アフリカでは、南アフリカ以外でのGMトウモロコシの導入も進んでいない。そんな「停滞状況」の中、デュポン・パイオニアは米国国際開発庁(USAID)とともに現地政府と協定を結び、GM作物のような規制のない、トウモロコシのハイブリッド品種の導入プログラムを進めている。フリカで遺伝子組み換え(GM)作物が大規模に栽培されているのは、南アフリカとスーダン、ブルキナファソの3カ国。中でもGMトウモロコシは、南アフリカでしか商業栽培されていない。(有機農業ニュースクリップ)
一大雑種であるハイブリッドは、種子を毎年購入しなければならない。また、高い収量を上げるためには化学肥料や農薬を前提としている。デュポン・パイオニアのハイブリッド種子導入プログラムは、ハイブリッド種子を毎年購入させ、あわせて化学肥料や農薬も購入させることになり、農民をデュポン・パイオニアなど農薬・種子企業への依存を強めることになる。
2013年1月、エチオピア農業省と、米国国際開発庁、デュポン・パイオニアの3者によるハイブリッド種子導入のための協力協定が結ばれた。エチオピアでは、200万ヘクタールで栽培されるトウモロコシの収量は低く、ヘクタール当り2トンにとどまっている。トウモロコシの収量増加を目的とした協力協定は、米国国際開発庁が230万ドルを拠出し、パイオニアのハイブリッド種子を導入、配布しようというもの。3万5千人の農民の生産性の50%アップ、収穫後のロスの20%削減、収入の20%増が目的としている。さらに、訓練施設やデモンストレーション施設などに100万ドルを追加投資するとしている。
・USAID, 2014-10 Ethiopia Maize Public-Private Partnership Advances Hybrid Seed Adoption and Increase Farmer Incomes https://www.usaid.gov/sites/default/files/documents/1860/Dupont%20AGP%20AMDe%20Hybrid%20Maize%20Fact%20Sheet.pdf
ブルームバーグによれば、この協定の実施により、エチオピアではすでに30万ヘクタールでハイブリッド品種が作付されているという。
デュポン・パイオニアは、このプログラムをザンビアやタンザニアでも展開しようとしている。今年2月、ザンビアとは進展があったという。デュポン・パイオニアはまた、17年2月からのタンザニアでのプログラムの実施を望んでいるという。
・Bloomberg, 2016-8-8 DuPont Aims to Roll Out Hybrid Corn Seed Program in Tanzania http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-08-08/dupont-aims-to-roll-out-hybrid-corn-seed-program-in-tanzania
アフリカでは、3500万ヘクタールでトウモロコシが栽培されているが、収量は、平均してヘクタール当たり2トン未満にとどまっているという。デュポンは、今後2、30年で、収量を2倍にすることが十分に可能だという。
FAOによれば、アフリカは2014年、7760万トンのトウモロコシを生産。過去10年、GM品種を導入した南アのトウモロコシ収量は、ヘクタール当たりの平均で2.53トンから4.84トンで変動しているという。西ヨーロッパでは平均5.4トンであり、ほとんどがGM品種となった米国では7トンにまで達しているとしている。
・Bloomberg, 2016-8-8 DuPont’s Bajwa Says Africa Could More Than Double Corn Yields
http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-08-08/dupont-s-bajwa-says-africa-could-more-than-double-corn-yields
デュポンの種子部門であるパイオニアは2013年、南アフリカの種苗会社パナー社を買収し傘下に納め、パイオニアとパナーの2つのブランドで種子を販売している。バナー社の買収には、南アの種子業界の寡占化を進めるとして、強い反対があった。
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