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2016年10月23日14時15分掲載
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アフリカ
「南スーダンPKO問題」を考える 池住義憲
「南スーダンPKO問題」とは、どういう問題か。安倍政権は、南スーダンPKO(平和維持活動)に自衛隊を派遣し続けている。私は、この問題を一言でいえば、「憲法違反の法律を実行に移し、海外での憲法違反行為を既成事実化している問題」だ、と表現している。南スーダンは、今、どうなっているか。なぜ内戦状態が続いているのか。PKOとは何か。自衛隊はなぜ南スーダンPKOに派遣されているのか。その法的根拠はなにか。PKO派遣は、憲法から見てどうなのか。九条を持つ国として、今後どうすべきか。
◆南スーダンの実情
南スーダンはアフリカ中央部に位置し、北にスーダン、東にエチオピア、南にケニアとウガンダ、西に中央アフリカ、南西にコンゴと国境を接している。いずれも豊富な地下資源を持っている国々。南スーダンの広さは日本の約1.7倍。人口は日本の十分の一(1,130万人)弱。南スーダン北部にも、油田地帯が広がっている。
南スーダンがスーダンから分離・独立したのは、2011年7月。2年後の2013年、政権与党(SPLM)内で政治闘争が激化。スーダンから分離独立を求めて一緒に闘ってきたキール大統領派(政府軍、SPLA)とマシャール副大統領派(反政府軍、SPLA-IO)による戦闘は、2013年12月以降、各地に拡大。南スーダンは、再び内戦(Internal Armed Conflict) 状態になった。
石油地帯がある北部を中心に、激しい戦闘が続き、特定の民族を標的にした襲撃も起こり、大量の避難民が発生。今日まで隣国に逃れた難民は100万人を超え、国内避難民は160万人になるという。480万人が深刻な食料不足に陥っている。背景には、南スーダン北部の石油利権問題や民族対立(ディンカ人・ヌエル人)などがある、と言われている。
両派間の対立は、停戦合意が交わされた数日後の崩壊を繰り返していた。2015年8月になって、国際機関の仲裁により、対立していたキール大統領派とマシャール派両派間で停戦・和平合意が成立する。2016年1月までに暫定統一政府を樹立し、それから30ヵ月の暫定統治の間に総選挙を実施する文書に、両派が署名した。
◆それでも続く内戦
合意締結後、目だった戦闘は一時減少した。しかし合意後も両陣営から協定の細部への不満が絶えず、内戦中の戦争犯罪特別法廷の設置や、州の再編案などで対立が続く。2016年4月に暫定統一政府が発足したが、機能しない。首都ジュバの非武装化は進まない。政府軍(SPLA)の撤退も遅延。内戦によって疲弊しきった経済は、インフレ率295%のハイパーインフレーションを引き起こす。首都ジュバで両陣営による銃撃戦が断続的に続くなど、内戦再燃の危機が高まっていく。
そして今年の年7月7日、首都ジュバでキール大統領派とマシャール副大統領派による大規模な戦闘が発生(270人以上死亡)。軍事車両やヘリコプターなどが投入され、兵士や市民ら300人以上が死亡。市民は戦闘の再発を恐れ、新たに4万人以上が国内で避難生活を余儀なくされた。
7月10日には首都ジュバの陸自宿営地隣のビルで、2日間にわたり銃撃戦が繰り広げられる。陸自宿営地から100mのところにある建設中のビルに立てこもった反政府勢力と政府軍との戦闘行為が断続的に続き、政府軍兵士2人が死亡。国連安保理が、8月中旬から4,000人規模の「地域保護軍」派遣を決定せざるを得ないくらい、緊迫した状況となっている。
◆政府の認識
首都ジュバにいたJICA関係者ら93人は、現地で支援活動を行う欧米各国にならい、7月13日に隣国ケニアへ脱出。大統領派・副大統領派双方は停戦命令を出して大規模戦闘は一応収まったが、情勢は依然不透明のまま。マシャール副大統領は解任され、隣国スーダンへ退避。同氏は退避先で、「キール氏の独裁政権に武力で抵抗する」との声明を出している。
それ以後も、戦闘行為は続発。7月21日中部ジョングレイ州(120人以上死亡)、10月3日南西部イェイ川州(3人死亡)、10月8日中央エクアトリア州(20人以上死亡)、同8日首都ジュバに繋がる幹線道路で民間人を乗せたトラックが襲撃(21人以上死亡)、10月10日旧中央エクアトリア州(21人死亡)、10月14日北東部マラカル(60人死亡)、10月16日北部旧ユニティ州(政府軍11人死亡)等々…。
安倍晋三首相は、7月11日参院予算員会で、7月南スーダンで再燃した内戦について、「戦闘行為ではなかった」との認識を示した。稲田朋美防衛相は、翌12日の同委員会で、7月8日に自らが7時間首都ジュバを訪問したことに触れ、自衛隊が活動する首都ジュバ市内は「比較的落ち着いている」との認識を示した。私は、自衛隊員を350名南スーダンに派遣している責任者・当事者が、この程度の認識、このような認識しか持っていないことに愕然とした。
◆南スーダンPKOへの自衛隊派遣
国連安保理は、2011年7月、南スーダン独立と時期を同じくして、南スーダンの「地域の平和と安全の定着」および「国の発展のための環境構築」を任務とする「国連南スーダン共和国ミッション」(UNMISS)を設立した。日本政府は、同年11月、国連からの協力要請を受けて司令部要員2名派遣を皮切りに、2012年1月から順次、「施設部隊」を派遣している。道路等のインフラ整備や国連敷地内の排水溝整備などを行う部隊で、現在も第10次隊350人が派遣されている。現在は、2013年以降継続して各地で起きている武力衝突の影響で、自衛隊の活動はジュバとその周辺のみに限定している。
南スーダンPKOに派遣している国は、15ヵ国。多くはアフリカの近隣諸国で、先進国は日本と韓国だけ。日本の自衛隊員は、首都ジュバの空港に隣接するUNMISSトンピン地区に、カンボジア、ルワンダ、エチオピア、ネパール、ガーナ、バングラデッシュのPKO部隊と宿営地を共同使用している。
日本が南スーダンPKOに派遣している法的根拠は、改正PKO協力法。本年3月29日に施行された安保関連法の一つである。多くの憲法学者等が指摘している通り、安保関連法そのものが、憲法違反の疑いが著しく強い。南スーダンPKOへの自衛隊派遣は、違憲の法律に基づいて、海外での違憲行為を既成事実化している行為であると私は思う。“国際貢献”という名の下で。
◆新任務の付与
改正PKO協力法には、日本が国連PKOに参加する際に満たすべき五つの要件が明記されている。1)紛争当事者間で停戦合意があること、2)受入国と紛争当事者の同意があること、3)中立的立場を厳守すること、4)以上のいずれかが満たされなくなった場合は即時撤収・撤退すること、5)武器使用は要員の生命保護など必要最小限が基本であること、である。
新任務として盛り込まれているのは、次の三つ。1)住民に危害が及ぶことを防ぐための監視・巡回・検問などの「治安維持活動」、2)救助を求めるNGO関係者らを保護する「駆け付け警護」、3)「宿営地の共同防衛」。宿営地の共同防衛は、従来と同じ「自己保存型」の武器使用。だが他の二つの任務に当たる自衛隊員は、自分たちの行動を妨害する行為を排除する「任務遂行型」でも武器を使えるようになった(正当防衛や緊急避難の場合に限るとしているが)。
政府は、10月20日、南スーダンPKOに参加する陸上自衛隊に対し、安保関連法に基づく「駆け付け警護」と「宿営地の共同防護」の新任務を付与する方向で最終段階に入ったことを明らかにした。11月中旬に、新任務を活動内容に加える実施計画を閣議決定する方針だ。実施地域は、陸自部隊の宿営地がある首都ジュバ周辺に限定するとしている。
新任務に必要な実動訓練は、すでに8月下旬から始まっている。11月中旬以降、陸自第九師団第五普通科連隊(青森駐屯地)を中心とする第11次隊を、南スーダンPKOへ派遣する方針を崩していない。
◆即時撤退を!
安倍首相は、現時点で南スーダンは派遣要件である「PKO参加五原則」を満たしている、と強弁している。これまで少なくとも2回、停戦合意が破られている。7月中旬には、隣国スーダンへ退避したマシャール副大統領が、退避先で「キール氏の独裁政権に武力で抵抗する」との声明を出している。停戦合意は、破られている。改正PKO協力法の派遣要件は、満たしていない。
「駆け付け警護」「宿営地の共同防護」それに伴う武器使用基準の緩和は、現実に国または国に準ずる組織との戦闘に巻き込まれる可能性が高い。「駆け付け警護」とは、PKOに参加する自衛隊が、武装集団に襲われている国連職員は他国部隊のいる場所に駆け付け、武器を使用し助ける任務のこと。改正PKO協力法では、任務遂行のため、警告射撃することを法律的に可能とした。
これは、「武力の行使」を禁じた憲法九条1項に違反する。「殺し、殺される国に」、また、安保関連法を「戦争法」と呼ぶ理由・根拠はここにある。公務員の憲法尊重擁護義務(憲法第99条)に従い、安倍首相は、南スーダンPKOへ派遣中の自衛隊を即時撤退させるべきである、と私は思う。
◆やるべきこと、出来ること
九条を持つ国として出来ること、やるべきことは、たくさんある。非軍事的方法で、紛争当事者への外交面での働きかけを最大の努力を払う。和平と民族間和解のための外交的関与と支援を行う。国造り支援として、行政機構や法律の整備と社会インフラ整備に協力・貢献する。教育支援や政府・警察官等への人権に関する研修を率先して支援・協力する。地域ごとの行政と話し合って、学校・病院・水道などの建設を行う。住民保護支援ならびに、食料・水・住居・医薬品などの人道支援を行う、等々。
潘基文国連事務総長は、去る9月22日、国連高官会合で「この紛争に軍事的解決はない」との声明を出した。まさに、その通り!
(池住「メール通(信10月」から)
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