ニューヨークタイムズと言えば気取ったハイブラウのように印象を持つ人も少なくないかもしれません。それは実は日本だけじゃないのです。以前、アメリカでマイケル・キートン主演のタブロイド新聞記者の奮闘を描いた映画「ザ・ペーパー」で、ニューヨークタイムズは上品ぶった偽善的な新聞として風刺されていました。タブロイド新聞は生々しい殺人事件とか汚職とか、その街で起こるリアルな事件をどろどろ生臭く書いて町のおやじさんたちが溜飲を下げる新聞です。一方、ニューヨークタイムズは国際ニュースが多く、どちらかと言えばインテリやビジネスマンが読む新聞です。これはある意味で当たった見方で、ニューヨークタイムズはもっと射程が広く、町の事件よりももっと長期的なトレンドを追いかけていると思います。
さて、ニューヨークタイムズを楽しむためにはそこで出てくる単語を理解しなくてはならないですが、そうした英単語の中には学生時代に出会うことがなかった単語もあると思います。そうした単語を毎回、辞書で引くのもよいのですが、学生のように時間のある人は一定の時間に集中的なトレーニングを積むこともできると思います。
ニューヨークタイムズに出てくる政治の記事や政治のコラム、あるいは経済記事や経済コラムを読んで難しく感じるとしたら、それは知らない単語が出てくる、というだけでなくて政治学や経済学などの基礎知識の欠如に由来することが多いと思います。つまり、問題は語学にあるのではなく、その分野についての基礎知識の不足にあります。そんな場合は往々にして日本語訳で同じ記事を読んでも難しいケースです。逆に言うと、日本語で内容を理解していることは多くの場合、英文の記事でも推測ができて理解しやすくなるものです。つまり、問題を2つに分けてみることが大切だと思います。
・英語の知識の問題 ・それぞれの分野に対する基礎知識の問題
この2つのことが複合されているから難しい、と感じる場合が多いのだと思います。で、その場合にどうすれば克服できるか、と言えば、政治学であれ、経済学であれ、その分野の基礎知識を日本語の入門書を読んでつけておく、というのが手かと思います。
その上でその日本語の入門書に対応する英語の入門書を重ねて読んでいくのです。こうすることで日本の入門書で接した用語が英単語の何に相当するのかがあらましわかるようになります。アメリカやイギリスの大学に入学したら大量に本を読まされることになりますが、留学生たちはそのようにして英単語を積みあげていきます。でも、日本国内でもそれに近い修業はできなくはありません。
たとえば以下の書籍は思想史、歴史、科学、政治学、経済学などの基礎的な考え方や知識、単語を身に着けることができる入門書と言えると思います。
"The Oxford History of Western Philosophy"(Oxford)
"history of Europe " (Penguin)
"Asimov's new guide to science " ( Penguin)
"The origins of Totalitarianism " (Harcourt)
"Introdutory Economics" ( written by Stiglitz etc)
こういった本を1〜2年の間に集中的かつ意識的に読んでおくと、単語力がつくのと同時に、文脈に対する類推力ができると思います。単語を「試験に出る英単語」みたいにバラバラに記憶するのは非効率と言えます。こういった入門書で基礎単語を学習すれば、単語に付随する論理の流れのパターンも頭に入れることができます。またそのロジックの系に頻出する他の単語も一緒に記憶することができます。こういった知識や発想の流れをあらかじめ頭に入れておくと、ニューヨークタイムズは10倍読みやすくなります。ニュースと言うものは一見、新しいことを扱っているように見えて、実はその内容の多くを過去に負っていることが多いです。過去に積み上げられたものが氷山の水面下の部分で、新しい現象は水面上に出ている氷の部分という風にイメージできると思います。ですから、その水面下のベーシックな部分を先に固めておくことがニューヨークタイムズを楽しむコツだと思います。
■ニューヨークタイムズを10倍楽しく読む方法 毎日の小さな”投資”
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201702041444496
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