アメリカ・フロリダ州で12日、ゲイ(同性愛者)が集うクラブに銃などをもって乱射に及んだ事件が世界を揺るがしている。報道では死者50人、負傷者53人と報じられ、単独犯としては全米テロ史上最大の事件とされている。犯人のオマル・マティーン(29)はその背景などは不明な点が多く、今後の調査が待たれるが、犯行に及ぶ直前に市当局にイスラム国への忠誠を誓って行動を起こす旨の連絡を入れていたという。
今、欧米メディアでこれに関連して報じられているのがオーランド市に3月頃、説教に訪れた英国のイスラム原理主義の指導者、Farrokh Sekaleshfar師である。Sekaleshfar師の自説はゲイを殺すことはよいことで、ゲイへのcompassion(思いやり)である。というのは殺されることで罪から解き放たれるからであり、殺した人間は殺人の罪に問われることはないと語っているとされる。ただし、これはイスラム教徒の国の話である、という風に限定していたようだ。
Sekaleshfar師はアメリカをこれまでにも複数回、説教に訪れているとされ、またオーランド市の説教のあとはオーストラリアのシドニーを訪れたという。
Sekaleshfar師の話を聞いて思い出すのは坂本弁護士一家虐殺事件や地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教の麻原彰晃死刑囚のことだろう。オウム真理教の教義から見て、罪を犯している人間を殺すのはその人間を死後に再びよい人間に生まれ変わらせることにつながるよいことであると解き、それを「ポア」と命名していた。麻原死刑囚は1990年に衆院議員選挙に立候補しており、宗教家でありながら政治家にもなろうとしたが、この時は落選した。
このように日本で宗教指導者がある背教者に対して死刑宣告する場合、当然ながら三権分立に沿った逮捕の要件、裁判を受ける権利、罪刑法定主義などとは異なる原理に基づいている。そして、その宗教を信じていない人間にとってこのような判断は不公平であり、傲慢でもある。
宗教指導者が政治を行うイスラム国ではゲイが建物の屋上から突き落とされるなど死刑が見せしめに行われている。宗教と政治が結びつくと、教義に反する人間は死刑の対象に簡単になる。欧米ではいち早く政教分離を原則として、キリスト教会が政治に介入することを阻止する制度を構築した。しかし、アメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領のように、キリスト教原理主義者が大統領になるとイスラム教徒のいる中東に軍隊を派遣することに躊躇しなくなる傾向があり、そのブッシュ大統領を支持していたのはキリスト教原理主義者たちだった。そしてイスラム国が殺人した数の何十倍もの現地の民間人を結果的に殺している。
今、日本でも創価学会や神道政治連盟などの活動が盛んになっており、宗教と政治を分けた政教分離の原則が損なわれつつある。これらの議員が多数属する与党が原発や武器の販売を促進している。戦時中の国家神道はアジアで2000万人の死者を招いた。いずれの宗教にも共通しているのは戦闘員が死後に天国に行けると約束していることである。戦争の人殺しと宗教は密接に結びついているのだ。
■Cleric who preached death for homosexual acts and toured Orlando visits Sydney
http://www.theguardian.com/us-news/2016/jun/13/orlando-terror-attacks-muslim-cleric-death-for-homosexual-acts-sydney
■Orlando shooting: gay death cleric Farrokh Sekaleshfar preaching in Sydney
http://www.theaustralian.com.au/news/nation/orlando-shooting-gay-death-cleric-preaching-in-sydney/news-story/5ff7a1f4784b0ea0b3fc2d6c4e806bd6
■Islamic cleric Farrokh Sekaleshfar leaves Australia after anti-gay comment controversy
http://www.abc.net.au/news/2016-06-14/cleric-set-to-leave-australia-after-anti-gay-comment-controversy/7509358
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