周辺とされる。そのほか、拠点を攻撃している。
http://www.businessinsider.com/us-isis-oil-trucks-2015-11
■ロイターの映像 ロシアの報復攻撃
http://uk.reuters.com/article/2015/11/20/uk-mideast-crisis-france-russia-idUKKCN0T929420151120 カスピ海に浮かぶ戦艦からミサイルが次々と発射されている。
■ニューヨーク・タイムズによる米主導多国籍軍のDaesh攻撃記事
http://www.nytimes.com/2015/11/17/world/middleeast/us-strikes-syria-oil.html?_r=0
米軍はカタールの空軍基地を拠点にしているそうである。Daesh(イスラム国)がコントロールしている石油精製施設の3分の2を破壊することを目標にしており、シリアとイラク国境の8つの大油田を稼働不能にすることが多国籍軍の軍事的標的となっているという。さらに兵器生産施設なども攻撃目標に入っているとされる。 フランス軍は地中海沖に空母を配して戦闘機を飛ばしており、イスラム国の石油収入を断つ兵糧攻め作戦に出ている。
http://www.nytimes.com/2015/11/13/us/politics/us-steps-up-its-attacks-on-isis-controlled-oil-fields-in-syria.html?ref=topics&_r=0
ニューヨーク・タイムズのビデオによると、石油タンクローリーの所有者には個人輸送業者が多く、その由来はサダム・フセイン時代にイラク政府が米国の目をかいくぐって石油の密売を始めた時にタンクローリーを自前でもって輸送業を始めたという歴史があるそうだ。タンクローリーの運転手は車に小麦粉なども一緒に積んで税関への賄賂としていたとされる。主な密輸先はトルコで、トルコの港から欧州へ密輸の石油が取引されてきたという。Daesh(イスラム国)は崩壊したサダム・フセイン政府の密売の仕組みをそのまま引き継いで石油密売を行ってきたらしい。 密売価格は仮に1バレル25ドルでもDaeshにとっては大きな収入源となる。しかし、これがいくつかの買い手を経て末端価格では1バレル70ドルなどになっていた。ただ、このまま空爆が継続されると、ドライバーたちも命をかけた輸送ビジネスが割に合うか、判断を迫られることになるだろうという。 米軍は今回の作戦で、タンクローリーの空爆前に、空からビラを撒き、<これから空爆を行うからドライバーは退避せよ>と促しているとのことだが、実際にどれだけの人々が避難して、どれだけの人々が死傷したかは不明である。
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