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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2016年05月26日23時35分掲載
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国際
合意に基づくセックスワークの非犯罪化を アムネスティがセックスワーカーの権利保護に関する方針と調査結果を公表
「客が悪いやつでも、最後まで自分で何とかしなくちゃならない。警察を呼ぶのは死にそうなときだけよ。警察を呼んだら一巻の終わりだからね」(ノルウェーのセックスワーカー)。5月26日、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、人権侵害と虐待からセックスワーカーを守るための方針を公表した。そしてこの問題に関する、パプアニューギニア、香港、ノルウェー、アルゼンチンにおける調査報告書を、同時に公開した。(アムネスティ国際ニュース)
セックスワーカーは、強かん、暴力、ゆすり、差別などあらゆる種類の人権侵害を受ける危険がきわめて高い。そして法の保護や救済策はほとんどあるいはまったく受けられないことが、あまりにも多い。
アムネスティの方針は、セックスワークに携わる人びとを人権侵害から守るために、各国政府が今後なすべきことの要点を記している。また調査報告書は、セックスワーカーたちの証言や彼らが日々直面している問題を明らかにしている。
◆方針
アムネスティの方針は、2年以上にわたって行ってきた世界各地での各種団体との協議、検証済みの証拠、国際人権基準の慎重な検討、そして直接調査の集大成である。
この方針の正式採択と発表は、2015年8月のアムネスティの世界大会での民主的決議に基づくものである。決議は、当時各国でメディアに取り上げられた。
方針は各国政府に対していくつかの点を要請している。例えば、危害、搾取、強要などからセックスワーカーを守る対策をとること、自分たちの生活と安全に関わる施策の立法化を目指す取り組みにセックスワーカーを参画させること、差別の撤廃とすべての人びとに教育と雇用の機会を提供することなどである。
またこの方針では、合意に基づくセックスワークの非犯罪化を勧告している。買春、客引き、一般的なセックスワークの組織化など、関連行為を禁ずる法律も対象に含む。このような法律はかえってセックスワーカーの安全を脅かし、彼らを利用し虐待する側の不処罰を招いていることが、証拠で明らかになっている。セックスワーカーが、罰せられることを恐れて犯罪被害を警察に報告できない場合が多いためである。したがってセックスワークに関する法律は、もっぱら搾取と虐待から人々を守ることに焦点を当てるべきで、すべてのセックスワークを禁止し、セックスワーカーを処罰するものであってはならない。
アムネスティは、強制労働、子どもの性的搾取、人身売買は憎むべき人権侵害であり、国際法に則ってすべての国で犯罪とされるべきで、その撲滅には総合的に取り組むことが必要だという立場をとる。今回の方針は、その立場を強めるものである。
法律は、セックスワーカーが安全に生活し、警察との関係を改善する一方で、搾取という問題の本質にあらためて対処するものであってほしい。各国政府には、誰も売春を強要されず、希望すればいつでもセックスワークを離れることができるよう、対策を講じることを望む。
◆調査
アムネスティはこの方針の策定にあたり、4地域に関する報告を含む広範な調査を行ってきた。これらの調査で、セックスワーカーは恐るべき人権侵害の犠牲者となっている場合が多いことがわかった。これはひとつにはセックスワークそのものが犯罪とされているためで、その結果彼らはかえって危険にさらされ、周縁化され、暴力から自身を守ること、法的、社会的サービスを求めることができない。
セックスワーカーらの話によると、セックスワークが犯罪扱いされるため、警察は彼らに嫌がらせをするばかりでセックスワーカーの苦情や安全に配慮することなどないという。
多くの国で、警察などの取り締り当局は、セックスワーカーを暴力や犯罪から守ることより、監視や嫌がらせ、強制捜査などでセックスワークを禁止することに熱心である。
アムネスティの調査によれば、売春行為自体が合法である国でさえ、セックスワーカーが虐待からの保護や法的救済を受けることは、まったくあるいはほとんどない。
【パプアニューギニア】
パプアニューギニアでは、セックスワークの稼ぎに依存したり、性を商売とする組織を作ったりすることは違法である。同性愛も犯罪であり、男性のセックスワーカーを起訴する場合の主な根拠となっている。
アムネスティの調査で、こうした刑法が、警察によるセックスワーカーへの脅しやゆすり、恣意的拘束を許している背景にあることがわかった。
パプアニューギニアのセックスワーカーは、激しい蔑視、差別、暴力をうけている。強かんや殺人の被害も受けている。2010年に大学の研究者らが行った調査によると、首都ポートモレスビーでは、6カ月間に顧客や警察に強かんされたセックスワーカーは50%だったという。
警察や顧客らによる強かんや性的虐待を受けても、セックスワークそのものが違法と見なされているため、被害届を出すことができないという悲痛な証言もあった。
ホームレスのセックスワーカー、モナは次のように語った。「警察は私の友だち(客)と私を殴り始めた……6人の警官が一人ひとり私にセックスしたの。奴らは銃を携帯しているから言うことを聞くしかなかった。裁判所に訴え出ようにも誰も頼る人はいないし。とても辛かったけれどどうしようもなかった。売春は法律違反なので誰も助けてくれない」
セックスワーカーは病気をまきちらす元凶として差別され非難される場合が多いが、警察はセックスワーカーに不利な証拠としてコンドームを使う。このためセックスワーカーの多くは、HIV/AIDSをはじめ、性と生殖に関する情報やサービスを得ることをためらってしまう。
セックスワーカーの女性メアリーによれば、「警察が私たちを捕まえたり取り締まる時にコンドームを見つけると、売春を広めているとかエイズみたいな病気をまきちらしているのはお前たちだとか口汚く罵る。脅しをかけ、お金を要求する。払わないと手荒に扱われるので、怖くて払うしかない」。
【香港】
香港では、個人がプライベートな部屋で行うことであれば、売春は違法ではない。しかし、隔離された場所での行為であるためセックスワーカーは無力な立場に置かれ、強盗や暴行、強かんなどを受けやすくなる。
セックスワーカーのクイーンは、「客引きの罪に問われるのが怖くて、強かんなどの被害を訴え出たことはない」と語る。
香港のセックスワーカーは、警察の保護を受けられないばかりか、警察の標的になることもあるという。
アムネスティの調査によれば、警察官は権力を乱用し、おとり捜査やゆすり、強要でセックスワーカーの犯罪をでっちあげ、処罰することが多い。覆面警官は、証拠をつかむためにセックスワーカーから一定の性的サービスを受けることが認められている。また警察や警察を自称する個人が、「金銭を渡すかセックスをタダでさせれば法的制裁を見逃しやる」と言い寄るという証言もあった。
トランスジェンダーのセックスワーカー対しては、警察の扱いがとりわけ手ひどいことが多く、トランスジェンダーの女性に男性警官が極めて屈辱的な全身の身体検査を行うケースも多い。
香港でトランスジェンダーのセックスワーカーの支援する弁護士は、「さんざん体を触ったり、からかったりですよ」と言っている。
トランスジェンダーの女性のセックスワーカーは逮捕後、男性用の拘置施設や精神疾患の囚人用の特別房に送られることもあるという。
【ノルウェー】
ノルウェーでは、買春行為は違法だが売春そのものは違法ではない。一方、「セックスワークの促進」やその施設の賃貸など関連行為は、犯罪とされている。
顧客や組織犯罪による強かんや暴力は多発しているにもかかわらず、セックスワーカーが警察に被害を通報するには高い壁がある。
「ある男の家に行ったら、その男に2回顎を拳固で殴られた。でも警察には言わなかった。記録が残ると困るから」とあるセックスワーカーは語った。
またセックスワーカーが警察に暴力被害を訴え出ると、警察と関わったばかりに家から立ち退かされたり国外追放されたりすることがあるようだ。
法律では、セックスワーク行為があった場合、その場所を貸した家主が訴えられる可能性があるため、セックスワーカーは強制的に立ち退かされる恐れがある。
セックスワーカーの人権団体の代表は、次のように説明している。「家主が立ち退きをさせないと、警察が家主を容疑者として立件する。警察は、家主が法律を利用してセックスワーカーを立ち退かせるように仕向けている
またセックスワークの当事者は、身を守るために互いに協力したり、ガードマンのような第三者の警護を頼むこともできない。こうしたことは同国の法律では「セックスワークの促進」と見なされかねないからだ。
【ブエノスアイレス(アルゼンチン)】
ブエノスアイレスでは、公式には売買春は違法ではない。しかし実際には、関連する行為を処罰するさまざまな法規があり、またこうした法律では合意の上でのセックスワークと人身売買を区別できないため、セックスワーカーは犯罪者とされてしまう。
同地でもセックスワーカーが警察に暴力を訴える上でのハードルは高いことが、調査で明らかになっている。
「相手(客)が金を払い、私が車を降りようとしたら、いきなり首を掴まれてナイフで切り付けられた。それで有り金全部と携帯電話を渡してやっとの思いで逃げることができた
路上で客引きをするローラは、時間の無駄だと思ったため、警察には暴力も盗みも訴え出なかったという。「ストリートワーカーの言うことなんか聞いてはくれないから」
セックスワーカーは路上で手当たり次第に警察から呼び止められ、繰り返し罰金をとられたり監察処分にあったりする。ブエノスアイレスでは、公衆の面前でセックスワークにまつわるやりとりを取り締まる場合、警察や検察が個人の外見や服装や態度を見て取り締まることは違法となっている。しかし実際にはこうした見た目の判断は頻繁に行われており、特にトランスジェンダーのセックスワーカーは格好の標的にされている。
個人宅で仕事をするセックスワーカーは、警察による長時間の手荒な点検や捜査、さらにはゆすりや賄賂の要求を受けることも多い。
またセックスワーカーは、甚だしい蔑視や差別にさらされ、とくに医療サービスを受けるうえで困難があるという。
トランスジェンダーである元セックスワーカーは、「病院に行けば笑いものにされ、医者の診察はいつも後回しなので、まともな医療は受けたことがない」と話した。
このため徹底して医療サービスを避けるセックスワーカーもいる。
◆虐待は正当化できない
世界中いたるところで、セックスワーカーは法的保護を受けられず、過酷な人権侵害に苦しんでいる。この状況は決して正当化できるものではない。各国政府は、セックスワーカーを含めすべての人びとの人権を守るよう行動しなければならない。非犯罪化は、危害、搾取、強要を防ぐために政府がとるべき必要な措置のうち、ほんの一つにすぎない。
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