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2016年10月11日09時26分掲載
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科学
大隅良典氏のノーベル賞受賞と防衛省の動き 根本行雄
10月3日、大隅良典東京工業大学栄誉教授(71)が「オートファジーの仕組みの解明」に寄与したとしてノーベル生理学・医学賞を受賞した。大隅氏は7日、東京工業大学で講演し、「日本人のノーベル賞受賞者が毎年出ていることで浮かれている状態ではない」と、短期間に研究成果を求める日本の現状に警鐘を鳴らした。防衛省は、2015年に、防衛装備品の開発につながる、大学や民間企業などの基礎研究に対し、資金を提供する制度を設けた。安倍政権のもと、日本政府は科学技術の軍事利用を進めており、民間の技術を防衛装備品に活用する「デュアルユース」の流れが加速している。日本は「戦争でもうける国」になりつつある。
ノーベル賞を創設したアルフレッド・ノーベルは、ダイナマイトを発明した。それが戦争にも使われて巨額の富を得た。このことから彼は「死の商人」と呼ばれた。彼は科学技術の平和利用と軍事利用との間で苦悩したと伝えられている。そして、彼は「ノーベル賞」を創設し、科学研究ばかりではなく、「平和賞」という部門も設け、世界平和のための事業に貢献している人々をも顕彰している。
ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった大隅良典・東京工業大栄誉教授(71)は7日、同大で講演し、「日本人のノーベル賞受賞者が毎年出ていることで浮かれている状態ではない」と、短期間に研究成果を求める日本の現状に警鐘を鳴らしたという。
大隅氏はこれまでの研究を振り返りながら、「日本の大学の基礎体力が低下しているのは深刻な問題」と指摘し、研究費の多くが競争的資金になると長期的な研究が困難になるとし、今後、新しい研究分野で日本人がノーベル賞を受賞するのは「非常に難しくなっているのではないかと危惧している」と述べたという。
2013年12月に、「防衛計画の大綱」が閣議決定された。大綱には「大学や研究機関との連携の充実等により、防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の積極的な活用に努める」とある。
安全保障関連法の成立に続き、武器などの研究開発や調達、輸出をまとめて担う防衛装備庁が2015年10月1日に発足した。2014年の「武器輸出三原則」撤廃と「防衛装備移転三原則(新三原則)」の閣議決定に伴い、武器輸出は「原則禁止」から「原則解禁」に大転換しており、これでアベノミクスの成長戦略に武器輸出を位置づける国の体制が組織上、整った。日本は「戦争でもうける国」になりつつある。
防衛省が、2015年に設けた「安全保障技術研究推進制度」では、防衛装備品の開発につながる、大学や民間企業などの基礎研究に対し、資金を提供する。大学などの研究者を対象に、防衛装備品に応用できる先端研究を公募し、審査した上で研究費を配分する制度だ。昨年度は109件の応募があり9件に配分した。今年度は44件の応募から10件が選ばれたという。年間最大3000万円が原則3年間支給される。
制度の背景には、軍事にも民生にも使える「デュアルユース(軍民両用)技術」を活用したい政府の意向がある。防衛省が内部で行う技術開発にはコストがかかり、人材も必要だ。その不足を補うため大学などの「外部資源」を利用する戦略であると考えられる。
その一方で、大学側の事情を考えると、学術研究に自由に使える交付金は減り続けてきている。文部科学省が基礎研究に配分する助成金も頭打ちである。防衛省の新制度は、研究費が足りない研究者の弱みを利用しているといえるだろう。
「九条科学者の会」事務局員の浜田盛久さん(海洋研究開発機構研究員)は、「デュアルユース」という言葉に注目する。「政府と経済界は武器を安く開発し、国際競争力を高めて世界市場に参入したい意向があります。ただ、軍事技術の高度化を進めるために国内の防衛産業内部で新技術の研究開発を始めようとしてもコストが高い。そのため大学・研究機関の先進的な研究結果を活用する政策を政府は打ち出したのです」と説明する。
一方、大学・研究機関の側にとっては、研究費が削減されているという厳しいふところ事情がある。今年度の国立大学への交付金は計1兆945億円で、法人化した04年度から約1500億円も減った。浜田さんは「科学者は研究を続けるためには大学外部の資金を獲得する必要に迫られている。防衛省から研究費を獲得し、研究成果が自衛隊に採用されれば、その後の研究に弾みがつく。また、防衛省のやり方も巧妙。『軍事研究』と言わずに『民生品にも使えるデュアルユース』と参加への敷居を低くしている」と話す。
「戦争や軍事を目的とする科学研究は行わない。」科学者の代表機関である「日本学術会議」は、戦後、2度にわたる声明で宣言している。戦時中の戦争協力への反省に立ったもので、この規範にのっとり、大学などの科学者は軍事研究とは一線を画してきた。その大原則が揺らごうとしている。学術会議は2016年6月から、「安全保障と学術」の関係について検討を始めた。声明の見直しもテーマになるという。
日本学術会議が議論を始めたきっかけは、防衛省が2015年度に創設した「安全保障技術研究推進制度」である。防衛省が防衛装備品に応用できる最先端研究に資金を出す。防衛装備庁が研究テーマを定め、大学や公的研究機関、企業に委託する。初年度は109件の応募があり、58件を大学が占めた。自民党国防部会は予算枠を100億円規模に引き上げることを求めていた。
2017年度予算編成に向けた各省庁の概算要求が8月31日、出そろった。毎日新聞は、「軍事転用研究、110億円」という小見出しをつけて、防衛省の概算要求を紹介している。
2012年12月に誕生した第2次安倍晋三政権が、予算を編成した13年度以降は防衛費は増え続けている。17年度の概算要求段階では過去最高の5兆1685億円(16年度当初予算比2・3%増)となった。
防衛省は9月31日に決定した2017年度予算の概算要求で、防衛装備品に応用可能な最先端技術の研究に資金提供する「安全保障技術研究推進制度」に110億円を計上した。今年度予算は6億円で、大幅に引き上げた。大規模な研究も対象とするためで、現行の支給額1件あたり9000万円(3年間)から10億円(5年間)に拡充した。総額は過去最高となる5兆1685億円(16年度当初予算比2・3%増)となった。
大隅氏はノーベル賞を受賞し、東京工業大学での講演のなかで、「日本の大学の基礎体力が低下しているのは深刻な問題」と指摘し、研究費の多くが競争的資金になると長期的な研究が困難になると警鐘を鳴らした。それは、はしなくも、安倍政権が推し進めている「戦争のできる国」、軍隊をもつ国家の軍事戦略に、研究者を取り込んでいっている実態を明らかにしてしまった。そして、安倍政権が推し進めている「アベノミクス」とは、日本が「戦争でもうける国」になることでもあるのだ。
毎日新聞は、2016年10月5日朝刊にて、電力業界団体の電気事業連合会(電事連)が、東京電力福島第1原発事故の損害賠償・除染費用について、東電ホールディングスを含む大手電力各社の負担額が当初計画を約8兆円上回ると試算し、国費での負担を政府に非公式に要望していることが明らかになったと伝えている。つまり、納税者である国民に原発事故のツケがさらに重くのしかかってくるのだ。
「金もうけさえできればよい。今だけよければよい。自分さえよければよい」。そんな連中が増加している。安倍政権はそういう社会を推し進めていることをしっかりと認識しておかなければならない。そのツケをはらうのは私たちなのだ。それを忘れてはならない。
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