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2016年04月02日10時23分掲載
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東日本大震災
福島県郡山市で「2016原発のない福島を! 県民大集会」開催
東日本大震災をきっかけとする東京電力福島第一原発事故から5年が経過した。しかし、今なお放射能汚染の影響で多くの福島県民が避難生活を強いられ、故郷への帰還がままならない状況が続いている。 また、福島第一原発の廃炉に向けた作業は、様々なトラブルが相次いで発生しており、ロードマップに基づいた作業が工程どおりに進んでいるとは言えない状況だ。 このような中、福島県郡山市の開成山陸上競技場で3月12日、「2016原発のない福島を!県民大集会」が開催され、福島県内外そして海外から約6,000人(主催者発表)の参加者が集まった。
★ ★ ★
<原発の無い福島県を実現させよう>
県民大集会の実行委員長を務めた福島県平和フォーラム代表の角田政志さんは、開会に当たって挨拶し、福島県の現実が人々の記憶から薄れて関心の低下が進む中、県民大集会に参加した人たちの意思を結集して原発の無い福島県を実現させようと訴えた。 「原発震災から5年が経過した今も10万人近い福島県民が避難生活を余儀なくされており、極めて深刻な状況です。一方で各被災自治体は、故郷の復興と住民帰還に向けて除染やインフラ整備を進めています。しかし、住民一人一人が様々な課題を抱えており、すぐに帰還できる状況にはありません。また、風評被害は現在も深刻で、農業・漁業・林業・観光に携わる人々は、失われた信用を取り戻す努力を一生懸命進めています」
「事故後の福島第一原発は、汚染水処理の問題が解決できず、事故収束には程遠い状態です。また、廃炉については燃料デブリがどのようになっているのか分からず、そのため作業の見通しも立っていません。原発事故によって奪われた平穏な生活を取り戻すことができない現状を顧みず、さらに過酷事故の原因も解明されない中で、国や電力会社は川内原発、高浜原発の再稼働に踏み切り、さらに他の原発の再稼働も進めようとしています。私たちは福島県の現実を置き去りにした原発再稼働を許すことはできません」
「私たちは、二度と福島の苦しみを起こさないために、福島第一原発事故の責任を認めさせ、日本の原子力政策の見直しを求めていきます。さらに福島県民の共通要求として、国と東京電力に対し、福島第二原発の廃炉を強く求めていきます。そして実行委員会では、福島第一原発事故から6年目となる今年、福島第二原発の廃炉を求めるためのアクションを起こしたいと考えています。具体的には、福島第二原発の廃炉を求める署名運動を進め、それをもって国及び東京電力に要請行動を行います」
<原発は人類と共存できない!>
次に、さようなら原発1000万人署名市民の会呼びかけ人で作家の鎌田慧さんが連帯挨拶を行った。 「今、福島県では毎日苦しい生活を続けている県民がいます。農業・漁業・林業から切り離された人たち、働く環境から切り離された人たち、逃げ惑っている人たち、そして甲状腺がんに怯えている子供たち、こういう人たちの犠牲があり、そして、福島第一原発事故の教訓を考えた時、原発を再稼働してはいけない、廃炉に向かって進んでいくべきなのです。これまで私たちは“脱原発”を目指して来ましたが、今、時代の転機が来ているのだと思います。“カネ、利益、利潤、儲け”といったことが最大の価値観という考え方を創造力や理性で排除し、原発は人類と共存できないということを、この県民大集会で示していきましょう」
<福島県内外からの訴え>
続いて、反核・反原発運動に関わる福島県内外の方々が壇上に上がり、原発事故に対する思いやそれぞれの取組について語った。
「福島第一原発事故の真実と責任追及のため、2012年3月、“福島原発告訴団”を結成し、さらに2016年1月には“福島原発刑事訴訟支援団”を発足させました。今後行われる刑事裁判によって、隠された真実がさらに明らかになることを期待するとともに、長く掛かるであろう裁判をしっかり見つめていきたいと考えています。裁判は法廷内だけで行われるものではなく、多くの人たちの関心が公正で開かれた裁判を作っていくのだと思います。ですから、多くの市民の力で今後の公正な裁判を支えていきましょう」 「2015年5月には、“原発事故被害者団体連絡会”(略称:被団連)を結成しました。『謝れ、償え、補償せよ』をスローガンとし、被害者たちが結集したのです。被害者たちが力を合わせ、一日も早く、ささやかな暮らしと幸せを取り戻せるように、東京電力や国と闘い、自治体に働きかけています」 「私たち被害者には福島第一原発事故の真実を知る権利があります。私たちと同じ悲劇を誰にも体験させない責任があります。そして、私たちは原発社会に終止符を打たなければなりません。今、どうしたら原発を無くし、あらゆる生命が尊重される世界を作っていけるかが問われています」(ハイロアクション福島・武藤類子さん)
「浪江町津島地区は決して経済的に恵まれたところではありませんが、地域社会の中で平穏な生活を送ることが住民にとっての生き甲斐であり、楽しみ、喜びでした。福島第一原発事故から5年が経過しますが、浪江町津島地区を始め帰還困難区域は未だに明確な方針を示されておらず、放置されたままになっています。この未曾有の原発事故を引き起こした責任を取り、被害回復を求め、二度と同じ事態を引き起こさせないため、私たちは2015年5月、“福島原発事故津島被害者原告団”を結成し提訴に踏み切りました。国と東京電力の責任を問い、そして故郷の原状回復と私たちの被害回復を求めることは、私たちが人間としての尊厳を回復することだと思っています」(福島原発事故津島被害者原告団団長・今野秀則さん)
「避難生活によって、一緒に住んでいた家族が別々に生活するという状況が続いています。ある家族は、夫が仕事のために一人暮らし、妻と子供は放射能の不安から他の地域に避難しています。また別の家族は、若い夫婦家族が仕事の関係で浜通りに戻り、高齢者夫婦が避難先に取り残されたままになっています。私自身も家族と離れ離れの生活となっており、私は仕事の都合で会津若松市に一人暮らし、家族は他県での生活が続いています。先の見えない避難生活により、『もう大熊町には帰らない』と決めて、避難先で新たな生活を再建している人が増えています。福島第一原発事故により住み慣れた土地を奪われ、地域の人間関係を壊され、家族も壊されました。今までの“当たり前”を全て失ってしまいました。このような過ちが二度と繰り返されてはなりません」(大熊町住民・愛場学さん)
「私は、戦争に関する報道を見るたびに『兵器開発に要する費用を貧困対策に使うことができたら、世界中から貧困が無くなり、全ての子供たちが勉強出来るようになるかもしれない』と思い、高校生平和大使への就任を希望しました。第18代高校生平和大使の活動を通じて一番大きな体験は、昨年8月、国連欧州本部があるスイス・ジュネーブに行った時のことです。ここで多くの方から『福島の方々が安心して暮らせる日を願っています』『一緒に頑張りましょう』などの応援メッセージをいただいたほか、『どんなことがあっても、自分の思いを大切にして活動してほしい』と言われました」 「福島第一原発事故に関しては、以前に比べて報道が少なくなっていると感じており、福島県でそのように感じるということは、全国ではもっと報道が少なくなっているのだろうと思います。『このままでは福島第一原発事故の記憶が薄れていってしまうのではないか』と思ってしまいます。福島第一原発事故のことを忘れないため、原発事故を経験した福島県に住む私たちが、福島県の現状を多くの人たちに伝えていかなければならないと思います。私は高校生平和大使として、これからも世界平和と核兵器廃絶を訴えていくとともに、福島県の今、そしてこれからについて、私自身の言葉で発信していきたいと思います」(第18代高校生平和大使・鈴木愛望さん)
「1970年代、鹿児島県奄美群島徳之島で核燃料再処理工場建設計画が持ち上がった時、4万5000人の島民は一丸となり、これを跳ね返しました。その集会の宣言文には、『この島に放射能の恐ろしさを知らない無知蒙昧な人はいない。先祖から受け継がれた土地や森、海をお金で売り渡すような拝金主義者はいない。権力の脅しにたやすく屈するような臆病者はいない』とあり、私たちはこの言葉を何度も繰り返しながら、川内原発再稼働阻止の闘いを続けて来ました。何としても川内原発を廃炉に追い込み、そして日本中の原発を廃炉に追い込むために連帯していきたいと思います」(ストップ川内原発!鹿児島県実行委員会事務局長・向原祥隆さん)
<“無関心=悪”である>
最後に、集会呼びかけ人の一人であるアウシュビッツ平和博物館館長の小渕真理さんは、閉会挨拶の中で、“無関心=悪”であることを訴えて集会を締めくくった。 「作家でノーベル平和賞を受賞したエリ・ヴィーゼルさんは、国連総会での演説で『アウシュビッツ強制収容所での生活を経験した人間として、我々は無関心ではならない。無関心は常に加害者を助けるものだ』と述べました。関心を持つことは誰にでも出来ます。原発を無くすことに関心を持ち続けて声を上げ、そして5年の節目に今一度気持ちを引き締め直し、さらなる5年を目指しましょう」
★ ★ ★
県民大集会終了後、実行委員長の角田政志さん(福島県平和フォーラム代表)に感想を伺った。
――県民大集会を郡山市で開催するに至った経緯をお聞かせください。
(角田)今回の県民大集会は、福島第一原発事故から5年という節目を迎えるため、実行委員会では何とかして福島県沿岸部の被災地で開催できないかと検討し、当初、南相馬市を開催候補地に選定しました。 昨年夏頃まで、地元の平和フォーラムや自治労などと何度も協議を重ねる中、桜井勝延・南相馬市長からも「是非、南相馬市で開催してほしい」と賛同の声が寄せられていましたが、地元の自治労など実行部隊を担う方たちからは「復興業務で手一杯の状態であり、とても県民大集会の準備作業まで手が回るような状況ではない」という悲鳴に近い声が寄せられ続けました。しかし、実行委員会としてもなかなか諦めきれず、福島市方面から人員を派遣することを提案するなど、ぎりぎりまで協議を続けたのですが、最終的に断念することになりました。 その後、同じく沿岸部のいわき市を候補地として検討を進めましたが、いわき市では会場確保の目処が立たなかったために諦め、最終的に郡山市での開催に至った次第です。
――県民大集会では、角田実行委員長が「福島第二原発廃炉のため、署名運動を進めて行く」と発言されましたが、この意図を教えてください。
(角田)私は元々、県民大集会において“福島第二原発廃炉”を前面に押し出そうと考えていました。しかし、実行委員会で協議を進めて行く中、「単に県民大集会での訴えにとどめるのではなく、運動として取り組むことも必要なのではないか」といった意見が上がり、協議を深めていった結果、県民大集会の場で署名運動に向けた取組方針を発表した次第です。 今後は署名目標を設定するとともに、賛同団体を募り、署名運動への取り組みを本格化させて行く予定です。今年の夏頃には署名運動を開始し、来年開催の県民大集会で集約した署名数の結果を報告した上で、国や東京電力に対して要請行動を行いたいと考えています。
――発言者の中には、福島県外で原発再稼働反対運動に携わっている方もいらっしゃいましたが、彼らを招待したのは、どういった意図があったのでしょうか。
(角田)国や電力会社は、福島県の原発被害を顧みずに原発再稼働を進め、川内原発、高浜原発を再稼働しました。私たちとしては、こういった現状を無視しておく訳にはいかないということから、今後の対策を考えるために、再稼働された川内原発を抱える鹿児島県で運動を続ける“ストップ川内原発!鹿児島県実行委員会”の向原祥隆事務局長に運動の現状を語ってもらうことにしました。 また、他県で原発反対運動に関わっている方たちに福島の現状を見てもらい、『原発を再稼働すれば、いずれ福島県と同じような状況が他の原発立地県でも起きかねない』ということを再認識してもらいたいとの考えもありました。
――今後、実行委員会が原発問題に対する運動を続けていくに当たっての決意をお聞かせください。
(角田)原発の安全神話は福島第一原発事故によって崩壊していますので、まずは福島県から全原発を無くしていくことを目標にしていきます。 そして、子供の健康被害の問題があります。この問題をどのように評価するかには触れませんが、甲状腺がんを発症している子供たちがいることは事実ですので、国などに対して治療を含むしっかりとした対策を取ってもらいたいと要請していきます。 それから、住民帰還をどのように見るかという問題もあります。帰還したい住民の立場、帰還を望まない住民の立場、復興を進める自治体の立場など、どの立場に立つかによって見方が変わってきます。私たちとしては、福島県に住み続けるという考えを原点に、同時に放射能の問題が存在することもしっかり捉えつつ、帰還の問題を考えていかなければならないと思っています。
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屋外で開催された県民大集会は、晴天に恵まれたものの、時折吹く寒風が筆者の身には堪えた。寒さに震えながら、いろんな意味で福島への春の訪れが遠く感じた。(館山守)
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