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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2017年01月12日13時10分掲載
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文化
新作小説「私はダンスをしていた」(”Je dansais”) 〜女性を閉じ込める男性の眼差しについて〜 作家キャロル・ザルバーグ Carole Zalberg on her latest novel.
フランスで活躍中の作家キャロル・ザルバーグ(Carole Zalberg)氏の新作小説が発売されました。タイトルは「私はダンスをしていた」(Je dansais )で出版社はグラセット(grasset)です。今回の小説はザルバーグさんにとって1つのチャレンジだったようです。どういう小説なのか、またどういった点でこの小説がチャレンジだったのかザルバーグさんにお聞きしました。
(以下はザルバーグさんの文章です)
Certains me l'ont demande, quelques mots a propos de "Je dansais", qui ne parle pas de danse, ou a peine .
何人かの人が私に最新刊の小説「私はダンスしていた」について何か書いて欲しいと依頼してきました。少なくともこうは言えるでしょう、「ダンスについて書いた本ではない」と。
L'intrigue de "Je dansais" tient en une phrase : il s'agit de l'enlevement et de la sequestration d'une toute jeune fille par un homme sans visage, un homme defigure qui croit l'aimer, qui croit, parce qu'elle a soutenu son regard un jour dans la rue, etre aime d'elle ou en tout cas pouvoir esperer son amour.
「私はダンスをしていた」の筋書きはひと言で述べるなら次のようなものです。 若い娘が誘拐され、監禁されます。誰にかというと顔のない男にです。自分はその若い女性を愛していると思い込んでいる醜い顔の一人の男によってです。というのもある時、町で男が投げかけた視線を彼女が受け止めたからでした。男は彼女に愛されていると信じ、あるいはともかく愛の可能性があると思ったのです。
Plus largement, le roman se veut une chambre d'echo pour la violence faite aux femmes partout et de tout temps. Pourquoi un tel sujet? Cela vient de loin.
より一般化して語るのであれば、この小説では女性に対していつでも、どこでも加えられている暴力を描くことを目指したと言えます。なぜこのようなテーマか? 話せば長くなるのです。
Lorsque je lisais ou ecoutais les recits d'anciennes sequestrees et constatais la complexite de leur traumatisme, cela resonnait toujours tres profondement en moi sans que je sache vraiment pourquoi.
私は女性が監禁された昔の話を読んだり聞いたりした時、そして彼らの複雑なトラウマを認めたりした時、それらがなぜかわかりませんが、いつも私の心の奥深くに響いてくるものを感じていたんです。
J'ai d'abord mis cela sur le compte de l'experience d'enfant cachee de ma propre mere sous l'Occupation. Et c'est sans doute l'un des elements qui me faisaient reagir des qu'il etait question de privation de liberte et d'identite, d'enfance abimee. Je sentais bien, cependant, que ce n'etait pas le seul point d'entree, cet heritage, que quelque chose a propos du corps, du desir aveugle me bouleversait.
私は最初は一連のそれらの監禁に関する話の原型はナチ占領時代に私の母が隠れて暮らすことになった体験に関するものだと考えました。母の占領下の体験は自由とアイデンティティが奪われる悲惨な少女時代の話であり、それゆえに間違いなく私の小説の一要素となっています。しかしながら、私が監禁の物語に揺さぶられるのはそれだけではない他の何かが関係していると思っていました。つまり、それは肉体が関係している、ということです。私を揺さぶっていたものは盲目的な欲望に関することだと感じ取っていたのです。
J'ai compris recemment ce qui se reveillait de plus intime face a ces jeunes femmes au regard indechiffrable, comme demeure dans la geole.
私は理解不能な眼差しにさらされた少女たちの物語に接する中で、最近になって私自身の中にもあったある感覚を理解するに至りました。それは監獄の中に押し込められるような感覚なのです。
J'ai vecu au sortir de l'enfance une histoire de desir impose par la violence morale et, dans une moindre mesure, physique. Il y avait, de la part du garcon, une absolue sincerite qui, a ses yeux, justifiait les rapports forces, la jalousie folle et ses consequences :
私は少女時代の終わりごろに倫理的な暴力と、そして肉体的な〜最小限であったとしても〜暴力に基づく欲望の物語の中を生きていました。相手の少年の中には絶対的とも言える真摯さがあり、その絶対的な真摯さは、彼の目から見れば、自分の暴力的行為や狂気の嫉妬やそれらが引き起こした様々な事柄を正当化するものでした。
un enfermement progressif facilite par ma honte de ceder encore et encore, mon effondrement interieur. C'est par cette felure jamais tout a fait reparee, par une sensibilite aux violentees, aux humiliees, aux captives, une sorte de connivence, que j'ai pu trouver en moi la note que j'espere juste pour ecrire ce roman.
私はそのときの屈服した自分の恥ずかしい経験にだんだん触発されて心が閉じ込められていき、内部で心が崩れていくのを経験しました。この決して完全には癒されることがなかった私の心の中の亀裂によって、暴力に対する感受性によって、汚辱と囚われの身になった感覚と、そして相手との間に存在する一種の共謀、これらを意識して初めて私はこれを小説に書き上げるための調子(トーン)を発見することができたのだと思います。
Tres vite, au cours de l'ecriture, la voix collective - le choeur des femmes maltraitees a travers le monde - s'est imposee en echo a l'histoire individuelle. Il suffisait de preter l'oreille, ca hurlait de partout, ca hurle toujours. Pour travailler ce nous, j'ai lu de nombreux temoignages de rescapees, d'anciennes esclaves sexuelles, notamment, et j'ai colle au plus pres de leurs mots.
小説の原稿を書きながらどんどん私の中で、ひどい扱いを受けている女たちの声が一塊となって個的な物語に注ぎ込んでいきました。その声に耳を傾けるだけでよいのです。あちこちでいつでも呻きは上がっているのですから。小説を書くために、私は生き延びた多くの女性、とくに昔の性的奴隷者たちの証言記録をたくさん読みました。そのいくつもの言葉を小説の中に加えていったのです。
Mais le point de depart de la narration elle-meme, c'est, comme dans le roman, un regard echange dans la rue, il y a une quarantaine d'annees, avec un homme defigure. Je n'ai jamais pu oublier le melange d'embarras et de defi, puis l'emotion, la gratitude que j'ai lus dans les yeux de celui qui allait m'inspirer le personnage d'Edouard.
語りの始まりにもありますように、まるで小説のように約40年前に醜い男と、ふと町で交わした視線が始まりです。私はその時感じた当惑と反発の念の交錯を忘れることができません。そして、その感情、私が男の眼差しの中に読み取った感謝の感情も忘れえないものです。この男こそ、小説の中のエドワルドという登場人物に形象されました。
Deux elements declencheurs donc : une hyper sensibilite aux situations de sequestration, l'accumulation ces dernieres annees des recits de violence faite aux femmes et le sentiment insupportable d'une fatalite. Bien sur je me suis posee la question de la legitimite mais quand on est a ce point convoque par un sujet, a ce point travaille par lui, il faut y aller, il faut, comme le dit Erri de Luca, "transformer la guerre en chant."
監禁という状況に対する非常に過敏な感覚と、最近の女性に対して加えられた様々な暴力の話を心に留めてきた蓄積と運命に対する耐え難い感情。思うに、これら2つの要素がこの物語を進めるのです。その結果、私は小説のストーリーが発展していく中で合法性の問題を突きつけられました。しかし、その地点まで物語がテーマを追求することによって進んでいくのであれば、登場人物たち自身が動き出してそこまで話が進んでいくのであれば、その地点にまで行くべきなのです。イタリアの作家・ジャーナリストのエリ・ デ・ルカが語るように、「戦いを歌に変えなくてはならない」のです。
作家キャロル・ザルバーグ Carole Zalberg
翻訳 村上良太
■読書について フランスの作家、キャロル・ザルバーグさんに聞く Interview : Carole Zalberg
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201611200047480
■難民を扱った小説「火には火を」(Feu pour feu)の評論(Mediapart)
https://blogs.mediapart.fr/edition/bookclub/article/260314/carole-zalberg-feu-pour-feu
■作家キャロル・ザルバーグと猫 猫は不眠の長い夜の優しい仲間 Carole Zalberg et un chat
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201610070746515
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新作小説「私はダンスをしていた」(Je dansais )
フランスの作家、キャロル・ザルバーグさん French novelist, Carole Zalberg ©Melania Avanzato (2013)
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