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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2017年01月05日01時40分掲載
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医療/健康
夜勤ナースの独り言(34)
脳腫瘍のため脳が圧迫されると、人には様々な障害が出てきます。夫の場合、左の脳室にめり込むように脳腫瘍ができていたので、運動障害が出てきました。歩く際に足元がふらついたり、足が思うように前に出なかったり、眩暈もあって、歩くスピードが異常に遅くなってきたのです。歩いている最中も、眩暈が出る度に立ち止まってしばらく目を閉じ、眩暈が収まったら再び歩き始めるという具合です。普通の人が当たり前にできることができなくなっていくのです。 元々、歩くスピードが早い私としては、夫のペースに合わせてゆっくり歩くのがもどかしくてイライラすることもあります。 また夫は、脳腫瘍により脳がかなり圧迫され、脳浮腫も強かったので、「頭蓋内圧亢進症状」という認知症のような症状も現れ始め、さらに、てんかん発作の出現というリスクも抱えるようになりました。
夫は東北地方の出身です。S県S市に越してきたのは20年以上前。海とサーフィンが好きなことや、当時はバブル経済の影響もあって観光客相手の仕事がそこそこあったことからS市に移り住み、ホテルや個人経営のお店で働いて経験を積み、念願の自分のお店を持ちました。そして、S市に仕事で来た私と出逢い、結婚したわけです。したがって、夫婦揃って周りに身内がいません。 また、私たちはS市の中心部から車で15分程離れた海沿いの家に引っ越したばかりで、車を使わなければ、街に出るのも、買い物に行くのも、1時間に1、2本しかないバスに乗るしかありません。車が無ければ生きていけないような田舎なのです。だけど、今の病状の夫に車の運転はさせられず、私が運転するしかありませんが、私にも仕事があります。 私は当時、まだ夜勤専従の仕事だったので、「職場に迷惑が掛かるので、仕事は休みにくい・・・でも、夫が手術のために入院するとなれば、私も仕事を休まないといけない。長期休暇は取れるだろうか?・・・」と心配しました。私は、派遣看護師としてS市に来ているので、派遣会社としては、働けない私をそのまま雇っているわけにもいきません。 相談できる相手がいない・・・病気や怪我をしたときに頼れる人が近くにいないことの大変さを痛感しました。
A市の民間総合病院での診察を終えて、私たちはS市に戻りました。でも、「明日から仕事だ」なんていう気分ではありません。私は、「『夫が脳腫瘍になりました。だから、急遽仕事を休みます』とは言いにくいなあ」と思いつつ、とにかく職場に連絡し、「何とか明日の夜勤を誰かと変わってもらえないか」と交渉しました。 私は、4年近く派遣先の病院で勤めてきましたが、自分なりに真面目に勤務してきました。インフルエンザに罹った以外に休んだこともないし、勤務先の病院に迷惑をかけたつもりもありません。そういう勤務態度が評価されていたのか、本当にありがたいことに、病院の上司から「すぐに夜勤を代わってくれる人を見つけます」との返事をいただき、翌日の夜勤を奇跡的に代わってもらうことができました。 また、その後も奇跡が続き、2016年4月後半の夜勤は、すべて代わってくれる人が現れました。
最終的に、私は2016年4月末で派遣先の病院を退職するに至りました。そして、私が退職してから数日後、夫が再度A市の民間総合病院で精密検査のために入院した際、東京の大きな病院で手術を受けることが決まりました。 そこで、S県S市から都内の病院に通うのは遠いし、費用が掛かるし、また手術後、夫には後遺症が残る可能性もあり、社会復帰が困難になる可能性もあったため、社会資源の選択の幅が広い都内に引っ越したほうが良いのではないか判断し、東京に居を移すことにしたのです。 こうして、私は自分の仕事やキャリア、年収を捨てて、夫の面倒を看るとの覚悟を決めたのでした。(れいこ)
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