2005年以来、遺伝子組み換え作物(GM)栽培を一時的に禁止しているスイスは、インドにおけるバイオテクノロジー開発の援助に約5億円を拠出している。その資金が、キマメとキャッサバの害虫抵抗性GM品種開発にも使われているとスイス・インフォが報じている。援助資金の一部が、モンサントが26%の資本参加しているマヒコ社に流れているという。GM作物の商業栽培を禁止しているスイスが、GM作物開発に資金援助することは倫理的に正しいのか、とスイス・インフォは疑問を投げかけている。(有機農業ニュースクリップ)
スイス政府は、2017年までの禁止期間を2021年までの延長を決めている。スイス・インフォの指摘のように、自らは禁止を続けながら、援助している先ではGM作物開発を行うのは矛盾している。
スイスによるインドのバイオテクノロジー開発への援助は1999年に始まった。スイス開発協力庁(SDC)によれば、これまでに約1500万スイスフラン(約15億円)が投入されたという。2013年から2016年にかけての第4期の予算規模は、480万スイスフラン(約5億円)だという。
インドで有機農業による農業開発支援を展開しているNGOのスイス・エイド(Swissaid)は、スイス開発庁によるGM承認の姿勢を批判し、「人びとの健康や気候変動に対抗するには、小農民にとって有機農業は最高の選択肢」だと述べている。
・swissinfo, 2016-7-26 Swiss aid money used for GMO research in India http://www.swissinfo.ch/eng/society/transgenic-crops_swiss-aid-money-used-for-gmo-research-in-india/42316864
・Indo-Swiss Collaboration in Biotechnology ISCB Funding http://iscb.epfl.ch/funding
インドが商業栽培を承認しているのは、食用ではないGM綿だけである。インドにおける食用GM作物の商業栽培は進んでいない。インド政府は2010年、農民などの反対により害虫抵抗性(Bt)ナスの商業栽培を断念した。2014年5月の総選挙で勝利したインド人民党のモディ政権は、食用の遺伝子組み換え作物栽培に積極的な姿勢をみせてきた。インド遺伝子工学評価委員会(GEAC)は、米やトウモロコシ、サトウキビ、ナス、ジャガイモ、マスタードのような、いろいろな遺伝子組み換えによる食用作物の試験栽培を承認しているという。
インドでは現在、デリー大学の開発した除草剤耐性GMマスタードの商業栽培の承認が焦点化している。インドの主要なマスタード栽培地域でもあるパンジャブ州の有機農民などは、商業栽培へ向けて手続きが進むGMマスタードに反対し抗議行動を展開している。インドの主要なマスタード栽培地域は。GMマスタードに反対しているという。
※マヒコ社 Mahyco:Maharashtra Hybrid Seed Company
【関連記事】 ・No.724 インド:GM綿の作付が減少 非GM品種や転作へ http://organic-newsclip.info/log/2016/16080724-1.html
■栽培禁止を21年まで延長を決めたスイス GM作物はオプションの一つ
スイスは2005年、国民投票で遺伝子組み換え作物栽培の5年間の禁止を決めた。その後スイス議会は2010年、禁止期間を2013年まで延長。2012年には、2017年まで禁止期間を延長していた。そしてこのほど2021年までの5年延長を政府が決定した。この決定には、議会の承認が必要だという。試験栽培がケーバイケースで認められている。
禁止の延長を決めたといってもスイス政府の立場は、GM作物の商業栽培は将来的なオプションの一つだというもので、全面的な禁止の意向は持っていないという。
こうした政府の動きに対して、農民運動Uniterreは今年3月、スイスにおけるGM作物栽培禁止を含む、食料主権に関する国民投票に必要な署名を集めたという。この提案に対して、政府は反対の意向を明らかにしている。
・Swiss Info, 2016-6-29 Government approves GMO ban extension http://www.swissinfo.ch/eng/genetically-modified-organisms_government-approves-gmo-ban-extension/42260828
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