ドナルド・トランプ氏は去年の大統領選の候補者時代にヒラリー・クリントン候補を金融業界から多額の資金を提供されていると批判していた。そうした批判がエリートにうんざりしていた庶民の喝采を浴びた。トランプ候補は自分は自分の金で選挙戦を戦っているがゆえに、ヒラリー・クリントン候補のように既存の業界に縛られていないと言っていたものだった。
しかし、大統領になってムスリム入国禁止令に続いて矢継ぎ早に出した大統領令がドッド・フランク法の見直しだった。ドッド・フランク法は2008年のリーマンショックの金融崩壊を反省して、市民の貯金を原資にした金融機関がリスクの高い(レヴァレッジの高い)投資ができないように規制したり、貸し倒れに備えて自己資本を一定額以上備えるように規制するなどの金融規制である。オバマ政権時代にこの法案が成立する時、ウォール街は精一杯の抵抗を行い、規制にできるだけ穴をあけようと努力した。しかし、今、トランプ共和党政権となって、この法案を本格的に見直しする方向のようだ。これを見ればトランプ大統領は共和党の本流と向きを同じにしているように見える。これはトランプ政権の本質を見る上でリトマス試験紙のようなものではないだろうか。
アメリカの報道ではトランプ大統領は去年の選挙キャンペーン中から、ドッド・フランク法の見直しを説いていたという。ドッド・フランク法の規制が邪魔をして、金を借りたい企業が借りられないと嘆いているのを耳にした、などと言っていたそうだ。しかし、ドッド・フランク法は共和党本流やウォール街の金融勢力からも評判が悪く、見直しを求める声が出ていたものでもあった。この点でトランプ大統領は共和党本流や大富豪のグループとうまく結合しているようだ。
そもそも財務大臣に指名されたスティーブ・ムニューチン氏はゴールドマンサックスの元幹部。さらに今、アメリカのメディアで騒がれているのがトランプ政権の経済アドバイザーに指名されたゲイリー・コーン(Gary Cohn)氏のことだ。コーン氏もまたゴールドマンサックスの元重役で、コーン氏は大統領府に入るためゴールドマンサックスを去る際になんと会社から2億8500万ドルの金を受け取った、とCNNやその他の媒体で一斉に報じられている。1ドル=100円と単純計算すれば285億円、とんでもない金額だ。これは25年間働いてきた功績によるものだということだが、こんな巨額を受け取って、自己の所属した企業に対するフェアな政策ができるものだろうか。批判者たちはコーン氏はゴールドマン・サックスが関係する政策については発言を控えるべきだと指摘しているという。
http://money.cnn.com/2017/01/26/investing/gary-cohn-goldman-sachs-exit-trump/ この件について、民主党上院議員のエリザベス・ウォーレン氏が同僚のタミー・ゴールドマン上院議員(民主党)とともにコーン氏に書簡を送った。コーン氏は巨額の金を当該企業から受け取ったのであるから、今後はゴールドマンサックスが関係する政策からは一切手を引け、と勧告しているそうだ。コーン氏はすでに早々にドッド・フランク法は見直しされるべきだ、とトランプ政権の顔としてメディアの前で規制の緩和を訴えている。
http://money.cnn.com/2017/02/03/investing/elizabeth-warren-gary-cohn-goldman-sachs-trump/
※実を言えば首席戦略官のスティーブン・バノンも海軍とゴールドマンサックスの出身者である。
※民主党タミー・ボールドウィン上院議員とエリザベス・ウォーレン上院議員の共同声明
https://www.baldwin.senate.gov/press-releases/letter-to-cohn-coldman-sachs <BALDWIN, WARREN CALL ON NEC DIRECTOR COHN TO PAY FULL TAXES ON WINDFALL PAYMENTS, RECUSE HIMSELF FROM ALL DECISIONS AFFECTING GOLDMAN SACHS Recusal, immediate payment of all taxes would mitigate Cohn's conflicts of interest in new role at NEC>
■トランプ政権とTPPの行方 右派のペンス副大統領は自由貿易協定の擁護者
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201611171007374
■トランプ大統領誕生 終盤、大富豪のコーク兄弟はどう動いたのか 気になるTPP とTTIPの行方
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201611091624333
■あの大富豪兄弟が自由貿易推進のため新たな草の根運動を展開 コーク兄弟VSトランプ候補
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201609081654304
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