従軍慰安婦問題での日韓両政府の合意に関し、日米の二人の学者の発言が注目を浴びている。一人は政治学者の白井聡さん(京都精華大学専任講師)が12月29日にfacebookで発進したコメント。もう一つは、米コネチカット大学教授で歴史学者のアレクシス・ダデンさん。白井さんは「最終的、不可逆的解決」を語れるのは、政府ではなく被害者の方々のみです」と直球を投げ込み、「合意」のいかがわしさを浮き彫りにする。ダデンさんは、韓国ハンギョレ紙の電子メールインタビューに答えたもので、「歴史問題は貿易交渉や核兵器システムの交渉とは全く異なるものだ」として、今回の合意が「最終的かつ不可逆的な解決」を宣言したことを批判した。(大野和興)
◆この問題は、長期的にはまたもやさらにこじれることになるでしょう
白井さんは「本件に関し、私は精通しているわけではないのですが、それでも少々言っておきたいと思います」と前置きし、次のように述べている。
https://www.facebook.com/satoshi.shirai.18/posts/969841106424707
「まず、多くの方々指摘していることですが、「最終的、不可逆的解決」を語れるのは、政府ではなく被害者の方々のみです(この論理を否定する立場は、自覚の有無にかかわらず国家主義であると私は思う)。それでは、被害者の方々は、何を基準に「解決とみなせる」と言っているのか。リンク先の声明によれば、「事 実の認定、謝罪、賠償、真相究明、歴史教育、追慕事業、責任者処罰」です。今回の政府間「合意」は、後半四つの項目(真相究明、歴史教育、追慕事業、責任 者処罰)に関し、何一つ言及がありません。この点で、今回の「合意」は致命的欠陥に冒されていると私は考えます。」 「ゆえに、残念ながら、日韓関係の棘であり続けてきたこの問題は、長期的にはまたもやさらにこじれることになるでしょう。」
さらに白井さんは、この「合意」の不均等性を指摘する。
「合意内容によれば、今後の日本政府の義務は、10億円を払えばそれで終わりになります。例えば、教科書検定等を通じて歴史教育を放棄(より正確にいえば「禁圧」である)しても、文句をつけ られるいわれはない、ということになった。他方韓国政府側は、「もう二度と蒸し返さない」ことを義務づけられた。特に難問は、ソウルの日本大使館前の慰安婦像の移動・撤去でしょう。支援者らがこれに抵抗すれば、強権的にやらざるを得なくなります。両国政府の負った義務の不均衡は明らかだと思います。
「合意」にはいいことがないわけではない、と白井さんはいう。一つは、安倍晋三氏が「国家の関与は証明されていない」といった類の妄言を二度と口にできなくなったことだ。
「このことは、この世の中から不快なことをほんの少しだけ取り除いてくれる。」
もう一つはアメリカとに関係がいっそうからさまになったことだ。白井氏は皮肉を込めて述べる。
「今回の『合』」形成の経緯から、『日本の歴史修正主義者が歴史を修正できる範囲は、アメリカが決める』という構図があらためて周知されたことかもしれません。自国の 歴史もアメリカ様から与えてもらう『愛国』」! この惨めな現状がさらされたことは、一つの前進かもしれません。」
◆インタビュー「慰安婦問題を貿易のように交渉すべきではない」
http://www.hani.co.kr/arti/international/america/724150.html
ダナンさんのインタビューはハンギョレ新聞電子版に12月30日に掲載された。インタビューでダナンさんは「歴史問題を貿易交渉にように扱うべきではない」と述べた後、慰安婦少女像の移転が取り上げられていることを「笑える話」だと一蹴。
ダナンさんは、「韓国を植民地化し、 支配するために積極的に関与していた人々の銅像が、日本の至る所にあるが、韓国政府がこれらを撤去するように求めたら、どうなるだろうか」と反問、「少女像は残酷さに曝された数多くの被害者を追悼するために韓国の市民団体が建てたもの」とし「(少女像の移転を)韓国政府が受け入れることも、日本政府が要求することも、あってはならない」と強調した。
さらにダデンさんは「被害者に『この程度でいい』と言うべ きではないという点を理解することが、本当に重要だ』」として、合意案が慰安婦被害者たちに受け入れられる内容でなければならないと強調した。
そうなって初めて「韓国だけではなく、中国や台湾、フィリピン、ミャンマー、オランダなど、日本帝国主義時代におけるすべての地域の被害者たちに、より生産的なものになるだろう」と、この問題の国愛的は広がりについて言及したことも注目される。
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