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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2016年12月04日15時43分掲載
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米国
トランプに真っ向から対峙する人物が語るアメリカ インタビュー「サンダースが展望するアメリカの未来」(『世界』12月号)
米国の次期大統領になったドナルド・トランプをどう規定するか。ひとことでは説明しきれないところもあるが、差別と排外を前面に押し出したレイシストという規定は間違いではあるまい。そのトランプに真っ向から対峙している人物は、いまのアメリカではバーニー・サンダースをおいていない。今回の米大統領選はもう一人の人物を生みだした。ヒラリー・クリントンと最後まで民主党大統領候補の座を争ったバーニー・サンダースである。社会主義者を自任する人物が大統領になっていたかもしれないと考えると、トランプ大統領出現と合わせて、現代アメリカを象徴する出来事ではあった。ちなみに、世界の首脳のなかでいち早くトランプと面会した安倍首相が、面会直後の記者会見で「信頼できる人物と確認できた」と話したのは、自分はトランプと同類の人間だと認めたようなものだろう。トランプ・安倍会談に意味があったとすれば、安倍が自ら自分もレイシストであることを世界に知らしめたことにあるのが、とても面白い。「類は類を呼ぶ」ということわざが頭をよぎる。(大野和興)
ではサンダースとは何者か。雑誌『世界』2016年12月号の特集「混迷するアメリカー大統領選の深層」所収のサンダースへのインタビュー「サンダースが展望するアメリカの未来」がおもしろい。内容は多方面にわたるが、四つに絞って紹介する。
一つ目は、サンダースのトランプ観。「トランプは私の生涯で、主要政党から浮上した最悪の候補者」と最大級の表現で批判している。 「こいつはこの国にとって大きな災難であり、国際面ではわが国の恥です」 「私の考えではドナルド・とらんぷがこの国にとって信じられないほどの大災難になることは非常に明白なので、私はトランプの敗北を見届けるために、出来る限りのことをすべてやります」
二つ目は、彼の主張が実に具体的だということ。サンダースは「アメリカ国民が集まり、次のように声を上げることに手を貸すことが私の役割です」と前置きした上で、次のようにいう。 「そうだとも、私たちは公立大学の授業料を無料にし、大規模な雇用プログラムを作り出し、インフラを再構築し、女性の対する賃金平等を確立し、最低賃金を時給15ドルに上げるのだ。地域センターへの財政支援を二倍にし(中略)、気候変動に対し積極的な取り組みを行う。私たちは、金持ちの巨大企業に公正な税金を払うよう要求する」 誰にもわかる具体的要求をひっさげ、彼は劣勢を跳ね返した。サンダースは選挙を通して、民主指導部がいかに選挙民とかけ離れた存在になっているかを改めて痛感したという。
「私たちが州から州へと出向いて民主党上層部を敵にまわし、時には地滑り的大勝を勝ち取るということは、民主党幹部とグラスルーツの人びととの間の溝がとても大きく開いていることを物語っています」 サンダースは熱く語っている。 「この国のネイティブ・アメリカンの居留地でどんなことが起きているかという現実について、誰か話をしてくれる人はいますか?」 「この国で貧困とはどういうことを意味するのか(中略)誰かが話題にしなければいけません」
三つ目はTPP(環太平洋経済連携協定)について。バーニー・サンダースは一貫してTPPに反対の立場をつらぬいている。彼はTPPについてのインタビュアーの質問に対し、「(米国の)企業界は実質的に貿易で負けることはありません」とした上で、オバマ大統領がTPPにこだわる理由について次のように述べている。 「彼はこれを地政学的な問題と見ています。過去の大統領のように、TPPがアメリカにありとあらゆる雇用を創りだすなどと偽ることはしません。彼の論拠は、もしTPPを放棄すればアジアを中国の影響下に置くことになるというものです」 TPPに関してオバマと安倍はこの一点で結びついた。安倍首相がTPPをあきらめきれない理由はここにある。だが、安倍首相のこの方針を担保する根拠はどこにもない。TPPはトランプの出現でほぼ死に体になった。
四つ目はサンダースの思想的バックボーンについて。サンダースが最も尊敬する人物は米国における社会主義の組織者ユージン・デブスであることはよく知られている。デブスについては、この『世界』の特集の古矢旬北海商科大学教授の紹介が役に立つ。1800年代末から1900年代にかけてのヨーロッパからの移入社会主義だった時代に、デブスは「アメリカ土着の労働者運動を興し、農民運動とも革新主義的な都市政治とも、第一次世界大戦の反戦運動とも連携」をとった。 以下は、このインタビューにおけるサンダースの締めくくりの言葉である。 「ユージン・デブスに起こったことを調べてください。彼は生涯をかけて社会主義運動を構築するために努力し、それが壊れるのを見ました。それでも10年後に、デブスが話していた事柄の半分をフランクリン・ルーズベルトが拾い上げました。世の中はそうやって動いています。諦めるなどという贅沢はありません、いいですか?」
トランプもサンダースも、アメリカの“パンドラの箱”をこじあけた。トランプは「毒の箱」を、サンダースは「真実の箱」を。この二人の出現で、アメリカは元には戻れなくなった。
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