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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2016年10月22日02時07分掲載
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検証・メディア
イタリアの報道の自由と政治の圧力について、未来について、独裁について Francesco Mazza(イタリアの映画監督)
在仏ブロガーのRyoka氏が紹介してくれましたイタリア人の映画監督Francesco Mazza(フランチェスコ・マッツァ)さんの風刺画に対する説明があまりにも興味深かったために、Francesco Mazzaさんにもう少し話を聞きたいと思いました。特に、先述の文章に書かれていたイタリアの風刺番組のこととか、イタリアのメディアの事情〜特に政治との関わりでたとえば圧力とかはないのか?などなど、そのあたりのイタリア事情をFrancesco Mazzaさんに話していただきました。
1) Please talk about the TV program of 'satire' you worked for 9 years . What stories did you write as scenario writer ?
1) The show's name is "Striscia la Notizia" and in Italy is legendary. Aired from 1988, it's written and produced by TV genius Antonio Ricci - arguably the most brilliant intellectual in my country today. "Striscia" - as it is typically called - might remiding you of the American Late Night Shows hosted by comedians such as David Letterman or John Stewart, but it's much more than that. Due to the particular situation of Italian media as a whole, as years went by Striscia became a respected news-cast itself, unveiling and discovering a ton of scams, medical malpractices, bribing and so on. They have dancers and dogs and jokes, but in their videos Striscia's reporters are the only ones who show what is going on in Italy for real.
Q イタリアの風刺番組に9年間携わられたということですが、どんな番組だったんでしょうか?どんなストーリーを脚本家として書いておられたんですか?
A 番組の名前は"Striscia la Notizia"(ニュースの漫画)と言いまして、イタリアでは伝説となっている番組なんです。1988年から放送されています。テレビ界の天才、アントニオ・リッチによって台本が書かれ、またプロデュースされています。リッチは今日のイタリアでは恐らく最高の知性だと思います。"Striscia"(漫画)は〜タイトルは簡略にされて、よくこう呼ばれているんですが〜デビッド・レターマンやジョン・スチュアートなどコメディアンが司会をするアメリカの夜の番組を連想させるかもしれません。しかし、この番組はそれらよりもずっとレベルが高いのです。イタリアの特殊なメディア事情により、風刺番組である"Striscia"が実際にはニュース番組の役割を果たすようになりました。そこでは無数の詐欺師が告発され、医療過誤や贈収賄事件などが報じられています。ダンサーや犬やジョークが盛り込まれていますが、"Striscia"の記者だけが真のイタリアの現実をとらえて映し出しているんです。
2) Please talk about the freedom of expression and journalism in Italia. I heard Italian prime minister ( several years ago) monopolized the TV channels . What is the current situation ?
2) You are referring to Silvio Berlusconi who was indeed an anomaly. Silvio is a media mogul who funded his own conservative party - filling a void there was at the time on the political scene - and managed to win the election and somehow governed Italy for roughly 20 years. This put a tremendous amount of powers in his hands, because in Italy TV, newspapers and radios are deeply related, influenced and controlled by politics. This means that the control that politics has over the media system wasn't created by Berlusconi and hasn't been stopped after him. These days, if you want to work in public TV you gotta have a friend in politics. I give you an example: on Rai 3 (public TV channel) we had a political talk show called "Ballaro" hosted by TV journalist Paolo Floris. Since the show was pretty critical against actual Prime Minister Matteo Renzi - and I said critical, non biased - Floris was fired and his show given to another journalist, named Giannini, who had at the time the favor of the Democratic Party - from which our Prime Minister comes from. But then Giannini became critical towards the government (after all, being critical is the essence of this job, isn't it?) and was fired too. If you consider that Matteo Renzi wasn't even elected by the Italian people, but he's actually governing for a really, really complicated political scheme which would take hours to explain to a non-Italian audience, you might realize how screwed up things are in Italy right now.
Q イタリアにおける表現の自由とジャーナリズムについて教えていただけませんか。数年前、イタリアの首相がTVのチャンネルをほとんど独占している、というような話を聞いたことがあるのですが。現在はどうなんでしょうか?
A シルビオ・ベルルスコーニのことですね。彼は非常に特殊でした。メディア界の大権力者で、同時に自分の所属する保守政党に資金を投じていました。当時のイタリア政界の隙間を狙い、選挙で勝って20年近くもイタリアを統治していたのです。ベルルスコーニはとてつもない権力を手に入れました。というのもイタリアにおいてはTV、新聞、ラジオはどれも政治と深く関係しており、政治の影響を受け、政治によって統制されているからです。つまり、これは何を意味しているかと言えば政治家がメディアを統制するということはベルルスコーニが始めたものではないし、またベルルスコーニの時代が終わったからと言って消滅するものでもないのです。今日、もしTVの世界で仕事をしようと思うなら、政治家の友人を持っていなくてはなりません。例をあげましょう。以前私たちは公共放送局のRai3で"Ballaro"というトークショーを作っていました。司会はTVジャーナリストのパオロ・フロリスです。この番組は時の首相マテオ・レンツィをひどく批判的に描いていました。しかし、確かに批判的ではありましたが、政治的な意図から批判していたのではありません。それでも、フロリスは番組から降板させられ、ジャンニー二という名前の別のジャーナリストが代わって司会をすることになりました。ジャンニーニはその頃、レンツィ首相が属する民主党を支持していたんですよ。でも、ジャンニー二もまた政府に批判的になりまして(というのも、権力に対して批判的であることこそジャーナリズムの仕事の核心なんじゃないですか?)結局、彼もまた降板を余儀なくされてしまったのです。あなたはレンツィ首相は選挙で選ばれたわけではないと考えるでしょう。しかし、彼は実際に非常に複雑な〜イタリア人以外に説明しようとすると何時間もかかるであろう〜政治システムの上に乗っかって統治しており、現在のイタリアの政治が混乱の極みであることを想像いただけると思います。
3) What kind films do you create as a director ?
3) As a director, I try to realize and put in practice the images that I have at night in my subconscious, which I eventually structured as stories during the day. I don't gravitate towards a particular genre, although I like high-concept, high-pitch stories where the protagonists put everything they have on the line to get what they want. I think human beings are flawed, but they want to be better. Problem is whatever they think can make them better, either makes them worse or it's extremely dangerous to get. I'm interested in those stories in which a human being is willing to lose everything in an attempt to realize himself as a human.
Q あなたは監督としてはどんな映画をお作りになるんですか?
A 映画監督としましては夜に無意識の中に浮かぶようなイメージを映像にしようと努めています。そして、それらのイメージを日中に物語の形にまとめようとしています。特にこだわっているジャンルと言うものはありませんが、私がよく描くのは主人公が手にしているものを全て捨て去って、本当に自分が求めているものをつかもうとするようなシンプルで激しいストーリーです。人間には欠陥がありますが、しかし、人間は向上したいと願う存在でもあると考えています。ただ問題はいかにそう願って行動しても、時にはますます状況を悪くしてしまったり、あるいはひどい危険に直面したりするということです。でも私は人間がよい人間になるために、今持っているすべてのものを捨てる、という物語に関心を持つのです.
4) What do you think about our time ?
4) I think those are very tricky time. In the first three quarters of the 20th century people fought hard for freedom. First, by fighting wars versus dictators. Second, by fighting governments versus restriction and biases. But then, when they finally had their freedom, people realized they don't know what to do with it. There are no values, no moral or ethical laws and this has created an unbearable feeling of "loss" in many individuals. So the trend got actually reversed, and since the 80's we are witnessing an unstoppable attempt to limit our freedom. Now: you don't get to lose liberty in one day, because you'd rebel against it. You do get to lose your liberty, day by day, little by little, without even noticing it. And at the end, you can like it. You feel no loss, you feel no chaos. That's what happen for most of the people now, in my opinion. I see a future where people will be more comfortable with dictatorships again rather than that hippie idea of freedom there was in the 60's. Obviously, tomorrow's dictators won't look like those buffoons we had last century, like Mussolini, Hitler and others. They will be cool, in their office in San Francisco, wearing sandals and sock, a vegan sandwich in their hands. And we will be obeying to their social media mangers, to their apps, to their tweets without protesting at all.
Q 今のこの時代をどう考えますか?
A 非常に危険な時代だと考えています。20世紀を振り返ると、最初の75年は人々は自由のために激しく戦いました。まずは独裁者たちとの戦いです。次に政府の統制や偏りに対して戦いました。ところが民衆がとうとう自由を手に入れたとき、その自由を使って何をするのか、戸惑うばかりだったのです。価値観も道徳も倫理もなくなってしまい、個人は耐えがたいほどの喪失感に襲われるようになりました。ここから、流れが逆流したのです。1980年代以後、自由を制限する傾向は止めどなくなってしまいました。今日、わずか1日で自由を奪われることはありません。というのも、みんなが抵抗するからです。しかし、毎日毎日、少しずつ少しずつ、気がつかないようにすれば自由は簡単に奪われてしまうのです。そして、恐ろしいことですが、人々はもう自由を奪われたことにすら気づかず、自由のない状態を好み、混乱から解放されたと思うようになってしまうのです。私の考えではこれこそ多くの人に起きている現象です。未来についていえば、1960年代のヒッピーたちが愛したような自由よりも、人々は独裁者に統治されている方がより居心地がよくなっていると思います。明らかに明日の独裁者たちは前世紀のムッソリーニやヒトラーやその他の人々のような輩ではないと思います。明日の独裁者と言うのはたとえばサンフランシスコにオフィスを持ち、サンダル履きで、ビーガンの(完全菜食主義の)サンドイッチを手に持っているようなクールなタイプではないでしょうか。そして私たちは彼ら、ソーシャルメディアの旗手たちに、彼らのツイートに無抵抗で従属するようになるのです。
5) What do you think about the future of Europe ( after Brexit ).
5) I don't think there's such thing as Europe no more. Look: as a great of our time always says, in a future there will be only one distinction: those who tell computer what to do (minority) and those who will be told by computers what to do (large majority). The rest will be - as Karl Marx used to say - "superstructure" which is a nice way to say "bullshit". Political states, sovereignty, civil rights, they will all be minor things to give people something to talk with their beers, at a bar at night. But the real deal of this time, the economy, is already completely independent by all of this. 8 blocks in Silicon Valley already decide the will of million of families in Europe, Asia, anywhere. A freshman from Harvard asks his Goldman Sachs dad money from a venture capital to create an App that kills the job of taxi driver, two years later you have millions of unemployed taxi drivers all over the world. Now tell me what Europe or politics or God can do about it? Nothing. We are already there. The house has burnt. We are just at the beginning of a long, dark night.
Q 欧州の未来についてはどうお考えですか? (とくに英国の欧州連合離脱の後は?)
A 私には欧州というものがまだあるのかどうかわかりません。思うに将来は2つの違いしかありません。コンピューターに向かって指令を出す少数の人間と、コンピューターから指令を受け取る多数の人間の2種類です。残りはカール・マルクスが言っていたような、上部構造です。これは「馬鹿野郎」をうまく表現する言葉です。国家、主権、市民権、こういった概念は人々がバーで夜酒を飲むにあたってまったく考慮の対象にならないような小さなものになるでしょう。しかし、経済だけはこうした概念から独立して動いています。シリコンバレーにおけるわずか8ブロックが欧州やアジアや世界各地の何百万人もの人々をすでに動かしているのです。ハーバード大学の新入生がゴールドマンサックスに勤める父親に金を無心してベンチャー企業のAppを設立し、それによってタクシー運転手の仕事が奪われていきます。2年後には世界中で何百万ものタクシードライバーが仕事を失っていることでしょう。欧州であれ、政治であれ、神であれ、この状況に何ができると言うのでしょうか。何もできません。私たちはすでにこんな世界に生きているのです。家は焼け失せたのです。そして私たちは長く暗い夜の入り口にいるのです。
インタビュー 村上良太 Ryota MURAKAMI
■イタリア人の映画監督がイタリア中部アマトリーチェ地震の被災者らをパスタにたとえた風刺画を読み解く 〜母に捧げる風刺画の読み方〜 Francesco Mazza(翻訳 Ryoka)
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■シャルリー・エブドはなぜイタリア人の被災者をラザニアに例えたのか 〜 風刺漫画について〜 Ryoka
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イタリアの映画監督、Francesco Mazza氏(右).この夏、映画「Broken Eggs」のニューヨークロケ中の1枚。
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