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橋本勝21世紀風刺絵日記
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2017年01月20日05時03分掲載
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文化
批判精神に富むフランスのニューウェーブ歌手、オリビエ・エベール氏に聞く Interview : Olivier Hebert
フランスの歌手、オリビエ・エベール(Olivier Hebert)氏は前回、ベリタでも紹介しましたが、風刺漫画家のジャン=フィリップ・ミュゾー(Jean-philippe Muzo )とサルコジ大統領を風刺する歌のビデオクリップを共同で作ったアーチストです。その風刺ソング「7月14日(パリ祭)」(14 JUILLET)のビデオクリップが以下です。フランス革命を祝うパリ祭のはずが、大統領府では特権的な人々が集まり大統領にお世辞を言って取り入ろうとしているのを通りかかった親子が観察するという内容の歌です。フランス人らしいフレッシュでキレのいい歌になっています。
https://www.youtube.com/watch?v=h2VPpyjMD2Q シンガーソングライターのエベール氏は1970年代末の高校生の時にフランス南西部の都市トゥールーズで「レ・フィス・ド・ジョワ」(Les Fils de Joie)というバンドを結成して見事、メジャーデビューを果たしています。フランス音楽界のニューウェーブとして注目されました。その後も音楽活動を続けていますが、風刺ソングにも象徴されるように強いメッセージを持ち、歌であると同時に小説のような反抗精神に富む物語性を持っています。
次の歌「僕はいつかは行かなくてはならなかったから」(PUISQU'IL FALLAIT PARTIR UN JOUR )も物語性を帯びて一種の悲痛さがあります。銃で犯罪を犯してしまった男が恋人に別れを告げて最後の旅路に出ていく時の思いを歌っています。やがては警察に包囲されて銃撃されるであろう予感があります。しかし、その根底に何か爽やかなものがあります。これはエベール氏の個性でしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=6klONST7-Nw こうしたエベールさんの音楽がどのように作られてきたのかお聞きしました。
(以下はエベールさんの回答)
I was born on the island of Madagascar. I was the youngest of 5 children of a stepfamily. My mother passed away before my second birthday and my father was a judge. Originally from Paris, he worked abroad most of his life in the French territories overseas. We moved a lot when I was a teenager. We lived in Noumea (New Caledonia), I spent all my summers in Sydney (Australia) or Auckland (New Zealand), I got my baccalaureat in Toulouse and graduated in history at the university of Paris.
僕が生まれたのはマダガスカルです。5人兄弟の末っ子で、うちはステップファミリーでした。母は僕の2歳の誕生日が来る前に亡くなってしまったんです。父は裁判所の判事をしていました。もともと父はパリの人間でしたが、人生の大半をフランスの海外県で過ごしたんです。そのため、僕が10代の頃はしょっちゅう引っ越ししていました。ニューカレドニアの首都ヌメアで暮らしたことがありますし、夏はいつもオーストラリアのシドニーか、ニュージーランドのオークランドで過ごしたものです。バカロレアはトゥールーズで取得し、パリ大学で歴史学を専攻して卒業しました。
My father listened to classic music (Russians and French composers mostly: i.e. Ravel, Prokofiev, Mousorgski, Erik Satie, ... ). He also very much liked the French song-writers of his time, such as George's Brassens, Leo Ferre or Jacques Brel (from Belgium ...). I suppose it had some influence on me, as lyrics are important to me and I decided lately to write and sing mostly in French, despite my major interest in the Anglo-saxon rock culture.
僕の父はクラシック音楽を聴く人で、その大半はロシアかフランスの作曲家のものでした。ラベル、プロコフィエフ、ムッソルグスキー、エリック・サティ―などです。また父はフランスのシンガーソングライターの音楽も愛好し、ジョルジュ・ブラッサンス、レオ・フェレ、ジャック・ブレル(彼は出身はベルギーではありますが)などを聴いていました。思うにこれらの父の愛好は僕にもいささか影響している気がしています。歌詞が大切であることです。それで僕はもともとアングロサクソンのロックミュージックの影響で育ったにも拘わらず、のちに僕は歌詞はフランス語で書くことにしたのです。
Q How did you become musician ? Q どのようにして音楽家になられたんでしょうか?
At the age of 16, as my father sent me to Sydney for the third summer in three years. That year, I took the money he gave me for living to buy my first guitar (A Fender acoustic, on Oxford street). That was my first big decision in life and I never regretted it. As I said, I had a chance to become a musician at the end of 70s, early 80s, a period of great creativeness and in which everyone could create a band.
16歳の時に父は僕をシドニーに連れて行きました。夏休みをシドニーで過ごすのはその時で3度目でした。そのとき、僕は父からもらった小遣いで初めてギターを買ったんです。オックスフォードストリートの店で、フェンダー製のアコースティックギターでした。これが僕の人生での最初の大きな決断でした。その選択を後悔していません。僕は1970年代の末から80年代初頭にかけて音楽家になるチャンスを得ました。その時代は創造力にあふれた時代で、みんなバンドを作ったものです。
Q Please talk about the music which you listened to when you were teenager. What influence did those music give you ?
Q ティーンの頃にお聞きになった音楽について教えていただけますか? それらの音楽はどのような影響を与えたのでしょうか?
I bought my first rock single when I was 12 years old : "The man who sold the world" of David Bowie. As a teenager, before 16, my other major influences were The Rolling Stones and The Stooges ... They had great songs, high energy, rebel attitude. I also discovered reggae with Bob Marley and loved it, great rythm, great tunes, great political messages. I also loved soul music, which I discovered later in my early 20s and seems to be a basic influence of many styles : artists such as Marvin Gaye, Sly Stone, James brown, and many artists from the Tamla Motown record company ...
僕は最初のロックのシングルレコードを12歳の時に買いました。デビッド・ボウイの「世界を売った男」です。16歳までの僕にとってボウイ以外で大きな影響を与えたのはローリングストーンズとザ・ストゥージズです。彼らは素晴らしい曲を持っていて、エネルギーにあふれ、反抗的でした。僕はまたレゲエのボブ・マーリィも発見してのめり込みました。すごいリズムで、音もよく、政治的なメッセージも素晴らしかったのです。さらにソウルミュージックも愛しました。ソウルミュージックとは20代の終わりごろに出会い、僕のスタイルに大きな影響を与えている気がします。アーチストで言えばマーヴン・ゲイやスライ・ストーン、ジェームズ・ブラウンなどです。またタルマ・モータウンレコードのアーチストたちもです。
Nevertheless, I really wanted to become musician myself when I first listened to The Ramones. This is a unique american rock band, among the pioneers of the punk-rock new wave. I liked everything in their music, the energy, sound, attitude, the great melodies, the voice of Joey Ramone, the lyrics and sense of humor ("Sheena is a punk rocker", "Rockaway beach" are pure standards ...). They were great song writers, back to the basics of rock music with a huge sound. Overall, that period at the end of 70s early 80s was key in music history, with the rise of major artists such as The Clash, Elvis Costello, the Cure. I was lucky to be teenager at that time and to become a musician.
にもかかわらず、僕が最初に音楽家になりたいと思ったのはラモーンズを聴いた時だったんです。ラモーンズはユニークなアメリカのロックバンドです。パンクロックの創始者のグループの1つと評価されています。彼らの音楽のすべてを愛しました。エネルギーもサウンドも、生きる姿勢も、素晴らしいメロディーも、ジョーイ・ラモーンの声や歌詞、そしてユーモア感覚などなど。("Sheena is a punk rocker", "Rockaway beach"といった曲はまさにスタンダードと言えます・・・) 彼らは素晴らしい音楽の作り手でした。ロックの原点に立ち返った音楽でしたが、同時にすさまじく大きなサウンドでした。総合的に言えば、70年代の末から80年代の初頭にかけては音楽史の要だと思うんです。クラッシュ、エルビス・コステロ、ザ・キュアーといったメジャーなアーチストを輩出しています。この時期にティーンエイジャーだったことと、音楽家になれたことを僕は幸運に思っています。
On the French side, Serge Gainsbourg always remained and influence. He combined great lyrics, inspired melodies and unique style. I had the privilege to sign with the same record company, Philips, and saw him once at a party.
一方、フランスの側ではセルジュ・ゲンズブールは常に影響を与えきました。ゲンズブールは素晴らしい歌詞に、霊感に満ちたメロディとユニークな表現スタイルを組み合わせていました。僕は彼が契約していたフィリップスレコードに籍を置いていたことから、一度パーティで彼を間近に見ることができました。
If I look back french or anglo-saxons - from Jacques Brel to Bowie, from Gainsbourg to the Ramones, etc. - all these artists have in common to be songwriters. I like lyrics, melodies and rythm of a song. For me a song is like a poem. It's a piece of work that is self sufficient. I learnt with all these artists how to write and structure a song. English French, language does not matter, we know great Italian or Spanish songs too.
もし僕がフランスとアングロサクソンの音楽を振り返ってみるなら 〜ジャック・ブレルからデビッド・ボウイまで、ゲンズブールからラモーンズまで〜 これらのアーチストにはシンガーソングライターとして共通のものがあるんです。歌詞が好きですし、メロディもリズムも素晴らしい。僕にとって歌は一種の詩なんです。それはまず自分自身の心の要求を満たすものだと言うことです。僕はこれらのアーチストたちからいかに曲を書いて歌の骨格を組み立てるかを学びました。英語とかフランス語といった言語の違いは関係ありません。イタリアやスペインにももちろん素晴らしいアーチストはいますね。
” Adieu Paris ”
A song I wrote when I was 18 or 19, with my first band "Les Fils de Joie". pioneers of the French new wave (this song arrangement has some reggae influence). Lyrics about suicide... Typical teenager lyrics from early 80s...
https://www.youtube.com/watch?v=pJtGLxM_RTk 「さようなら、パリ」 この曲は僕が18歳か19歳の頃に書いた曲で、"Les Fils de Joie"というバンドのために書いたものです。このバンドはフランスのニューウェイブバンドでした。この曲のアレンジには多少、レゲエの影響があります。歌詞は自殺についてです。80年代初期にはこのような歌詞は珍しくなかったんですよ。(※歌詞では一人の若者が自分が何も成し遂げることができない、何も書いていない、何も・・・と自分の振り返って追い詰められている悲痛さがある)
https://www.youtube.com/watch?v=pJtGLxM_RTk Q Please teach me roughly about french music industry Q フランスの音楽産業について簡単に教えていただけますか?
In france music industry used to split in two major pieces: - The "Variete" mainstream artists, commercial music, no specific message, non political but sometimes there are good songs
フランスの音楽産業は2つに大別されます。"Variete"(娯楽的音楽)いわばメインストリームのアーチストがこれに該当します。商業音楽はこれに該当し、特にメッセージというものはありません。政治色はないのですが時々、いい歌に出会います。
- The great songwriters such as those early mentioned for my father: Jacques Brel, Georges Brassens, Serge Gainsbourg or Renaud ... some are politically committed like Renaud, all are great artists I respect...
もう一つは私の父が愛したようなジャック・ブレル、ジョルジュ・ブラッサンス、セルジュ・ゲンズブール、ルノーのような偉大なアーチストたちが属します。とくに政治的にもコミットしたルノーのようなアーチストのようないて、こうした一群の音楽家のグループです。僕は彼らを尊敬しています。
- My generation really brought a new style combining anglo-saxons rock culture with French lyrics (or English sometimes). The French new wave or post punk...
僕の世代はアングロサクソンのロックカルチャーにフランス語の歌詞(時には英語で)をのせて組み合わせる新しいスタイルです。フランスのニューウェーブとか、あるいはパンクの大半がそうです。
Q What do you think about today's world
Q 今日の世界をどうご覧になりますか?
Human nature is always the problem. Whatever system we try, someone tries to turn it to his advantage... It seems, we have inside all of us the best and the worse. The world is getting smaller, internet helps to accelerate information and ideas for good or bad... Perhaps this revolution in the end will help democratie but we are yet missing a true global governance.
人間性が常に問題になっていると思います。どのようなシステムを作り上げたとしても、誰かがそれを自分の利益のために利用しようとします。僕らの中には最善のものと最悪のものとが同居しているかのようです。世界は小さくなっていき、インターネットは情報と思想に人々がアクセスするのを容易にします、それが良いものであろうと悪いものであろうと。たぶん、この革命は民主主義に寄与すると思いますが、しかし未だに真の世界の秩序は生まれていないのです。
Yet progress and technology have not made the world better but a few richer and politicians seem to be mostly corrupted everywhere. I think one issue has been the domination of the anglo-saxon capitalist system since the mid 80s with Reagan and Thatcher - following the failure of communist system ideology. Last but not least, I am pessimistic about protecting the earth, our environnement. A few can damage so much...
未だに進歩もテクノロジーも世界をよくはしていません。ただ、富裕層と政治家たちはどこでも腐敗しているように見えます。思うにアングロサクソン型の資本主義において、1980年代半ばに始まったレーガンとサッチャーによる新自由主義が世界を席巻しています。これが問題です。そして共産主義システムは失敗に終わりました。それと大事なことを忘れていましたが、僕は地球環境の保全に関して悲観的に見ています。ちょっとした事でも非常に大きく地球を汚染することができるのです...
Olivier Hebert オリビエ・エベール(歌手)
Interview Ryota Murakami 村上良太
■フランス人の風刺歌 「7月14日(パリ祭)」 "14 JUILLET" par OLIVIER HEBERT / DESSINS MUZO
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201612201625392
■パリのジャン=フィリップ・ミュゾー(Jean-Philippe Muzo)氏 芸大1年で個展を開いて中退 好きなイラストを描いて50年
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201610140948075
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シンガーソングライターのオリビエ・エベール氏(ニューオリンズで)Olivier Hebert
生まれはマダガスカル島だった。父親が裁判所の判事だった関係で世界各地を転々とする少年時代を送ったという
トゥールーズでデビューした頃の1枚。バンド名は「レ・フィスドジョワ」(Les Fils de Joie)
スタジオで収録中
アングレームの国際漫画フェスティバルで。2014年
2016年のコンサートから。
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