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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2016年12月20日14時14分掲載
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TPP/脱グローバリゼーション
死に体になったTPP それぞれの事情と今後 大野和興
次期期米国大統領に選ばれたトランプ氏は、公約通り、2017年1月20日の大統領就任初日に「TPP(環太平洋経済連携協定)の離脱を表明する」と言明した。TPPの発効は参加12カ国間の取り決めで、12カ国のGDP(国内総生産)の総計の85%以上を占める6カ国が手続きを終えなければ前に進めないことになっているので、米国が離脱すればTPPは成り立たないことになる。(米国は12カ国GDPの60・4%を占める)。このことが何を意味するのか、これからどういう道筋をたどるのかを考えてみた。
安倍政権は
TPP交渉を米国と共にリードしてきたという自負がある安倍政権は何が何でもトランプ氏を説得してTPPを発効させると肩をそびやかしている。すでに死に体となっている安倍政権の成長戦略アベノミクスの最後に残された切り札がTPPであった。もうひとつ重大な問題がある。後述する中国をどう扱うかという問題だ。
もともとTPPの狙いは中国封じ込めにあった。TPP交渉を強力に推し進めてきたオバマ政権は、単なる経済利権の獲得というだけでなく、軍事的にも経済的にも超大国になりつつある中国封じ込めという政治的意味をTPPに求めてきた。安倍政権がTPPを重視してきた理由もそこにある。米大統領選でクリントン候補と並んで民主党の大統領候補の地位を争ったバーニー・サンダースは一貫してTPPに反対の立場をつらぬいている。彼はTPPについてのインタビュアーの質問に対し、「(米国の)企業界は実質的に貿易で負けることはありません」とした上で、オバマ大統領がTPPにこだわる理由について次のように述べている(『世界』12月号、インタビュー「サンダースが展望するアメリカの未来」)。 「彼はこれを地政学的な問題と見ています。過去の大統領のように、TPPがアメリカにありとあらゆる雇用を創りだすなどと偽ることはしません。彼の論拠は、もしTPPを放棄すればアジアを中国の影響下に置くことになるというものです」 TPPに関してオバマと安倍はこの一点で結びついた。安倍首相がTPPをあきらめきれない理由はここにある。だが、安倍首相のこの方針を担保する根拠はどこにもない。TPPはトランプの出現でほぼ死に体になった。
トランプ政権は
それに対してトランプ氏は、TPPを単なる経済的利権拡大のための取り引きとしてしか見ていない。オバマ政権や安倍政権とは土俵が基本的に違うのだ。経済的利権拡大ということで考えれば、TPPのような多国間交渉よりも、強大な経済力と軍事力を背景に対で交渉し、相手国を力でねじ伏せる2国間交渉の方が、米国の国益にはかなう。TPPが今後どうなるかについては、さまざまな見方が出されているが、日本についていえば日米FTA(自由貿易協定)交渉に移っていくことはほぼ間違いない。
日米間では、TPPの多国間交渉と並行して日米交渉が進められてきており、農産物貿易、食の安全や医療など社会制度、自動車、知的所有権などあらゆる分野で、規制を緩和し資本の参入を進めよという米国の主張の多くを日本政府はすでに認めている。これから始まる日米FTAは、そこの出発点に日本政府はさらに大きな譲歩を強いられることは間違いない。例えばその中には米国産米の特別輸入枠設定、日本の健康保険制度で定められている薬品や医療器具の基準への「透明性」という名のもとでの介入、かんぽ生命の運営規制、牛海綿状脳症(狂牛病)の危険部位由来の食用ゼラチンやコラーゲンの輸入規制緩和など沢山ある。
自民党政権下で長く続きた日米構造協議によって、「改革」の何のとに日本の公的規制は次々撤廃された。トランプ政権下の日米二国間FTAの実施は、そのより大規模な再来となることが予想される。トランプ次期大統領は、TPPばかりでなく安全保障体制の見直しに言及、核武装を含む日本の軍備増強と自主防衛体制の構築を迫ることが見込まれている。経済と軍事の両面から、戦後体制の見直しが進むことになる。
他の選択はないのか
安倍首相は、TPP交渉参加12か国のうち、米国を除く11か国はTPP推進で固まっているという。だがこれも安倍首相の思い込みにすぎず、トランプ氏のTPP離脱の動きを受け、さまざまな道を模索し始めている。11月中旬、南米で開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に出席した中国の習近平国家主席は早速、TPPに参加しているペルー、チリの首脳と会い、TPP参加国をい含むAPEC全域を網羅するFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)づくりを急ぐことで一致、また両国は中国が主導するアジアインフラ銀行(AIIB)に参加する意向を表明した。マレーシアやベトナムなどアジアの参加国も、中国が推進するASEAN(倒産アジア諸国連合)と日中韓、インド、オーストラリア、ニュージーランドで構成するRSEP(東アジア地域包括的経済連携)の重点を移す構えを見せ始めている。
安倍政権をのぞく世界は、すでにTPPから別の経済連携に向けて動き出しているとみてよい。社会運動の側はこれまで、政府の自由貿易協定の動きに対し、反対、阻止を掲げる運動に終始してきた。TPP破たんを契機に、そうした受け身の運動を脱し、公正・平等、民主主義、人権を掲げる交易の仕組みづくりを提起し、運動をつくりあげる時期に来ている。
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