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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2016年08月30日08時41分掲載
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核・原子力
【たんぽぽ舎発】原子炉の安全性その1(5回連載) あまりに酷い伊方3号機 山崎久隆
四国電力伊方原発3号機が12日に原子炉を起動した。プルトニウム燃料(MOX燃料)を積んだプルサーマル炉でもある。 8月9日長崎原爆の日に再稼働阻止全国ネットワークが規制委と交渉を持ったが、その結果、一般とも科学ともかけ離れた認識に唖然とさせられた。これまでも何度も議論をしたが、今回は最も強くそれを感じることになった。担当した箇所での質問と回答に対し、特に原子炉の安全性に関する点についての批判を以下、5回の連載で述べる。
見出し 1.一次冷却材ポンプの軸受漏えい (本日掲載) 2.1000ガルに耐えられる? 3.マジックナンバー1.54倍 4.自然循環不成立時の過酷事故対策 5.注入圧力はわずか7気圧
1.一次冷却材ポンプの軸受漏えい
原子炉一次系に破損が発生すると流出する冷却材の流れに阻害されて自然循環は成立せず燃料を冷却できないことは明確である。炉内の冷却材は開口部に向かって流れてしまうからだ。
自然循環は炉心燃料の熱により発生し、高温になった冷却材は出口配管を通過して蒸気発生器に向かい、そこで二次系または空気(二次系が蒸発していれば)により冷却されて比重の大きな冷却材になるので、蒸気発生器細管を下り一次冷却材ポンプを経て入口ノズルから原子炉内に戻る。これが自然循環の流れだが、何らかの原因により蒸気発生器細管、加圧器、一次冷却材ポンプなどの何処か(計装系などの微少配管なども含めて)で漏えいが発生したら漏えい口から冷却材は噴出し、冷却材の流れは損傷部に向かう一方的なものになる。
◆そのため自然循環は成立しない。
その中でも漏えい箇所になる可能性の高い一次冷却材ポンプは、実は破損が全くなくても電源が喪失しただけで漏えいが発生するやっかいな装置である。
ポンプには「シール部」という場所がある。ポンプ回転軸を伝って内容物が漏れるのを防ぎ、軸受を安定させる装置だ。加圧水型軽水炉の一次系にはループごとにポンプがあるので、伊方3号機の場合は3台ある。 そのシール部は外から強い圧力をかけて「軸封水」または「シール水」を押し込んでおり、そのおかげで隙間から冷却材が漏れるのを防いでいる。 この水圧は炉圧より高く157気圧以上で「充てんポンプ」というポンプにより圧力がかけられている。しかし電動ポンプだから電源喪失と共に機能喪失する。
機能を喪失するとシール水を押し込めなくなり、内部の157気圧の冷却材が漏れてくる。最大漏洩量は最も圧力が高い漏えい初期段階でポンプ1台あたり毎時最大109トンと想定されている。(時間と共に圧力が下がるので漏洩量は徐々に減少する。) シールの破損は、この漏洩量を増やす方向に影響すると思われるので、真剣に検証をすべきなのだが、今回の漏えいが「シール水のみの漏えい」だとして、何の検証も検討もしていない。安全側に立った態度とは到底いえないのである。
◆規制庁は自らは事故原因調査もしていない。
四国電力によると、格納容器耐圧検査において使用圧力の1.1倍をかけたところ、ポンプ軸封部のOリングに外部から圧力が掛かり変形、そのまま動かしたため軸受が傾き漏えいに至ったというのだが、これだとポンプ3台とも起きない理由の説明にならない。個体差だと四国電力は言ったそうだが、それで済むのならば規制庁などいらない。原因と調査がいいかげんだと、全く予期しない原因があっても排除されていないので、運転中に大規模な破たんを来しても未然に防げない。そのような事例は過去にいくらでもあったではないか。
典型的例を一つあげれば、軸振動の増大を甘く見て再循環ポンプを破壊するまで運転し続けた福島第二原発3号機の事故がある。その前年に同型機の1号機で起きていた損傷を見逃したことが、最終的に事故を未然に防げなかった。
こんな経験を山のようにしているのに、今回の規制委の稼働許可は、何が起きても教訓にさえならない現実を見せつけている。
電源喪失時には一次冷却材ポンプが冷却材喪失の大きな流出点になると分かったのは福島第一原発事故の教訓である。それまでは抽象的には認識されていたが、そもそも全電源喪失が長時間続くという想定そのものが「想定外」なので、実態として対策されていない。
では、福島第一原発事故後の今はどうなったのかというと、本質的には何ら変わりはしない。 ポンプはもちろん以前のままだし、冷却材喪失対策が、結局は消防車のポンプという。せめて炉圧と同じ圧力でも注水できる電源不要のシステムを付けるべきであるが、対策は取られないままに加圧水型軽水炉が動き出している。
一つの方法は、沸騰水型軽水炉の原子炉隔離時冷却系統と同様の装置を付けることだ。 (次回に続く)
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