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2016年01月04日21時52分掲載
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文化
【核を詠う】(201) 『朝日歌壇2014』から原子力詠を読む(2) 「福島に手当求めて流れ着く作業員という我らも難民」 山崎芳彦
関西電力高浜原発3、4号機の再稼働について福井地裁が昨年4月に運転差止め仮処分決定の「樋口判決」が出されたのに対して、その8か月後の12月24日に、同裁判所(林潤裁判長)はその仮処分命令を取り消す決定を行い、政府・電力企業の意に添い高浜原発再稼働への道を開いた。関西電力は、その翌日には3号機への核燃料の装着を開始し、この1月下旬には運転を開始する予定だ。運転差し止め仮処分命令を発令した判断が、福島原発事故の教訓を真摯に受け止め、人びとの心を打つ内容だったのに対して、今回の「再稼働の結論ありき」といえる決定は、万が一にも高浜原発の重大事故が起きた場合の責任を自覚したものとはいえず、ただ政府と原子力規制委員会の「新規制基準に合格」を丸呑みした不当な決定である。そして、この決定を受けて関西電力が高浜原発で開始するのは、プルトニウムとウランを混合したMOX燃料を使用するプルサーマル発電であることに注目、警戒しなければならない。安倍政府が「国策」として推進しようとする核燃料サイクル事業の一環をなすものであり、まさに原子力エネルギー依存体制への回帰・逆走が始まる一歩である。
高浜原発3号機の原子炉に装着された核燃料は157体、そのうちMOX燃料は24体だが、新規制基準のもとでのプルサーマル発電の最初のケースになる。2月には再稼働する予定の同4号機もプルサーマル発電になる。MOX燃料を使用するプルサーマル発電については、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、ウランと混合した核燃料を製造、使用することで、プルトニウムの持つ特性の影響がもたらす様々な危険性が明らかにされている。すでに1997年には原子力資料情報室(当時の代表は故高木仁三郎氏)が主宰してフランス、ドイツ、イギリスの研究者と共同し設けた「国際MOX燃料評価プロジェクト」(IMA)の2年余をかけた研究の最終報告によって、そのことは詳細に指摘されている(日本語版報告書「MOX総合評価―IMAプロジェクト最終報告」 1998年刊)。そこでは、プルサーマルに関して、環境・健康面、安全保障の面、技術的安全性の面、経済性、社会的・法的側面、輸送の諸問題など包括的な角度からの検討結果から「MOXの軽水炉利用の推進にはなんの合理的な理由もなく、社会的な利点も見出せない。」し、その危険性についても国際的な経験を持踏まえ、また日本における原子力にかかわる実態を検討、考察をして明らかにしている。
その内容の詳細に触れることはできないが、IMAの検討を踏まえて高木仁三郎氏が岩波書店「科学」1998年1月号に発表した論文「プルトニウム軽水炉利用の中止を提言する―プルサーマルに関する評価報告」の「事故の危険性の増大」の項の一部を見ておきたい。 高木論文では、「ウラン燃料を燃焼するように設計された原子炉でMOXを燃焼するとなると、原子炉の運転や燃料加工、取り扱い上の安全性、燃料や使用済み燃料の管理や輸送、軍事転用や核拡散の防止、経済性など様々な面で、これまでにない社会的広がりをもって問題が発生しうる。」と指摘、さらに具体的にはプルトニウムの危険性によって引き起こされるプルサーマル発電(MOX燃料の使用)の事故の危険性の増大についての、メルトダウンの可能性が高くなる、制御棒の中性子吸収能力が落ち、原子炉の制御をより困難にする、原子炉に異常事態が起きた時に事態の収拾を困難にする可能性を否定できない、炉心構造物の脆弱化・・・などで安全上の余裕が小さくなることの指摘、また格納容器が機能を失うような過酷事故が起きた場合の被曝被害の深刻化、影響の地域的拡大、さらにMOX燃料サイクルが本格的に動き出した場合の各工程の危険度の増加、使用済みMOX燃料の放射性廃棄物の処理・管理の困難などについての指摘がある。ごく一部を筆者なりにまとめたので、不適切な部分があるだろうことを、お断りしておきたい。 それにしても、原発回帰の道を開く高浜原発がプルサーマル発電を前提に、政府・電力企業の後押しと、それに追随する福井地裁の今回の再稼働の「許可」につながる決定、そして福井県知事、高浜町長の再稼働同意を「かちとった」関西電力、それぞれは、極めて重大な犯罪的な暴挙に踏み切ったと言わざるを得ない。このあとも、伊方原発などプルサーマル発電の原発再稼働、さらには「フル・モックス」の大間原発の新設に向かう企みは許しがたいことである。
経済産業省は昨年6月に「核燃料サイクル事業の継続策を検討する作業部会」の設置を決め、7月には総合資源エネルギー調査会原子力小委員会の「原子力事業環境整備検討専門ワーキンググループ」で核燃サイクル事業を推進するための議論を開始していた。経産省は、原発回帰・核燃サイクルに向けて、国の関与を強め、使用済み核燃料再処理(使用済み燃料からプルトニウムとウランを取り出す)を担う日本原燃の運営形態の変更や、事業資金の確保策などについての検討を進めている。経産省が一昨年にまとめたエネルギー基本計画では、「福井県にある高速増殖原型炉『もんじゅ』での研究継続」、「青森県六ケ所村で日本原燃が進める再処理工場の稼働」、「プルトニウムを含むMOX燃料をふつうの原発で燃やすプルサーマル発電」が主要な柱になっているが、まずプルサーマル発電を先行推進しながら、国産MOX燃料製造のために不可欠な「再処理工場の稼働」(現在は海外委託)と「燃料工場でのプルトニウム・ウランの混合酸化物MOXの加工」へとの目論見がある。そのためにも、まず高浜原発のプルサーマル発電再稼働へと猛進したのであろう。「再処理工場の稼働」は日本が所有する国内外のプルトニウムが47トン(8キロで原爆が製造できる)にも達し、国際社会が警戒の眼をもって注目しているため、原発でプルトニウムを消費していく姿勢を見せることになるとする「アリバイづくり」、さらには自民党内部に連綿としてある「再処理技術・施設を持つことはいつでも核兵器を作れる能力を持つことで、欠かせない抑止力」とする「安全保障上の観点」など、複雑な背景もある。安倍政権のもと、原子力政策の危うさから眼をそらすことはできない。
安倍政権とその同調勢力は、福島原発事故を無かったことのように扱い、「フクシマ以前」の原子力・原発体制に戻すことをもって「福島の復興」としようとしている。福島原発事故の被災者に対する「強制」帰還対策、避難民切り捨て政策が進みつつある。通常国会から夏の参院選まで、安倍政権の逆流政治にストップをかける力を、主権者が構築していかなければならないと思う。
『朝日歌壇2014』の作品を読む前に、熟さない文章を書いてしまったが、前回に続いて原子力詠を読み続けたい。
◇5月5日◇ 放射能塗(まみ)れになりて肌出して戯れて笑ふて羅漢は御在す (佐佐木幸綱選 いわき市・馬目弘平)
大間(おおま)にて反原発の意志を継ぐ厚子さん待つ草餅作りて (佐佐木選 田辺市・石垣多鶴子)
それぞれのその日の派遣先見ればみな災害地ホワイトボード (永田和宏選 塩竈市・佐藤龍二)
◇5月12日◇ 仮設でも蕗のてんぷらおすそ分け戻れぬ里のならわし続く (佐佐木選 田村市・荒井正一)
東電テレビ会議の記録映像(ドキュメント)あのとき我は給水の列に (佐佐木選 福島市・井本昌夫)
原発に頼る小さき県庁に新卒の孫は税の職得し (佐佐木選 京都市・吉岡節雄)
例外に特例異例想定外誇りの九条蝕まれゆく (高野公彦選 松山市・宇和上 正)
原発の廃炉敷地の汚染水槽墓標の如く見えて悲しも (馬場あき子選 横浜市・寺口敏勝)
◇5月19日◇ 除染する熊手の上に降る花弁愛(め)でられず散る浪江の桜 (高野選 南相馬市・池田 実)
「しょうがない」は日本人の悪いくせ九条原発秘密保護法 (永田選 さいたま市・田中ひさし)
全村避難の村の桜はさみしかろしいんと咲いてしいんと散って (馬場選 福島市・美原凍子)
人生を二度生きてると留学の教え子の文字跳び跳ねている (馬場選 福島市・武藤恒雄)
どれくらい除染をすれば人は帰るだろう自問を胸に刈る浪江の草花 (佐佐木選 南相馬市・池田 実)
◇5月26日◇ はらはらと浪江の土手に舞う桜しばし忘れる胸の線量計 (永田選 南相馬市・池田 実)
原発が点で描かるる地図上に念のためなる同心の円 (佐佐木選 東金市・山本寒苦)
除染終え飯場へ帰る車窓にはガレキ踏みしめ睨む猪(しし)見ゆ (高野選 南相馬市・池田 実)
◇6月2日◇ 福島に手当求めて流れ着く作業員という我らも難民 (佐佐木選 南相馬市・池田 実)
ほろほろと木通の花のこぼれいて空き家はずっと空き家のまんま (永田選 福島市・美原凍子)
◇6月8日◇ また一人ましな現場を求め去る浪江の空の渡り鳥のごと (馬場選 南相馬市・池田 実)
遊漁船か小舟一艘帰り来ぬ五月の海を原発を背に (馬場選 福井県・大谷静子)
◇6月16日◇ 原発を逃れ来し人桜島の陽を消すほどの火山灰(よな)を楽しむ (高野選 西之表島・島田紘一)
本当に心配なことは知らされないそれすら知らず送る毎日 (永田選 上田市・笠原幸子)
「吉田調書」やはりてんでんこ逃げていた危険感じたその場にいた人 (佐佐木選 盛岡市・堀米公子)
衝撃の吉田調書が明らかに特報なくば未だ知られず (佐佐木選 千葉市・鈴木一成)
福島に住むなは天の声として他に住む人の永遠のご無事を (佐佐木選 福島市・山田 毅)
わが首長らは避難者側と対座する国の職員の横に並びて (佐佐木選 田村市・久住秀司)
巨き輪を内から外(と)へと越せばまた同心円の続く福島 (佐佐木選 福島市・青木崇郎)
使用済み燃料棒は釜の外プールで白む「五重の防御」 (佐佐木選 宇部市・崎田修平)
◇6月23日◇ 三百坪の土地と六十五坪の家を捨てて惜しみ離れつわが福島を (佐佐木選 国立市・半杭螢子)
よどみなくアベノミクスと唱え居り休耕田は汚染土の山 (佐佐木選 福島県・山崎 圭)
◇6月30日◇ 原発に囲まれて逃げ道なき小浜UPZとなるも方策はなし (高野選 小浜市・田所芳子)
◇7月6日◇ 原発の映らぬ日々なりテレビには民を守ると総理は映る (佐佐木選 本宮市・廣川秋男)
◇7月14日◇ 清志郎生きていたならどう叫ぶ原発輸出解釈改憲 (佐佐木選 青森県・中村範彦)
原発のせいとは誰も言わないで目立たぬように住む人は減る (佐佐木選 浜松市・桑原元義)
◇7月21日◇ 少年の「僕は大人になれますか?」原発事故のあの時の声 (馬場選 横浜市・田口二千陸)
相馬港初漁に出る息子の手高く揚げて祝福する父 (馬場選 相馬市・木幡幸子)
病院も学校もスーパーも2キロ圏 原子力空母街に食い込む (高野選 横須賀市・梅田悦子)
◇7月28日◇ 原発も戦争(いくさ)も許すこの国を知らで園児ら七夕飾る (高野選 大分市・児玉 直)
◇8月4日◇ 線量を忘れかけてた三年目除染作業の通知が届く (永田選 福島市・稲村忠衛)
瓦礫とは地球の欠片うれしくもかなしくもなくそこにあるだけ (永田選 大船渡市・桃 心 地)
◇8月10日◇ 終戦がせめて十日早かりせばと詮なき嘆き夏がまた来ぬ (永田選 志摩市・九鬼英夫)
大き根を宙に突き上げ炭になりし国泰寺の楠悼む原爆忌 (馬場選 水戸市・中原千絵子)
どっかーんと爆発をしたそのあとじゃ遅いのだけど再稼働する (佐佐木選 小平市・萩原慎一郎)
◇8月25日◇ 原爆に逝きし父の忌めぐり来も墓参叶はずホームに病む身 (馬場選 徳島市・磯野富香)
ほとんどが卒寿を越えた証言者被爆六十九年の今 (馬場選 長野市・祢津信子)
烈日のなか八月の貨車が来る過去の闇乗せ重き貨車来る (佐佐木選 福島市・美原凍子)
整然と一万千七百五十の椅子並ぶ平和記念公園雨降り続く (佐佐木選 札幌市・藤林正則)
乗り組みし人みな鬼籍に入りてなおエノラゲイの名消ゆることなし (高野選 岐阜県・野原 武)
次回も『朝日歌壇2014』を読む。 (つづく)
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